Long-playing discs(24-Minute/40-Minute)

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Long-playing discs(24-Minute/40-Minute)

トーマス・エジソンらがダイヤモンドディスク式蓄音機を試聴する様子(1911年)

画像出典:U.S. National Park Service, Public domain(Wikimedia Commons)

Long-playing discs(24-Minute/40-Minute)は、エジソン社のディスク事業末期に導入された、超微細溝による長時間再生の試験的フォーマットです。米国議会図書館の概説では、1924年ごろまでにラジオとの競争で事業環境が悪化し、その過程で長時間盤の実験と製品提示が進んだ、と説明されています。導入は1926年10月とされ、同時にコンソール型の新機種群が提示されました。

ただし、資料上で確認できる実発売(発行)点数は、10インチが8点、12インチが6点に限定されます。番号帯(10001–10008、30001–30006)が明示されているため、少なくとも発売物の範囲を把握するための基準になります。

シリーズの概要

本シリーズの核は「長時間化」です。10インチで片面12分(両面合計24分)、12インチで片面20分(両面合計40分)という設計値が提示されており、当時の一般的な商業ディスクが前提としていた再生時間の枠を大きく押し広げることを狙った製品群として位置づけられます。

一方で、実発売点数が10インチ8点、12インチ6点にとどまったことから、長期に拡張される「大シリーズ」ではなく、限られた範囲で市場投入されたフォーマットであったことが分かります。

開発と発売の経緯

1920年代に入ると、エジソン社のディスク事業は市場環境の変化に直面し、1924年頃にはラジオとの競争により事業が停滞しはじめたことが指摘されています。こうした状況のなかで、同社は長時間再生を実現するレコードの実験を進め、1926年10月にLong-Playing Recordと対応蓄音機を導入しました。

Long-Playing Recordは盤だけを追加すれば成立する方式ではなく、再生機構側に専用条件が求められました。具体的には、溝を極端に細くした超微細溝によって長時間化する設計であり、その再生のためにトーンアームの送り速度を落とす新ギアリングや、軽量化された専用リプロデューサー、極小寸法に研磨されたダイヤモンド針などが必要とされています。

同社は長時間盤対応としてConsole 1–4の新機種を用意し、標準リプロデューサーと長時間盤用リプロデューサーを併載し、ギア切替で追従速度を落とせる構成を提示しました。既存機向けには改造用のギア減速セットも案内され、長時間盤は「盤と機械を一体の条件で成立させる」製品として位置づけられていました。

規格と再生条件(24-Minute/40-Minuteの技術的基盤)

エジソン社のディスク式蓄音機(外観例。写真はL-35)

画像出典:CC0 1.0(Wikimedia Commons)

長時間化は、回転数を落とす方式ではなく、音溝密度を高める方式で実現されたと説明されています。UCSBの解説では、従来の150 grooves per inchから450 grooves per inchへ増やした点が中核として示され、10インチ片面12分/12インチ片面20分という設計値、ならびに12インチ盤の総溝長を約1.25マイルとする説明が提示されています。別資料では、本シリーズを80 rpmのfine-grooveディスクとして説明しています。

この超高密度溝は再生系にも要件を課しました。具体的には、針先の送り速度をより遅くするための新ギアリング、軽量化された新リプロデューサー、微細溝に適合する小型研磨のダイヤモンド針(幅0.002インチ、長さ0.0035インチ)が必要とされます。さらに、コンソール型の新機種(Console 1–4)が用意され、ギア切替で追従速度を落とせること、標準リプロデューサーと長時間盤用リプロデューサーを併載することが記述されています。加えて、既存機への改造としてギア減速セットが提示されています。キャビネット仕上げ(Trafalgar brown mahogany)や価格帯(165–300ドル)も併せて説明されています。

なお、上の画像はエジソン社のディスク式蓄音機の外観例であり、長時間盤専用機そのものであることを示す資料ではありません(本項の参照範囲内では、当該写真の機器を長時間盤専用機と断定できません)。

製造・録音の方法とカタログ規模

長時間盤は、長時間をそのまま直接録音する理想が語られつつも、実務上は既存録音からのダビングに大きく依存したことが示されています。特に、Diamond Disc用マスターを素材として長時間盤用マスターを作る方式が採られたこと、また長大曲を4–5分程度の単位で用意して後工程で長時間盤化する運用があったことが記述されています。

この制作条件は内容面にも影響し、カタログは既存のDiamond Discカタログから編成され、古い録音が混在したことが述べられています。内容は管弦楽・小編成アンサンブル中心で、主にコンサート音楽と一部のオペラ系選曲から成っていた、と説明されています。結果として、発売点数は10インチ8点、12インチ6点に限定され、番号帯(10001–10008、30001–30006)が明示されています。

シリーズの特徴

エジソン社ディスク盤のラベル例(EDIS-40494)

画像出典:U.S. National Park Service, Public domain(Wikimedia Commons)

特徴は、技術的な「長時間」だけでなく、広告上の用途設定にも表れます。宣伝では、ディナーパーティーを「Soup to Nuts」で通しで賄えるといった比喩で、交換の手間が少ない連続再生の価値が強調されました。また、分単価(音楽1分あたりの費用)が半減する、という計算上の利点も示されています。

一方で、評価としては、音量が通常盤より大きく減少し、音色が薄い方向へ寄ったことが述べられています。さらに、長時間盤の成立にはシェラック配合や成形工程の精度が重要で、盤自体が脆いこと、極端に細い溝ゆえに微小な傷で同一箇所が反復しやすいこと、湿気などの影響で再生不能に至り得ることが指摘されています。これらは、長時間化が「盤」単体の新機能ではなく、制作工程と取り扱い条件まで含めた総体として成立していたことを示します。

当時の事業環境と音響戦略(ディスク事業の延命策として)

資料では、1924年頃にラジオの普及が同社事業に影響し、操業縮小と並行して長時間盤の実験が始まったこと、1926年10月に長時間盤と新型コンソール機が導入されたことが述べられています。加えて、市場への譲歩として、競合他社の横振動(lateral-cut)レコードを再生できるアタッチメントも提供されたことが記されています。

シリーズの歴史的意義

Long-playing discs(24-Minute/40-Minute)は、1920年代の段階で「長時間化」を具体的な設計値(10インチ片面12分/12インチ片面20分)として提示し、それを超微細溝と専用再生条件(送り機構・リプロデューサー・針先寸法)まで含めて商品化しようとした事例です。後年の長時間記録メディア史を考える際、長時間化が「溝密度」だけでは完結せず、機械・制作工程・取り扱い条件を同時に成立させる必要があることを、早い段階で露呈させたケースとして参照できます。

また、発売点数が限られ、ダビング中心の制作だったこと、音量低下や盤の脆さが問題化したことは、技術的達成がそのまま市場定着を保証しないことを示す具体例でもあります。

終焉と評価(普及の壁)

Long-Playing Recordは、超微細溝によって1枚あたりの収録時間を大きく伸ばした一方、実際の内容は既存録音のダビング中心となり、長時間の交響曲を連続収録するような理想形とは異なる方向に寄りました。音量が通常盤より低く、音色は薄い印象になりやすいことが述べられています。
また、溝が極端に細いため取り扱いと針下ろし位置の影響が大きく、微細な傷でもリピート(同一箇所の繰り返し)を招きやすく、水分や不適切な扱いでノイズ増大や再生不能に至り得る点が指摘されています。
発売点数は少数にとどまり、結果として商業的には成功しなかったと整理されています。