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1890年8月に録音された音楽

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1890年8月に録音された音楽

1890年8月は、アルゼンチンで「パルケ革命(Revolution of the Park)」の余波が大統領辞任(ミゲル・フアレス・セルマン)へ波及し、アメリカではニューヨーク州でウィリアム・ケムラー(William Kemmler)が電気椅子で処刑されることで電力技術と国家権力の結びつきが可視化される一方、英葡間では8月20日のロンドン条約(Treaty of London)をめぐってアフリカ植民地境界(アンゴラ/モザンビーク等)の線引きが進み、南部アフリカでは英領拡張の前線としてフォート・ヴィクトリア(現マスヴィンゴ)建設が進展し、さらにスリナムでは8月9日にジャワ人契約労働者の到着が始まって移民労働の世界的再編が象徴され、豪州では8月中旬に海運ストが勃発してニュージーランドにも連帯行動が広がり、ブラジルではサンパウロの証券取引所(ボルサ・リブリ)が8月23日に創設されて資本市場制度化が加速し、欧州外交でもドイツ皇帝ヴィルヘルム2世とロシア皇帝アレクサンドル3世がナルヴァで会見するなど、司法・植民地・移民・労働・金融・外交が同時進行で「近代の配線図」を太く塗り替えた月でした。

この月の確認されている録音:0曲

1890年8月の録音に関する情報のまとめ

1890年8月は、電気・通信・音響技術が「遠隔に届ける/繰り返し聴く」という方向へ一段と実用化しつつ、録音(記録)そのものはまだ“日付が残りにくい”段階にあった――そんな移行期の一ヶ月でした。
1890年8月の録音まわりの動きは、実際の録音日付がはっきりしないものが多く、「1890年夏頃」などとまとめて記述されることも多いです。ここでは、一次資料や当時資料で“8月”と明示できる録音・技術・展示・出願を、録音史の文脈でピックアップしています。

ロンドンでの「Light Brigade」ラッパ録音(1890-08-02)

1890年8月2日、トランペッター・ランドフリー(Trumpeter Landfreid, 生没年不詳)による「Charge of the Light Brigade」のラッパが、エジソン式の蝋管(brown wax cylinder)に録音された事例が確認できます。初期の“出来事・実演をその場で音として残す”タイプの記録として、月単位の整理に向く確実な日付付き資料です。
※ 録音ラベルでは “Trumpeter Landfrey” 表記で流通

Documentary Recordings and Political Speeches - Thomas Edison National Historical Park (U.S. National Park Service)
Trumpeter Landfrey's Charge of the Light Brigade : Trumpeter Landfrey : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
Trumpeter Landfrey's Charge of the Light Brigade Played by: Trumpeter Landfrey Recording date: August 2, 1890 Location: ...

エディンバラ国際博覧会の電話音楽中継(1890年8月上旬)

1890年8月上旬、電話会社の技術者がマイク等を設置し、夜間に音楽をネットワーク経由で中継する運用が行われたことが記述されています。録音そのものではありませんが、「音を装置と回線で配布する」体験が公衆向けに成立していた点で、同時代のフォノグラフ受容(録って聴く/聴かせる)と並走する重要な“聴取文化”の資料です。

https://contextjournal.music.unimelb.edu.au/context/files/2019/08/44.05-Context.Kirby_.pdf

ミネアポリス工業博覧会向けのフォノグラフ実演計画(1890-08-22)

アルフレッド・オード・テイト(Alfred Ord Tate, 1863-1945)からエジソン・フォノグラフ・ワークス宛の書簡(1890年8月22日)で、博覧会での実演・講演とシリンダー式フォノグラフの運用が議題になっています。本文メタデータ上でアデルベルト・テオドール・エドワード・ワンゲマン(Adelbert Theodor Edward Wangemann, 1855-1906)への言及も確認できます。

Thomas A. Edison Papers Image Edition ?? Thomas Edison Papers Digital Edition

エジソンのフォノグラフ送り機構改良の出願(1890-08-12)

トーマス・エジソン(Thomas Alva Edison, 1847-1931)が、録音・再生ヘッドをシリンダー上で安定して移動させる送り機構(bearing block等)に関する改良で、1890年8月12日付の出願(Serial No. 361,775)が確認できます。量産録音以前の段階でも、“同じ溝をきちんと刻む/なぞる”ための機械的信頼性が重要課題だったことが、この種の特許本文から読み取れます。

https://edison.rutgers.edu/images/patents/00456302.PDF

レジスター一体型フォノグラフ(商業利用)という発想の出願(1890-08-20)

1890年8月20日出願の「Combined cash-register and phonograph」は、フォノグラフを“取引や設置型サービス”の装置として組み込むアイデアを示しています。録音そのものの出来事ではありませんが、8月時点で「音の再生(シリンダー)=商業オペレーションに組み込める」という設計思想が特許文書に現れているのは、コイン式機械化(のちのジュークボックス的世界)へ続く補助線になります。

US460492A - Combined cash-register and phonograph - Google Patents

電気的な“音の扱い”の周辺技術:音の伝送方式(1890-08-06出願)

1890年8月6日出願の「Transmitting sound」は録音装置ではありませんが、音声を電気的に伝える方式に関する特許として、同時代の「音を工学対象として制御する」熱量を反映しています。録音史の月ページでは、フォノグラフ(記録)と電話(伝送)が“どちらも音を工業化する技術”として近接していたことを示す補助資料になります。

US520106A - Transmitting sound - Google Patents