1914年12月に録音された音楽
1914年12月は、第一次世界大戦(World War I)の拡大が各地の政治と社会を強く動かした月でした。12月8日にはフォークランド沖海戦(Battle of the Falkland Islands)が起こり、イギリス海軍(Royal Navy)がマクシミリアン・フォン・シュペー(Maximilian von Spee, 1861–1914)率いるドイツ艦隊を破りました。12月15日にはセルビア王国(Kingdom of Serbia)が反攻の中でベオグラードを奪回し、オーストリア=ハンガリー帝国軍を後退させました。12月18日にはイギリスがエジプト保護国(British Protectorate in Egypt)を成立させ、中東支配の枠組みが変化しました。日本では12月20日に東京駅が開業し、首都圏交通の象徴的拠点が誕生しました。さらに12月24日–25日には西部戦線の一部でクリスマス休戦(Christmas Truce)が起こり、兵士たちが一時的に停戦して交流する異例の出来事も確認されています。
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1914年12月の録音に関する情報のまとめ
1914年12月の録音業界では、年末商戦と戦時下の需要対応が同時に進む一方、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では12月9日の大火災によって工場機能が大きく損なわれました。それでも同社は月内にブルー・アンベロール(Blue Amberol)の再生産へ動き、翌月資料では12月31日に完成品を再び生産したことが報告されています。他方、ヴィクター・トーキング・マシン・カンパニー(Victor Talking Machine Company)とコロンビア・グラフォフォン・カンパニー(Columbia Graphophone Company)については、1914年12月の同時代業界誌から、翌月新譜告知、年末の高価格帯機需要、舞踊用レコード需要、「It’s a Long, Long Way to Tipperary」の流行が確認できます。1914年12月の資料上では、録音会社各社が単なる新譜発売だけでなく、販売網、展示、広告、在庫補給を含む年末商戦の運営に力を注いでいたことが読み取れます。
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1914年12月9日にニュージャージー州ウェスト・オレンジ(West Orange)の工場で大火災が発生し、同月の『Edison Works Monthly』はその特別火災号となりました。翌1915年1月の『Edison Phonograph Monthly』では、工場再建と外部工場活用を進めながら、ブルー・アンベロール(Blue Amberol)を12月31日午後8時30分に再び完成させたこと、1915年1月中旬からの出荷再開を目指していたことが報告されています。したがって1914年12月の同社の中心的活動は、新譜拡張よりも、火災被害からの製造復旧、シリンダーとディスクの供給再開準備、販売業者向け告知の立て直しにあったといえます。
- https://archive.org/download/edisonphonograph13moor/edisonphonograph13moor.pdf
- https://archive.org/download/edisonphonograph12moor/edisonphonograph12moor.pdf
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン・カンパニー(Victor Talking Machine Company)については、1914年12月15日号の『The Talking Machine World』に「1915年1月レコード・ブリテン」が掲載されており、同社が1914年12月の時点で翌月新譜を前倒しで案内していたことが確認できます。また同号のカンザスシティー商況では、ヴィクター系販売部門の売上が秋冬商戦の支えになっていたこと、高価格帯機への需要が強かったこと、さらに「It’s a Long, Long Way to Tipperary」を含むレコードの需要が大きかったことが報告されています。1914年12月の資料上で確認できる同社の活動は、新譜案内、年末需要への対応、販売現場の拡張と販促継続でした。
コロンビア
コロンビア・グラフォフォン・カンパニー(Columbia Graphophone Company)については、1914年12月15日号の『The Talking Machine World』で、新しい総合カタログに8ページ以上の舞踊用レコードが割かれていたことが紹介されており、同社が当月に舞踊用需要を重視していたことがわかります。また同号の各地商況では、高価格帯機の需要、年末商戦の好調、レギュラー盤と特別盤の人気、そして新しい舞踊用レコードと「It’s a Long, Long Way to Tipperary」が月間の売れ筋であったことが報告されています。さらに同号では、フェイヴァリット型とミニョネット型の需要が強く、舞踊用レコード需要が機械販売の拡大にも結び付いていたことが記されています。1914年12月の同社は、舞踊市場への対応と機械販売促進を連動させていたと整理できます。
