1924年7月に録音された音楽
1924年7月は、国際秩序の再編、都市文化の拡大、通信と娯楽の結び付きが同時に進んだ月でした。1日にはアメリカ合衆国で1924年移民法(Immigration Act of 1924)の主要運用が始まり、査証制度と国籍別割当が移民移動を大きく左右し始めました。ブラジルでは5日にサンパウロ反乱が始まり、国内政治を揺さぶりました。パリでは第8回オリンピック競技大会(Games of the VIII Olympiad)が7月中も続き、20日には同地で国際チェス連盟(Fédération Internationale des Échecs)が成立しました。ロンドンでは世界電力会議(World Power Conference)が開かれ、電力と燃料をめぐる国際的議論が進みました。16日にはロンドン会議(London Conference)が始まり、ドイツ賠償問題が欧州外交の大きな争点となりました。こうした国際移動、都市娯楽、流通網の変化のなかで、録音業界でも多言語盤、地域別販促、出張録音、ラジオ併用機の実演が目立つ月となっています。
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1924年7月の録音に関する情報のまとめ
1924年7月の録音関連業界では、各社が単なる新譜発売だけでなく、市場別の販売戦略や実演、出張録音を通じて販路を広げていたことが確認できます。ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は多言語盤の発売を進め、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)はダンス音楽を売れ筋商品として前面に出しました。オーケー・フォノグラフ社(OKeh Phonograph Corporation)は地域への録音旅行を継続し、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)やパテ・フォノグラフ・アンド・ラジオ社(Pathé Phonograph and Radio Corp.)は特定需要に向けた広告と選盤整理を進めていました。ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co., Inc.)はラジオ複合機の実演を打ち出し、スター・ピアノ社(Starr Piano Company)のジェネット・レコード(Gennett Records)も新譜供給を継続していました。
ヴィクター
7月15日付の『The Talking Machine World』では、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)の7月外国語盤発売として、ギリシア語、イタリア語、ヘブライ語、イディッシュ語などの新譜が案内されています。1924年7月の同社は、英語盤だけでなく移民社会向けの多言語盤を同月商品として並行展開しており、都市部の多言語市場を意識した販売を続けていました。
コロムビア
7月15日付の『The Talking Machine World』掲載広告では、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)がダンス楽団の新譜を前面に出していました。1924年7月の同社は、流行歌とダンス音楽を都市大衆向けの商品として強く訴求しており、広告段階から売れ筋盤として明確に位置付けていました。
オーケー
7月15日付の『The Talking Machine World』は、オーケー・フォノグラフ社(OKeh Phonograph Corporation)の録音部門員がシカゴへのレコード製作旅行から戻ったことを伝えています。1924年7月の同社は、固定スタジオだけに依存せず、地域へ出向いて原盤を確保する出張録音を実務として運用していたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1924-07.pdf
- https://dokumen.pub/aampr-pioneers-architects-of-american-roots-music-on-record-2017023304-9780826521750-9780826521774.html
ヴォカリオン
7月15日付広告では、エオリアン社(The Aeolian Company)のヴォカリオン(Vocalion)が「I Can’t Get the One I Want」と「Driftwood」を掲げてダンス楽団盤を宣伝していました。1924年7月の同レーベルは、流行歌とダンス音楽を前面に出す広告運用を行っていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1924-07.pdf
- https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ben_Bernie%E2%80%99s_orchestra%2C_from_a_1924_advertisement_for_Vocalion_Records.jpg
パテ
7月15日付の『The Talking Machine World』は、パテ・フォノグラフ・アンド・ラジオ社(Pathé Phonograph and Radio Corp.)が業界向けに新しいユダヤ系選盤カタログを発行したと伝えています。1924年7月の同社は、特定言語・特定共同体向けの選盤を整理した販促資料を整備し、市場別販売を強めていました。
ソノラ
同月資料には「Sonoradio Featured by Orchestra in Theatre」という記事があり、ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co., Inc.)のソノラジオ(Sonoradio)が劇場オーケストラの実演と結び付けて紹介されていました。1924年7月の同社は、レコード再生機とラジオ受信を結び付けた複合商品の実演販売を重視していたことが確認できます。
ジェネット
7月号の同時代資料では、スター・ピアノ社(Starr Piano Company)のジェネット・レコード(Gennett Records)が、ジャズ系ダンス楽団による「Oh Baby」と「Copenhagen」を次月発売予定盤として案内していました。1924年7月の同社は、中西部で制作したジャズ原盤を商品化し、夏の新譜として市場へ送り出す準備を進めていました。
