1925年11月に録音された音楽
1925年11月は、災害、政治、学術、考古学、美術、放送文化の各分野で後年まで記憶される動きが重なった月でした。11月2日にはウェールズのドルガログ(Dolgarrog)でダム決壊災害が起こり、地域社会に大きな被害を残しました。11月14日には1925年オーストラリア連邦選挙(1925 Australian federal election)が行われ、連邦レベルで義務投票が初めて実施されました。日本では11月13日に東京帝国大学地震研究所が創設され、関東大震災後の地震研究体制が制度として整えられました。エジプトでは11月11日からツタンカーメン(Tutankhamun, 生没年不明)のミイラ調査が本格化し、王墓研究は新しい段階に入りました。パリではガレリー・ピエール(Galerie Pierre)で11月14日から「シュルレアリスム絵画展(La peinture surréaliste : exposition du Samedi 14 au Mercredi 25 Novembre 1925, Galerie Pierre)」が開かれ、前衛美術の結集点の一つとなりました。さらに11月28日にはアメリカ合衆国ナッシュヴィルの放送局WSMで「WSMバーン・ダンス(WSM Barn Dance)」が始まり、のちの「グランド・オール・オープリー(Grand Ole Opry)」へつながる放送史上の重要な出発点となりました。
この月の確認されている録音:0曲
1925年11月の録音に関する情報のまとめ
1925年11月の録音業界を同時代業界誌と録音日データで見ると、この月は新型再生機の公開実演が強く打ち出される一方で、複数の主要会社が継続的に新録音を行っていたことが確認できます。ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は11月2日の公開施策と並行して同月中の録音を進め、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Co., Inc.)、ブランズウィック・バルク・コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)、オーケー(OKeh)、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)にも11月の録音活動が確認できます。したがって、この月は再生技術の転換が市場で可視化されると同時に、各社がポピュラー、ジャズ、ブルース、民族系レパートリーを含む実制作を着実に続けていた時期として位置づけられます。
ヴィクター
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は、1925年11月2日を「Victor Day」としてオルソフォニック・ヴィクトローラの公開に充て、同月の業界誌でも店頭での連続実演が報じられています。その一方で、11月4日、11月11日、11月18日、11月23日には同社の録音が確認でき、1925年11月の同社が新型再生機の市場導入と録音実務を並行して進めていたことが分かります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1925-11.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1925-11-04
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1925-11-23
コロムビア
コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Co., Inc.)は、11月2日、11月4日、11月11日、11月18日、11月23日に録音が確認できます。11月18日にはベッシー・スミス(Bessie Smith, 1894–1937)に関わる録音も確認でき、1925年11月の同社がダンス音楽系とブルース系の両方で継続的に新録音を進めていたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1925-11-02
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1925-11-04
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1925-11-18
ブランズウィック
ブランズウィック・バルク・コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)は、11月中旬の業界紙でパナトロープ(Panatrope)の展示が扱われており、販売面では新型機の訴求を強めていました。同時に、11月11日、11月18日、11月23日には同社の録音も確認でき、1925年11月の同社は再生機の話題づくりと録音制作の両面で活発に動いていたことが分かります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/20s/1925/Billboard-1925-11-14.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Description&date=1925-11-11
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1925-11-23
エジソン
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)については、11月11日に同社の録音が確認できます。電気式再生機の話題が市場で大きくなる時期であっても、同社が1925年11月に新録音を継続していたことは確かであり、同月の業界内で同社が完全に停止した状態ではなかったことを示しています。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Description&date=1925-11-11
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/detail/2000157529/10675-Just_a_cottage_small_By_a_waterfall
オーケー
オーケー(OKeh)は、11月4日、11月11日、11月28日に録音が確認できます。11月4日にはジャズ系小編成、11月11日には女性ヴォーカルを含むジャズ/ブルース系、11月28日にはイタリア語圏向けの録音が見えており、1925年11月の同社がアフリカ系アメリカ人音楽だけでなく、複数の市場に向けた録音を継続していたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1925-11-04
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Description&date=1925-11-11
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1925-11-28
ジェネット
スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)は、11月11日と11月23日に録音が確認できます。11月11日にはダンス音楽系、11月23日には合唱系を含む録音が見えており、1925年11月の同社が地域色のあるカタログを維持しながら複数ジャンルの録音を進めていたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Description&date=1925-11-11
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?date=1925-11-23
