1927年3月に録音された音楽
1927年3月は、自然災害、司法判断、航空事業、反差別運動、東アジア情勢、映画産業の再編が重なった月でした。3月7日には日本で北丹後地震が発生し、京都府北部を中心に大きな被害が出ました。同日、アメリカ合衆国連邦最高裁判所(Supreme Court of the United States)は、テキサス州の黒人排除予備選挙法を違憲としたニクソン対ハーンドン事件(Nixon v. Herndon)判決を示しました。3月14日にはパンアメリカン航空会社(Pan American Airways)が設立され、3月20日にはインドのマハードでビームラーオ・ラームジー・アンベードカル(Bhimrao Ramji Ambedkar, 1891–1956)が公共水源利用を求める直接行動を主導しました。中国では3月24日に南京事件(Nanking Incident)が起こり、列強と中国国民革命軍の関係が急速に緊張しました。ドイツでは3月にウーファ(Universum-Film AG)の経営再編が進み、映画産業も金融と政治の力学に大きく左右される段階へ入っていました。
この月の確認されている録音:0曲
1927年3月の録音に関する情報のまとめ
1927年3月の録音関連資料を再確認すると、当月は新機種販促と実際の録音活動が並行して動いていました。『The Talking Machine World』1927年3月号では、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)の自動演奏機、ブランズウィック・バルク・コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)の電気再生機、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)の海外市場認識、スター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)広告が確認できます。これにアメリカン・ヒストリカル・レコーディングズ・ディスコグラフィ(Discography of American Historical Recordings)の3月録音日データを重ねると、主要各社が流行歌、合唱、オペラ、外国語録音、ハワイアン、ジャグ・バンド、ブルース、フィドル曲まで幅広く扱っていたことがわかります。
ヴィクター
1927年3月のヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)は、『The Talking Machine World』1927年3月号で「Automatic Orthophonic Talking Machine」を業界向けに紹介し、12枚のレコードを自動再生する新機種を前面に出していました。その一方で録音面では、3月1日にジョージ・ロング・アンド・ヒズ・シンガーズ(George Long and his Singers)による無伴奏混声合唱、3月3日にフアン・プリード(Juan Pulido, 1891–1969)によるスペイン語歌唱、3月29日にオペラのバス独唱、3月30日に霊歌系の歌唱録音が確認でき、同社が新機種販促と多ジャンル録音を同時進行で進めていたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-01
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1927-03-03
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-29
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-30
コロムビア
1927年3月のコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)のコロムビア(Columbia)は、『The Talking Machine World』1927年3月号で世界貿易と欧州市場の見通しを論じており、販売網と海外需要への強い関心が確認できます。録音面では、3月3日にイディッシュ語系や東欧系の録音、3月7日にソル・ホーピーのノヴェルティ・トリオ(Sol Hoopii’s Novelty Trio)によるハワイアン器楽、3月30日にアール・マクドナルドズ・オリジナル・ルイヴィル・ジャグ・バンド(Earl McDonald’s Original Louisville Jug Band)によるジャグ・バンド録音が確認でき、同社が多言語市場、流行器楽、市井音楽の各層を同月に並行して扱っていたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1927-03-03
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-07
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-30
オーケー
1927年3月のオーケー・レコード(OKeh Records)は、3月3日にジョージ・エプスタイン(George Epstyne, 生没年不明)によるオルガン独奏「Put your arms where they belong」と「What does it matter?」を録音し、3月15日にはギター伴奏による男声歌唱「Blue Ridge Mountain blues」を録音していました。さらに3月29日にはイタリア語系録音「Nun aggiu vista」も確認できるため、当月のオーケーが都市的な器楽盤、地方色の強い歌唱盤、移民社会向け録音を同時に扱っていたことが読み取れます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1927-03-03
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1927-03-15
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-29
ブランズウィック
1927年3月のブランズウィック・バルク・コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)のブランズウィック(Brunswick)は、『The Talking Machine World』1927年3月号で「Panatrope with Radiola」を広告し、電気式再生機の販促を強めていました。録音面では、3月7日にオペラ歌手による録音、3月29日に女声合唱「When all the saints go marching in」、3月30日にマイケル・コールマン・トリオ(Michael Coleman Trio)によるアイリッシュ系器楽「Black haired lass」と、フアン・プリード(Juan Pulido, 1891–1969)によるスペイン語歌唱「Amigaso」が確認できます。機械販促と並行して、同社が宗教曲、オペラ、民族系器楽、スペイン語歌唱を同月に扱っていたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-07
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-29
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-30
エジソン
1927年3月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、3月3日にシャルル・マルシャン(Charles Marchand, 1890–1930)によるフランス語歌唱「Comm’ ça」「Le bal chez Boulé」を録音し、3月29日にはジョン・バルツェル(John Baltzell, 生没年不明)によるフィドル曲「The Clinton quadrille」を録音していました。さらに3月30日にはチャールズ・ハリソン(Charles Harrison, 1878–1965)による「Swanee River Trail」とアル・バーナード(Al Bernard, 1888–1949)による「Wal, I swan!」が確認でき、同社が外国語歌唱、古いダンス曲系のフィドル録音、流行歌、コミック歌唱を同じ月に保持していたことがわかります。ディスク末期の段階でも、同社の録音対象が単一の市場に絞られていなかったことは重要です。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1927-03-03
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-29
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-30
ジェネット
1927年3月のスター・ピアノ社(Starr Piano Co.)のジェネット・レコード(Gennett Records)は、『The Talking Machine World』1927年3月号に広告を出しており、同月の市場で自社ブランドを継続的に打ち出していました。録音面では、3月7日にギターとハーモニカの二重奏、3月29日にギター伴奏の男声二重唱、3月30日にモゼル・オルダーソン(Mozelle Alderson, 1900頃–1965)による女性ブルース歌唱「Mozelle blues」が確認できます。ジェネットは1927年3月にも、地方音楽、通俗二重唱、ブルースを併存させる独自の編成を維持していました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/20s/Talking-Machine-1927-03.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-07
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-29
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1927-03-30
