1929年11月に録音された音楽

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1929年11月に録音された音楽

1929年11月は、世界恐慌の衝撃が各分野へ広がるなかで、外交、文化、経済、自然災害、探検が同時に動いた月でした。パリでは11月5日から12月5日まで、外国人待遇国際会議(International Conference on the Treatment of Foreigners)が開かれ、越境する人々の法的地位が議論されました。11月7日にはニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art)が最初の展覧会『セザンヌ、ゴーガン、スーラ、ファン・ゴッホ』展(Cezanne, Gauguin, Seurat, van Gogh)を開き、近代美術を専門に扱う新しい美術館として出発しました。11月15日にはハーバート・フーヴァー(Herbert Hoover, 1874–1964)が産業、農業、労働の代表と協議を進める方針を示し、景気後退への対応を急ぎました。11月18日にはグランドバンクス地震と津波が発生し、ニューファンドランド南岸に大きな被害を与え、12本の大西洋横断海底通信ケーブルも切断されました。11月29日にはリチャード・エブリン・バード(Richard Evelyn Byrd, 1888–1957)が南極点上空飛行を達成し、航空探検史の節目となりました。

この月の確認されている録音:0曲

1929年11月の録音に関する情報のまとめ

1929年11月の録音産業は、同月に確認できる同時代業界資料を見るかぎり、新録音そのものよりも、電気蓄音機、ラジオ=蓄音機併設機、電気ピックアップ、販売網拡張が前面に出ていました。ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)系の販売体制では、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)の従来網を生かしたラジオ=蓄音機販売が進み、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)、ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)、ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Company, Inc.)でも、電気再生機とラジオ受信機を一体で売る姿勢が明瞭でした。11月の一次資料上、当月の録音業界は「新録音拡大の月」というより、「電気再生機と流通再編の月」とみるほうが実態に近いです。

ラジオ=ヴィクター

ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)の1929年年次報告では、ラジオ=ヴィクター社(Radio-Victor Corporation of America)がラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)とヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)の販売業務を扱い、ヴィクター・ラジオとヴィクター・ラジオ=エレクトローラ(Victor Radio with Electrola)を旧ヴィクター販売網で売っていたことが確認できます。さらに同報告では、1929年秋に、ラジオ受信機、アクセサリー、蓄音機、真空管をめぐる研究、設計、製造、販売を統合する方針が示されており、11月時点の同社が録音再生機をラジオ産業全体のなかで再配置していたことがわかります。

コロムビア

コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)は、1929年11月号の業界誌で、C-11型受信機、ラジオ=蓄音機併設の940型、ヴィヴァ=トーナル電気蓄音機920型、さらに受信機に接続してレコードを電気再生する180型ポータブル・ターンテーブル兼ピックアップ装置を案内していました。ここで確認できるのは、同月のコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)が、レコード会社としてだけでなく、電気再生機器とラジオ受信機を一体の家庭娯楽機器として展開していた事実です。

ブランズウィック

ブランズウィック=バルク=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)は、同じ1929年11月号の業界誌で、14型ラジオ、21型高型機、さらに電気式パナトロープ(Panatrope)を組み合わせた31型を紹介していました。31型はラジオ受信機と電気再生装置を結合した機種として示されており、この月の同社が単なる受信機販売ではなく、レコード再生を含む総合娯楽機を市場へ出していたことが確認できます。

ソノラ

ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Company, Inc.)については、1929年11月号の業界誌で、フィラデルフィアのH. P. Schade Companyを、ソノラ・ラジオおよびソノラ・ラジオ=メロドン(Sonora Radio-Melodon)の販売代理店に任命したことが報じられています。加えて同号では、同社の新ラインとして、スクリーングリッド管式シャーシを備えた受信機群と、190ドルから695ドルまでのラジオ=蓄音機併設機が紹介されていました。11月のソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Company, Inc.)は、販売網拡張と複合機投入の両面で活動が確認できます。

エジソン

トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)については、1929年11月号の業界誌で、アイオワ州ドビュークのレニアー・ブラザーズ(Renier Brothers)を、エジソンのラジオ、蓄音機、レコードの販売代理店として新たに立てたことが確認できます。一方で、アメリカ議会図書館(Library of Congress)のエジソン・ディスク史では、同社は1929年夏に新しい携帯型ディスク蓄音機とニードル盤を導入したのち、10月21日にディスク事業を閉じて今後はラジオ=蓄音機へ重点を移す方針を示したとされています。したがって1929年11月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、流通面ではまだ商品を動かしていた一方、事業全体としては終息局面にあったとみるのが適切です。同月の一次資料上、新録音拡張の具体像までは確認できません。

ケープハート

ケープハート社(The Capehart Corporation)は、1929年11月号の業界誌で、自動蓄音機の有力商材としてケープハート・オーケストロープ(Capehart Orchestrope)が紹介されています。記事では、この機械が28枚のレコードから56曲を連続再生し、電気ピックアップ、3段増幅器、電磁式ラウドスピーカーを用い、硬貨式・非硬貨式の両モデルを持つと説明されています。11月の資料上、ケープハート社(The Capehart Corporation)は、レコード再生を自動化した商業用機器の分野で独自の存在感を示していました。