1931年8月に録音された音楽

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1931年8月に録音された音楽

1931年8月は、世界恐慌の深刻化が政治と社会を大きく動かした月でした。ロンドンでは、ドイツ賠償と政府間債務の支払猶予をめぐるロンドン専門家会議(London Conference of Experts)が8月11日にロンドン議定書(London Protocol)へ結実し、国際金融の立て直しが最優先課題であることを示しました。イギリスでは、ジェームズ・ラムゼイ・マクドナルド(James Ramsay MacDonald, 1866–1937)が8月24日に保守党・自由党の支持を受ける国民政府(National Government)を組織し、政局が急転しました。インドでは、モハンダス・カラムチャンド・ガンディー(Mohandas Karamchand Gandhi, 1869–1948)が8月29日に蒸気船ラージプタナ号(S.S. Rajputana)で出航し、第2回円卓会議(Second Round Table Conference)へ向かいました。中国では、黄河(Huang He)と長江(Yangtze River)流域の1931年中国大洪水が8月にかけて壊滅的被害を拡大し、新疆では8月11日に富蕴地震(1931 Fuyun earthquake)が発生しており、この月のアジアは政治危機と大災害の双方に直面していました。

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1931年8月の録音に関する情報のまとめ

1931年8月の録音業界では、アールシーエー・ヴィクター社(RCA Victor Company, Inc.)、コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)、ブランズウィック・ラジオ社(Brunswick Radio Corporation)の録音活動を当月の資料から確認できます。ディスコグラフィー・オブ・アメリカン・ヒストリカル・レコーディングズ(Discography of American Historical Recordings)では、8月5日、8月17日、8月24日にこれら各社のマトリクスが並んでおり、流行歌、ハワイアン系録音、教育・宣伝向け録音、映画関連転写を含む業務が継続していたことがわかります。さらに、当月の業界誌では、記録音楽の売上回復を前提とした販売施策や、携帯型機器、ラジオ・フォノグラフ複合機、録音再生関連商品の販促が確認でき、1931年8月が不況下でも録音産業の再編と販売強化が進んでいた時期であることを示しています。

アールシーエー・ヴィクター

アールシーエー・ヴィクター社(RCA Victor Company, Inc.)は、1931年8月の録音日付資料で少なくとも8月5日、8月17日、8月24日の活動を確認できます。8月5日には映画音声の転写案件である CVE-2201 が見え、8月17日には BRC-70169 などの10インチ盤用マトリクスが並び、フランク・ルーサー(Frank Luther, 1899–1980)による録音が確認できます。8月24日にも MRC-70429 など16インチ盤用マトリクスが載っており、同社が当月に通常の商業盤と特殊用途盤の双方を扱っていたことがわかります。また、1931年8月の業界誌では、ポータブル・フォノグラフ、ラジオ受信機、店頭用ディスプレー「Dancette」の販促が見え、別の技術誌では16ミリ家庭用サウンド装置の開発完了が報じられており、同社が録音・再生の周辺市場を拡張していたことも確認できます。

コロムビア

コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)は、1931年8月17日と8月24日の録音日付資料で活動を確認できます。8月17日には W151735 と W151736 が確認でき、ケイト・スミス(Kate Smith, 1907–1986)による流行歌録音が進められていました。8月24日にも W151750 などの10インチ盤用マトリクスが並んでおり、同社が8月後半にも新録を継続していたことがわかります。さらに、同月の業界誌にはコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)名義の「Columbia Records」広告が掲載されており、録音制作と流通の両面で当月の市場活動が続いていたことを確認できます。

ブランズウィック

ブランズウィック・ラジオ社(Brunswick Radio Corporation)は、1931年8月5日、8月17日、8月24日の録音日付資料で活動を確認できます。8月5日には E36962 と E36963 が確認でき、カラマ・カルテット(Kalama Quartette)によるハワイアン系録音が行われていました。8月17日には E37079 が確認でき、ビル・チャリス・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bill Challis and His Orchestra)に関わる録音が見えます。8月24日にも XE37062 などのマトリクスが並んでおり、同社の録音業務が月内を通じて継続していたことがわかります。販売面でも、1931年8月の業界誌は新ラインの展示会が主要都市で好評だったこと、増産によって価格改定が可能になったことを伝えており、ブランズウィック・ラジオ社(Brunswick Radio Corporation)が録音制作だけでなく販売攻勢も強めていたことを示しています。

ラジオ・ディストリビューティング社

主要販売会社としては、ラジオ・ディストリビューティング社(Radio Distributing Corporation)が同月の資料で確認できます。業界誌では、同社のマックス・H・クリッチ(Max H. Krich, 生没年不明)が、ラジオ商と音楽商のあいだでレコード需要が再び高まっていると判断し、その機会に対応するために記録音楽専門の販売要員として V・C・ロットカンプ(V. C. Rottkamp, 生没年不明)を加えたことが報じられています。1931年8月の時点で、販売現場が単なる機械販売ではなくレコード販売の再活性化を見込んで動いていたことを示す資料です。