1935年8月に録音された音楽
1935年8月は、英領インドでインド統治法(Government of India Act 1935)が8月2日に裁可され、モスクワではコミュニスト・インターナショナル第七回世界大会(Seventh World Congress of the Communist International)が7月25日–8月21日に開かれて反ファシズム統一戦線の方針が強く打ち出されました。アメリカ合衆国では、フランクリン・デラノ・ルーズベルト(Franklin Delano Roosevelt, 1882–1945)が8月14日に社会保障法(Social Security Act)へ署名し、8月9日には自動車運送事業法(Motor Carrier Act of 1935)が成立しました。8月15日にはウィリー・ポスト(Wiley Post, 1898–1935)とウィル・ロジャース(Will Rogers, 1879–1935)がアラスカで墜落事故死し、8月27日にはインディアン美術工芸法(Indian Arts and Crafts Act of 1935)が制定され、8月31日には1935年中立法(Neutrality Act of 1935)が成立しています。国家制度、福祉政策、交通統制、文化政策、対外不介入が同月に重なり、1935年8月は政治と社会の再編が濃密に進んだ月でした。
この月の確認されている録音:0曲
1935年8月の録音に関する情報のまとめ
1935年8月の同時代業界誌を見ると、アメリカ合衆国のレコード市場では映画楽曲とダンス・バンド盤が販売の中心にあり、『トップ・ハット』(Top Hat)、『エヴリ・ナイト・アット・エイト』(Every Night at Eight)、『ビッグ・ブロードキャスト・オブ・1936』(The Big Broadcast of 1936)に結びつく盤が各社の販促の軸になっていました。『Variety』8月7日号の月次集計では、ブランズウィック(Brunswick)、コロムビア(Columbia)、デッカ(Decca)、ヴィクター(Victor)の各欄に映画楽曲、一般ダンス盤、スウィング寄りの盤が並び、8月21日号のディスク評でもその傾向が確認できます。英国では8月号『The Gramophone』が、ヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)、パーロフォン(Parlophone)、ブランズウィック(Brunswick)、デッカ(Decca)、リーガル=ゾノフォン(Regal-Zonophone)の新譜を評しており、米国由来の録音と英国市場向けの独自盤が同時に動いていたことが読み取れます。
ブランズウィック
1935年8月のブランズウィック(Brunswick)は、映画公開と結びついた販促がとくに目立ちました。8月21日号『Variety』のディスク評では、『トップ・ハット』(Top Hat)と『ビッグ・ブロードキャスト・オブ・1936』(The Big Broadcast of 1936)に関連する盤がまとめて扱われており、同月の同社が映画音楽を軸に売れ筋を形成していたことが確認できます。英国8月号『The Gramophone』でもジャズ系・黒人ポピュラー系の新譜がまとまって評されており、英米両市場で存在感を保っていました。
- https://archive.org/details/variety119-1935-08
- https://archive.org/stream/variety119-1935-08/variety119-1935-08_djvu.txt
- https://worldradiohistory.com/UK/Gramophone/Gramophone-1935-08.pdf
コロムビア
1935年8月のコロムビア(Columbia)は、映画連動のダンス盤と一般市場向けのダンス・バンド盤を並行して動かしていました。『Variety』8月7日号の月次集計では、映画楽曲に結びつく盤とダンス市場向けの盤が同じ売れ筋欄に並んでおり、単一の流行に依存せず広い市場を押さえる編成を取っていたことが確認できます。月内資料上では、8月のコロムビア(Columbia)は特定の一作よりも、複数の流行曲を同時に市場へ流し込む運用に特徴がありました。
- https://archive.org/details/variety119-1935-08
- https://archive.org/stream/variety119-1935-08/variety119-1935-08_djvu.txt
デッカ
1935年8月のデッカ(Decca)は、映画楽曲とダンス・バンド盤の両面で目立つ動きを見せました。『Variety』8月7日号と8月21日号を通して、『エヴリ・ナイト・アット・エイト』(Every Night at Eight)や『ビッグ・ブロードキャスト・オブ・1936』(The Big Broadcast of 1936)に関係する盤が扱われており、同社が映画音楽との連動を明確に進めていたことが確認できます。英国8月号『The Gramophone』では、デッカ(Decca)が軽音楽盤だけでなくクラシック録音も押し出しており、英米双方で販売の幅を広げていたこともこの月の特徴でした。
- https://archive.org/details/variety119-1935-08
- https://archive.org/stream/variety119-1935-08/variety119-1935-08_djvu.txt
- https://worldradiohistory.com/UK/Gramophone/Gramophone-1935-08.pdf
ヴィクター
1935年8月のヴィクター(Victor)は、映画楽曲とスウィングの両方で存在感を示しました。『Variety』8月21日号のディスク評では、『トップ・ハット』(Top Hat)関連盤と『エヴリ・ナイト・アット・エイト』(Every Night at Eight)関連盤がともに扱われており、同社が映画音楽の市場を強く意識していたことが確認できます。あわせて月次集計ではスウィング寄りの人気盤も上位に見えており、1935年8月のヴィクター(Victor)は映画音楽と新しいダンス音楽の双方を押さえる位置にありました。
- https://archive.org/details/variety119-1935-08
- https://archive.org/stream/variety119-1935-08/variety119-1935-08_djvu.txt
ヒズ・マスターズ・ヴォイス
英国8月号『The Gramophone』では、ヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)が米国録音由来の盤を英国市場向けに選別して発売していたことが確認できます。誌面では単なる流行盤としてではなく演奏内容そのものを評価する書き方が見られ、1935年8月の同社が英国市場における米国録音の受け皿として重要な位置を占めていたことが読み取れます。
パーロフォン
英国8月号『The Gramophone』では、パーロフォン(Parlophone)が英国製スウィング盤や小編成の軽音楽盤を前面に出していました。映画楽曲一辺倒ではなく、英国市場向けの独自色を持つ軽音楽部門を維持していたことがこの月の特徴で、同誌の評からもその新譜が同時代的で洗練された盤として受け止められていたことが確認できます。
リーガル=ゾノフォン
英国8月号『The Gramophone』では、リーガル=ゾノフォン(Regal-Zonophone)が一般ダンス盤に加えて、よりリズム色の強い盤も押し出していました。誌面広告と新譜評を合わせると、1935年8月の同社は中価格帯レーベルとして軽音楽市場を支えつつ、英国市場向けの“hot”寄りの盤も強化していたことが確認できます。
