1935年7月に録音された音楽
1935年7月は、政治・経済・都市生活・航空技術・出版文化の各分野で、のちに長く参照される節目が相次いだ月でした。7月5日、アメリカ合衆国ではフランクリン・デラノ・ルーズベルト(Franklin Delano Roosevelt, 1882–1945)が全国労働関係法(National Labor Relations Act)に署名し、民間部門における団体交渉権の法的基盤が明確になりました。7月8日にはクリーブランド・スタジアムでメジャーリーグベースボール・オールスターゲーム(Major League Baseball All-Star Game)が開かれ、アメリカン・リーグが勝利しました。7月13日、アメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦は、通商の拡大を目的とする交換公文をモスクワで交わしました。7月16日、オクラホマシティでは175基のパーキングメーターが設置され、自動車都市化を象徴する新しい街路管理の仕組みが現実のものとなりました。7月28日にはボーイング社(The Boeing Company)のボーイング・モデル299(Boeing Model 299)が初飛行し、のちの大型爆撃機開発史に連なる重要な一歩となりました。さらに7月30日、アレン・レーン(Allen Lane, 1902–1970)がペンギン・ブックス(Penguin Books)を創業し、廉価なペーパーバックを大量に普及させる出版史上の転換点が生まれました。
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1935年7月の録音に関する情報のまとめ
1935年7月の録音業界では、アメリカ合衆国の大手各社が廉価盤・ダンス音楽・ポピュラー音楽を中心に供給を続け、同時に英領マラヤでも月次新譜の流通が確認できます。アメリカ側では、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・マニュファクチュアリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のRCAヴィクター部門(RCA Victor Division)がブルーバード(Bluebird)を通じて低価格盤市場を押さえ、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)はコロムビア(Columbia)、ブランズウィック(Brunswick)、ヴォカリオン(Vocalion)など複数レーベルを横断して録音と発売を継続していました。デッカ・レコードス社(Decca Records, Inc.)も同月にニューヨーク録音を行っており、さらに機材面ではユニバーサル・マイクロフォン社(Universal Microphone Co., Ltd.)が業務用録音機を市場に送り出していました。
RCAヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・マニュファクチュアリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のRCAヴィクター部門(RCA Victor Division)は、1935年時点でブルーバード(Bluebird)を廉価盤の中核ブランドとして展開していました。1935年の社内資料では、ブルーバードが録音音楽をより広い購買層へ届ける線として位置づけられており、同年7月には Bluebird B-6014 のアメリカ合衆国発売が確認できます。1935年7月の市場では、同部門が高価格盤だけでなく低価格盤でも継続的に新譜を供給していたことが読み取れます。
- https://www.worldradiohistory.com/ARCHIVE-RCA/RCA-Service/RCA-Victor-Service-Notes-1935.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Retailing/30s/Radio-Retailing-1935-01.pdf
- https://mainspringpress.org/2026/03/26/label-of-the-week-victor-junior-1930s/
アメリカン・レコード
アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)は、1930年代半ばにコロムビア(Columbia)、ブランズウィック(Brunswick)、オーケー(OKeh)、ヴォカリオン(Vocalion)などを擁する大手企業として活動していました。1935年7月には、ミルズ・ブルー・リズム・バンド(Mills Blue Rhythm Band)がニューヨークで7月2日と7月9日に録音を行っており、この時期にも同社のスタジオ運用とレーベル供給が止まっていなかったことが分かります。7月2日の録音には「Ride, Red, Ride」が含まれ、7月9日の録音には「Congo Caravan」「There’s Rhythm in Harlem」「Tallahassee」が含まれていました。
- https://mainspringpress.org/2024/06/10/announcing-the-american-record-corporation-project-at-uc-santa-barbara/
- https://www.45cat.com/78rpm/record/do1467
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2026/01/RUST_JRR-6.pdf
ブランズウィックとヴォカリオン
ブランズウィック・レコード・コーポレーション(Brunswick Record Corporation)は、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)のスタジオ原盤に依拠して運営されていた別法人で、1935年7月にも具体的な新規音源が確認できます。7月19日、ヘンリー・アレン(Henry Allen, 1900–1967)楽団はニューヨークで「Dinah Lou」「Roll Along, Prairie Moon」「I Wished on the Moon」「Truckin’」を録音し、これらはヴォカリオン(Vocalion)2997・2998およびブランズウィック(Brunswick)A-86046・A-86047として流通しました。1935年7月の時点で、同一セッションの音源がヴォカリオンとブランズウィックの両系統へ配分されていたことが、当時のレーベル運用の実態をよく示しています。
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2026/01/RUST_JRR-6.pdf
- https://mainspringpress.org/2024/06/10/announcing-the-american-record-corporation-project-at-uc-santa-barbara/
デッカ
デッカ・レコードス社(Decca Records, Inc.)は、1935年7月にもニューヨークで新録音を続けていました。ディスコグラフィー・オブ・アメリカン・ヒストリカル・レコーディングス(Discography of American Historical Recordings)で確認できる Decca 518 では、バブズ・アンド・ハー・ブラザーズ(Babs and Her Brothers)による「You’re So Darn Charming」と「Double Trouble」が、1935年7月11日の録音として示されています。同日のセッションでは Decca 505 用の別音源も録音されており、同社が同月中旬にもポピュラー・ヴォーカル盤の新規制作を積極的に行っていたことが分かります。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/objects/detail/309468/Decca-518
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2026/01/RUST_JRR-6.pdf
ヒズ・マスターズ・ヴォイス
グラモフォン社(The Gramophone Company, Limited)のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)は、1935年7月に英領マラヤ向けの新譜供給を行っていました。シンガポール版『The Straits Times』1935年7月4日付および7月13日付の広告では、「new records for July」として7月新譜の到着が告知され、BD 166 をはじめとするダンス盤が並べられています。1935年7月の段階で、英語圏の大手販売網が東南アジア市場でも月次新譜を明確に展開していたことを示す例です。
- https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/issue/straitstimes19350704-1
- https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/issue/straitstimes19350713-1
- https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/people/cp111601/gramophone-company-limited
ユニバーサル・マイクロフォン
ユニバーサル・マイクロフォン社(Universal Microphone Co., Ltd.)は、1935年7月時点で業務用録音機の新製品を市場に送り出していました。『Radio Retailing』1935年7月号では、同社の “professional recording machine” が新しく発売されたと紹介されており、8月以降の技術誌広告でも同機が継続して宣伝されています。レコード会社そのものではありませんが、1935年7月の録音産業を支えた機材供給企業として見逃せません。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Retailing/30s/Radio-Retailing-1935-07.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Early-Technical/The-Technician/The-Technician-1935-08.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Communications-Magazine/30s/1935/Radio-Engineering-1935-09.pdf
