1935年6月に録音された音楽
1935年6月は、東アジアでは6月10日に梅津・何応欽協定(Umezu-He Agreement)が発効し、河北省の非武装化と中国側勢力の後退が進みました。南アメリカでは6月12日にチャコ戦争(Chaco War)の休戦が成立し、ボリビアとパラグアイの長期戦は停止へ向かいました。ヨーロッパでは6月18日に英独海軍協定(Anglo-German Naval Agreement)が結ばれ、ドイツ海軍保有量をイギリス海軍総トン数の35パーセントに制限する枠組みが作られました。アメリカ合衆国では6月19日に社会保障法(Social Security Act of 1935)案が上院を通過し、同年8月の成立へ大きく前進しました。国際労働機関(International Labour Organization)は6月22日に四十時間制条約(Forty-Hour Week Convention, 1935)を採択し、労働時間短縮の国際基準化を進めました。文化面ではカルロス・ガルデル(Carlos Gardel, 1890–1935)が6月24日にメデジンでの航空事故で死去し、タンゴ界に大きな衝撃を与えました。社会史の面では、アルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous)が6月10日を創始の日として位置づけており、依存症回復運動史の節目となっています。
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1935年6月の録音に関する情報のまとめ
1935年6月の同時代業界紙をみると、アメリカ合衆国の録音市場では、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のRCAヴィクター、ブランズウィック・レコード・コーポレーション(Brunswick Record Corporation)、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)系の各レーベル、そしてコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)の名を残す系統が、映画楽曲、ダンス楽団盤、流行歌盤、ノヴェルティ盤を競合的に売り出していました。6月5日号と6月26日号の『Variety』では、各社の人気盤順位と新譜評が並行して掲載され、同月には音楽出版社保護協会(Music Publishers Protective Association)がダビング権処理に関する警告を出し、主要ライブラリーの権利処理主体も明示されています。したがって、1935年6月の録音業界は、新譜競争、系列内のレーベル運用、そしてダビング権の管理が同時に前景化していた月といえます。
デッカ
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)は、1935年6月の『Variety』で最も目立つ活動を示した会社の一つです。人気盤一覧では、ジミー・ランスフォード・アンド・ヒズ・オーケストラ(Jimmie Lunceford and His Orchestra)、ドーシー・ブラザーズ・オーケストラ(Dorsey Brothers Orchestra)、ガイ・ロンバード・アンド・ヒズ・ロイヤル・カナディアンズ(Guy Lombardo and His Royal Canadians)、ビング・クロスビー(Bing Crosby, 1903–1977)、カーサ・ローマ・オーケストラ(Casa Loma Orchestra)、アンブローズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ambrose and His Orchestra)などの盤が繰り返し挙がっていました。新譜評では、同社が自社所属歌手と楽団を束ねた企画盤を動かしていたことや、英国系音源をアメリカ市場へ継続投入していたことも確認でき、1935年6月のデッカは大衆盤市場で攻勢を強めていました。
- https://archive.org/download/variety118-1935-06/variety118-1935-06.pdf
- https://archive.org/stream/variety118-1935-06/variety118-1935-06_djvu.txt
ブランズウィック
ブランズウィック・レコード・コーポレーション(Brunswick Record Corporation)は、1935年6月の人気盤一覧と新譜評の双方で強い存在感を示していました。人気盤一覧では、ハル・ケンプ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Hal Kemp and His Orchestra)、フレディ・マーティン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Freddy Martin and His Orchestra)、ルイ・プリマ・アンド・ヒズ・ニュー・オーリンズ・ギャング(Louis Prima and His New Orleans Gang)、デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington and His Orchestra)、レオ・ライスマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Leo Reisman and His Orchestra)などが並びました。6月26日号の新譜評では、ジョニー・グリーン(Johnny Green, 1908–1989)がコロムビア系配置からブランズウィックへ動かされていること、ケイ・カイザー(Kay Kyser, 1905–1985)の初ブランズウィック盤が紹介されていること、テッド・フィオ・リト・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ted Fio Rito and His Orchestra)やハル・ケンプ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Hal Kemp and His Orchestra)の新譜が続いていることが確認できます。系列内の人材配置と新譜投入の両面で、6月のブランズウィックは非常に活発でした。
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RCAヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のRCAヴィクターは、1935年6月の人気盤一覧で、ファッツ・ウォーラー・アンド・ヒズ・リズム(Fats Waller and His Rhythm)、レイ・ノーブル・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ray Noble and His Orchestra)、ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and His Orchestra)、エンリク・マドリゲラ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Enric Madriguera and His Orchestra)、エディ・ダッチン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Eddy Duchin and His Orchestra)などの盤を並べていました。6月26日号の新譜評では、ベニー・グッドマン(Benny Goodman, 1909–1986)の新しいスウィング様式が若い踊り手に浸透しつつあること、ジャン・ガーバー(Jan Garber, 1894–1977)の盤が短期間に集中的に発売されていること、ジャック・ジャクソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Jack Jackson and His Orchestra)と、1935年6月時点でリッツ=カールトン・ホテルで活動していたリチャード・ヒンバー・アンド・ヒズ・リッツ=カールトン・ホテル・オーケストラ(Richard Himber and His Ritz-Carlton Hotel Orchestra)の盤が並んでいることが確認できます。1935年6月のRCAヴィクターは、流行歌、ダンス盤、ホテル出演楽団の録音を横断的に展開していました。
- https://archive.org/download/variety118-1935-06/variety118-1935-06.pdf
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- https://www.library.ucsb.edu/digitized-test-pressings-michael-brooks-collection
- https://archive.org/details/78_lullaby-of-broadway_richard-himber-and-his-ritz-carlton-orchestra-dubin-warren_gbia7009381a
アメリカン・レコード・コーポレーション
アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)は、1935年6月の録音業界を理解するうえで外せない中核企業です。ブランズウィック・レコード・コーポレーション(Brunswick Record Corporation)は1931年以後、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)系の実務運営のもとで、ブランズウィック、メロトーン、ヴォカリオンなどを扱う体制に入っていました。1935年6月の『Variety』では、ダビング権処理の記事においてアメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)が権利処理対象ライブラリーの一つとして明示されており、同月の市場では、前面に出るのは各レーベル名であっても、実務とライブラリー管理の背後には同社が存在していたことが確認できます。
- https://archive.org/download/variety118-1935-06/variety118-1935-06.pdf
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コロムビア
コロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company)は、1934年の買収後、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)系の一部として再編されていましたが、1935年6月の市場ではコロムビア・レーベル名義の盤がなお可視的に動いていました。人気盤一覧には、ジョニー・グリーン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Johnny Green and His Orchestra)、ミルズ・ブルー・リズム・バンド(Mills Blue Rhythm Band)、ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and His Orchestra)、ルース・エッティング(Ruth Etting, 1896–1978)、レジー・フォーサイス・アンド・ヒズ・オーケストラ(Reggie Forsythe and His Orchestra)などの盤が並びます。一方で、会社組織としてのコロムビアは、すでに独立した大衆盤の主力企業というより、アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)内部で位置づけを変えつつあるブランドとして存在していました。1935年6月は、その過渡的な姿が業界紙上に現れている月です。
- https://archive.org/download/variety118-1935-06/variety118-1935-06.pdf
- https://archive.org/stream/variety118-1935-06/variety118-1935-06_djvu.txt
ガネット
6月5日号の『Variety』に載ったダビング権処理の記事では、ガネット・レコード社(Gannett Record Co.)の表記で、音楽出版社保護協会(Music Publishers Protective Association)が扱うライブラリーの一つとして挙げられています。1935年6月の同号から確認できる活動は新譜販売よりも権利処理側のものですが、少なくともこの月の業界紙上では、同社ライブラリーがダビング権管理の対象としてなお認識されていました。
- https://archive.org/download/variety118-1935-06/variety118-1935-06.pdf
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