1935年10月に録音された音楽
1935年10月は、国際秩序の動揺と文化史上の節目が同時に進んだ月でした。10月3日、ベニート・ムッソリーニ(Benito Mussolini, 1883–1945)政権下のイタリア王国がハイレ・セラシエ1世(Haile Selassie I, 1892–1975)統治下のエチオピア帝国へ侵攻し、10月7日には国際連盟(League of Nations)がイタリアを侵略国と認定しました。北米では10月14日のカナダ総選挙でウィリアム・ライアン・マッケンジー・キング(William Lyon Mackenzie King, 1874–1950)率いる自由党が政権に復帰し、大恐慌下の政局が転換しました。文化面では10月10日、ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin, 1898–1937)作曲の《ポーギーとベス(Porgy and Bess)》がニューヨークで初演され、アメリカ音楽劇史の画期となりました。中国では長征を続けていた中国共産党(Chinese Communist Party)勢力が10月中に陝西へ到達し、毛沢東(Mao Zedong, 1893–1976)の指導権強化につながりました。さらに10月21日にはドイツの国際連盟脱退が正式に発効し、集団安全保障の弱体化がいっそう明確になりました。
この月の確認されている録音:0曲
1935年10月の録音に関する情報のまとめ
1935年10月の録音業界資料では、当月の米国市場が映画歌曲、ダンス・バンド盤、スター歌手盤を中心に動いていたことに加え、各社が単に新譜を出すだけでなく、映画との連動、地域市場での販促、人事やレーベル運営の再編を通じて競争していたことが確認できます。とくに映画『トップ・ハット(Top Hat)』関連曲の波及は複数社に及び、ニューヨークやロサンゼルスの市場報告には、レーベルごとの強弱が具体的に表れています。1935年10月は、アメリカン・レコード社(American Record Corporation)系、アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のヴィクター(Victor)、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)が、それぞれ異なる売り方と市場浸透の仕方を示した月でした。
アメリカン・レコード社
1935年10月の同時代記事では、アメリカン・レコード社(American Record Corporation)がブランズウィック、コロムビア、オーケー、ヴォカリオンなど複数レーベルを束ねる運営体として機能していたことが確認できます。当月はレーベル個別の新譜だけでなく、同社の録音統括に関わる人事異動が報じられており、映画業界との接点を含む管理体制の再編が進んでいたことが読み取れます。1935年10月の同社は、単独ブランドの動きよりも、複数レーベルをまたぐ統括運営そのものが確認できる月でした。
- https://archive.org/download/variety120-1935-10/variety120-1935-10.pdf
- https://mainspringpress.org/2024/06/10/announcing-the-american-record-corporation-project-at-uc-santa-barbara/
ブランズウィック
ブランズウィック・レコード社(Brunswick Record Corporation)は、1935年10月の市場報告で映画連動型のポピュラー盤需要を強く取り込んでいました。ロサンゼルス市場では映画『トップ・ハット(Top Hat)』関連曲が同社の売れ筋に入り、映画の話題性をそのまま盤の販売へつなげていたことが分かります。1935年10月のブランズウィックは、スター歌手やダンス・バンドを並べるだけでなく、映画公開と連動した商品力で都市部市場を押していたと整理できます。
- https://archive.org/download/variety120-1935-10/variety120-1935-10.pdf
- https://www.newyorker.com/magazine/1935/10/19/popular-records
コロムビア
コロムビア(Columbia)は、同じアメリカン・レコード社系でありながら、1935年10月の市場報告ではブランズウィックほどの勢いを示していません。ニューヨーク市場欄では同社の反応が鈍いとされる一方、新譜紹介ではジャズ寄りの録音や洗練された編成の盤が扱われており、販売面での即効性よりもレーベルの個性が前面に出ています。1935年10月のコロムビアは、同一企業グループ内でも市場反応に差があったことを示す例として位置づけられます。
- https://archive.org/download/variety120-1935-10/variety120-1935-10.pdf
- https://www.newyorker.com/magazine/1935/10/19/popular-records
ヴィクター
ヴィクター(Victor)は、1935年時点ではアールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のブランドとして運営されており、1935年10月の市場記事でも主力ブランドとして安定した強さを見せています。月内の報告では、ダンス・バンド盤とスター盤の双方が売れ筋として扱われ、映画由来の話題曲にも対応できる広い商品構成が確認できます。1935年10月のヴィクターは、個別ヒットに依存するというより、総合ブランドとして市場を広く押さえる形で動いていました。
- https://archive.org/download/variety120-1935-10/variety120-1935-10.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Journal/30s/Radio-Journal-1935-08.pdf
デッカ
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)は、1935年10月の市場報告で、スター歌手盤を前面に押し出しながら都市部での存在感を強めていました。ロサンゼルスとニューヨークの報告では、同社盤の反応がともに良好で、月半ばには需要の上向きも記されています。1935年10月のデッカは、看板歌手を核にしつつダンス・バンド盤も合わせて動かし、比較的新しい会社でありながら主要レーベルの一角として市場に食い込んでいたことが確認できます。
- https://archive.org/download/variety120-1935-10/variety120-1935-10.pdf
- https://www.newyorker.com/magazine/1935/10/19/popular-records
