1935年9月に録音された音楽

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1935年9月に録音された音楽

1935年9月は、政治・社会・文化の各面で緊張と転換が重なった月でした。アメリカ合衆国のフロリダ・キーズ(Florida Keys)では9月2日にレイバー・デー・ハリケーン(Labor Day Hurricane)が直撃し、大きな人的被害を生みました。ドイツでは9月15日、帝国市民法(Reich Citizenship Law)とドイツ人の血とドイツ人の名誉を守るための法律(Law for the Protection of German Blood and German Honor)が成立し、総称してニュルンベルク法(Nuremberg Laws)と呼ばれる反ユダヤ法体系が制度化されました。アメリカ合衆国ではヒューイ・ピアース・ロング・ジュニア(Huey Pierce Long Jr., 1893–1935)が9月10日に死去し、9月14日には社会保障委員会(Social Security Board)が初会合を開いて、社会保障法の実施体制が動き始めました。9月30日にはフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト(Franklin Delano Roosevelt, 1882–1945)がボールダー・ダム(Boulder Dam)の献納式に臨み、ニューディール期の大規模公共事業を象徴する出来事となりました。同じ9月30日には、ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin, 1898–1937)の『ポーギーとベス』(Porgy and Bess)がボストンで初演段階に入り、舞台音楽とオペラの接点として大きな注目を集めました。

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1935年9月の録音に関する情報のまとめ

1935年9月の同時代資料では、録音業界の動きは新譜一覧よりも、秋商戦に向けた再生機器、ラジオ・フォノグラフ複合機、輸入レコード、店頭実演販売の形でよく見えます。アメリカ合衆国の業界誌では、アールシーエー・ヴィクターやケープハートなどの複合機が仕様表に並び、シンガポールおよび英領マラヤの新聞では、ヒズ・マスターズ・ヴォイス、アールシーエー・ヴィクター、デッカ、リーガル、コロムビアなどを扱う販売会社の広告が連日確認できます。したがってこの月は、録音物の制作記録よりも、レコードと再生機器の販売網、輸入流通、家庭向け試聴販売の動きを企業別に追うのが適切です。

アールシーエー・マニュファクチャリング社

1935年9月号の『ラジオ・リテーリング』(Radio Retailing)では、アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Company, Inc.)カムデン本社の「1936 RCA Victor Sets」が掲載され、アールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)の新シーズン商品が提示されていました。仕様表にはラジオ・フォノグラフ機を含む複合機種が並び、当月の段階で同社が録音再生機器を秋商戦の中核商品として展開していたことが確認できます。

ケープハート社

ケープハート社(Capehart Corp.)は、同じく1935年9月号の『ラジオ・リテーリング』(Radio Retailing)で、404-DR、405-DR、406-DR などの Auto. Phono-Comb. を掲載していました。したがってこの月の資料上では、同社は高級自動フォノグラフ複合機を主要商品として明確に打ち出していました。

ピアース=エアロ社

ピアース=エアロ社(Pierce-Airo, Inc.)は、1935年9月号『ラジオ・リテーリング』(Radio Retailing)で、新シーズン向けに table set、console に加えて phonograph combination を含む新製品群を出していました。録音関連企業としてみると、この月の同社は、単体ラジオだけでなく蓄音機能を含む家庭用複合機市場に継続して参入していたことが確認できます。

ロビンソン社

ロビンソン社(Robinson Co., Ltd.)は、1935年9月12日、13日、14日付の『ザ・ストレーツ・タイムズ』(The Straits Times)に、ウォルナット・キャビネット型のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)機を反復広告していました。本文で扱われているヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)は、ザ・グラモフォン・カンパニー・リミテッド(The Gramophone Company Limited)のブランドであり、ロビンソン社(Robinson Co., Ltd.)はその販売窓口として、1935年9月のシンガポール市場で高級再生機器の販促を行っていました。

エス・マウトリー社

エス・マウトリー社(S. Moutrie Co., Ltd.)は、1935年9月18日付『ザ・ストレーツ・タイムズ』(The Straits Times)で、ヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)の all wave radio の初回入荷予定と家庭無料試聴を告知していました。さらに9月21日付『マラヤ・トリビューン』(Malaya Tribune)では、「チャップ・クチン」(Chap Kuching)第6号の発売を広告しており、同社がこの月に再生機器販売とレコード供給の両面で活動していたことが確認できます。

エム・ビー・イー・ネイサン・ラジオ・サウンド・エンジニアーズ

エム・ビー・イー・ネイサン・ラジオ・サウンド・エンジニアーズ(M.B.E. Nathan Radio Sound Engineers)は、1935年9月21日付『マラヤ・トリビューン』(Malaya Tribune)で、デッカ(Decca)、リーガル(Regal)、ヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)、コロムビア(Columbia)のレコードを扱うことを明示していました。同じ広告では Orchard Road の Amber Mansions 所在地と North Bridge Road 支店閉鎖も告知されており、この月の同社が販売網の整理を進めながら複数レーベルの流通を担っていたことがわかります。

マラカ・ラジオ・サービス

マラカ・ラジオ・サービス(Malaka Radio Service)は、1935年9月22日付『ザ・ストレーツ・タイムズ』(The Straits Times)で、アールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)、ウェスティングハウス(Westinghouse)、ガラード(Garrard)の automatic record changer、radiogram electric motor、pick-up などを扱う販売会社として広告を出していました。したがってこの月の同社は、ラジオ受信機だけでなく、レコード再生装置とその周辺機器を一体で扱う地方販売会社として活動していました。