1936年6月に録音された音楽

この記事は約16分で読めます。
スポンサーリンク

1936年6月に録音された音楽

1936年6月は、政治・社会制度・科学技術・文化が大きく動いた月でした。フランス共和国(French Republic)ではレオン・ブルム(Léon Blum, 1872–1950)の人民戦線(Front populaire)政府が6月4日に発足し、6月7日のマティニョン協定(Accords de Matignon)で賃上げ、団体交渉、労働者代表制度をめぐる合意が成立しました。エチオピア帝国(Ethiopian Empire)のハイレ・セラシエ1世(Haile Selassie I, 1892–1975)は6月30日、国際連盟総会(Assembly of the League of Nations)でイタリア王国(Kingdom of Italy)の侵攻を訴えました。アメリカ合衆国(United States of America)では6月15日にアメリカ合衆国商品取引法(Commodity Exchange Act)が成立し、商品先物取引の規制が強化されました。交通・技術ではRMSクイーン・メリー(RMS Queen Mary)が6月1日にニューヨーク港(New York Harbor)へ到着し、6月26日にはフォッケウルフ Fw 61(Focke-Wulf Fw 61)が初飛行しました。スポーツでは6月19日にニューヨークのヤンキー・スタジアム(Yankee Stadium)で行われたボクシングのヘビー級ノンタイトル戦で、マックス・シュメリング(Max Schmeling, 1905–2005)がジョー・ルイス(Joe Louis, 1914–1981)を破りました。文化面では6月30日にマーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell, 1900–1949)の『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind)が刊行され、6月18日にマクシム・ゴーリキー(Maxim Gorky, 1868–1936)が死去しました。

この月の確認されている録音:0曲

1936年6月の録音に関する情報のまとめ

1936年6月の録音関連情報では、アメリカ合衆国(United States of America)のアールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Company, Inc.)と米国デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)の録音日別情報、英国の『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号に掲載された新譜・レビュー・広告情報が主要な確認材料になります。米国側では、アメリカ歴史的録音ディスコグラフィー(Discography of American Historical Recordings)が1936年6月の日付別録音記録を示し、英国側ではエレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric & Musical Industries Ltd.)系のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)、コロムビア(Columbia)、パーロフォン(Parlophone)、リーガル・ゾノフォン(Regal Zonophone)、英国デッカ・レコード社(Decca Record Company Ltd.)、ブランズウィック(Brunswick)、クリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング社(The Crystalate Gramophone Record Manufacturing Co. Ltd.)系のヴォカリオン(Vocalion)とレックス(Rex)の活動が、1936年6月号の誌面で確認できます。

アールシーエー・マニュファクチャリング社

アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Company, Inc.)は、1936年版『ヴィクター・レコード目録』(Catalogue of Victor Records)で、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のサービスとしてヴィクター・レコード(Victor Records)とブルーバード・レコード(Bluebird Records)を主要製品に掲げています。同目録は、ヴィクター・レコード(Victor Records)の既刊録音、レッド・シール録音、家庭用再生機器、電気蓄音機、ラジオ蓄音機などをまとめており、1936年時点で録音物と再生機器を一体の商品体系として扱っていたことを示しています。

米国デッカ・レコード社

米国デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)では、カーター・ファミリー(The Carter Family)の1936年6月8日および6月9日のニューヨーク録音が確認できます。6月8日の記録には「My Native Home」「Sweet Heaven in My View」など、6月9日の記録には「No Depression in Heaven」「Where the Silvery Colorado Wends Its Way」「Lay My Head Beneath the Rose」などが含まれます。1936年6月の米国録音史では、都市の商業スタジオで南部系レパートリーがデッカ盤として制作・流通した例として位置づけられます。

英国デッカ・レコード社

英国デッカ・レコード社(Decca Record Company Ltd.)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、クラシック、ダンス、スウィングの複数分野にわたって取り上げられています。クラシック欄では、ヘンリー・ウッド(Henry Wood, 1869–1944)指揮によるラルフ・ヴォーン・ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872–1958)の『ロンドン交響曲』(London Symphony)がデッカ盤として扱われています。ダンス欄では、ボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bob Crosby and His Orchestra)のDecca F5962、ジェラルド・アンド・ヒズ・オーケストラ(Geraldo and His Orchestra)のDecca F5955が紹介されています。

同社の英国録音活動としては、1936年6月24日にテムズ・ストリート・スタジオズ(Thames Street Studios)で、アン・ウッド(Ann Wood, 生没年不明)、ピーター・ピアーズ(Peter Pears, 1910–1986)、英国放送協会合唱団(British Broadcasting Corporation Chorus)による録音が行われた記録があります。これは『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号の市場情報とは別に、同月の英国デッカ・レコード社(Decca Record Company Ltd.)の録音日を示す資料です。

ヒズ・マスターズ・ヴォイス

エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric & Musical Industries Ltd.)系のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、クラシック、声楽、ダンス、スウィングの各欄にまたがって確認できます。ワンダ・ランドフスカ(Wanda Landowska, 1879–1959)によるヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685–1750)の録音、キルステン・フラグスタート(Kirsten Flagstad, 1895–1962)のワーグナー録音、ロイ・フォックス・アンド・ヒズ・バンド(Roy Fox and His Band)のダンス・レコードが扱われています。

スウィング欄では、ジーン・クルーパ(Gene Krupa, 1909–1973)、ベニー・グッドマン(Benny Goodman, 1909–1986)、ロイ・エルドリッジ(Roy Eldridge, 1911–1989)らを含むヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)盤も紹介されており、同レーベルが1936年6月の英国市場で欧州クラシックだけでなく米国スウィング録音の流通にも関わっていたことが確認できます。

コロムビア

エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric & Musical Industries Ltd.)系のコロムビア(Columbia)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、ダンス・レコード、声楽、軽音楽、管弦楽録音の各欄に現れます。ダンス欄では、キャロル・ギボンズ・アンド・ザ・サヴォイ・ホテル・オルフェアンズ(Carroll Gibbons and the Savoy Hotel Orpheans)のColumbia FB1399とColumbia FB1408、英国放送協会ダンス・オーケストラ(British Broadcasting Corporation Dance Orchestra)のColumbia FB1409が扱われています。

声楽欄では、サム・カーソン(Sam Carson, 生没年不明)のコロムビア盤6点がまとめて紹介されています。これらは、1936年6月号の誌面上でコロムビア(Columbia)が英国市場においてダンス、地域色の強い歌唱、軽音楽を同時に展開していたことを示しています。

パーロフォン

エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric & Musical Industries Ltd.)系のパーロフォン(Parlophone)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、声楽、ダンス、オルガン、軽音楽の各欄に掲載されています。ダンス欄では、モーリス・ウィニック・アンド・ヒズ・オーケストラ(Maurice Winnick and His Orchestra)のParlophone F465、ハリー・ロイ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Harry Roy and His Orchestra)のParlophone F460、ザ・クラカジャックス(The Krakajax)のParlophone F469が確認できます。

声楽欄ではシドニー・マキューアン(Sydney MacEwan, 1908–1991)のスコットランド歌曲、子ども向け歌曲、ピアノ伴奏付き声楽盤などが紹介されており、パーロフォン(Parlophone)が1936年6月の英国市場でダンス盤だけでなく家庭向け・教育向けに近いレパートリーも供給していたことが読み取れます。

リーガル・ゾノフォン

エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric & Musical Industries Ltd.)系のリーガル・ゾノフォン(Regal Zonophone)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、ブラス・バンド、軽音楽、映画音楽関連のレコードとして確認できます。バンド・レコード欄では、マン・アンド・フェルトンズ・ワークス・バンド(Munn and Felton’s Works Band)のRegal Zonophone MR2003系録音、フォーデンズ・モーター・ワークス・バンド(Foden’s Motor Works Band)のRegal Zonophone MR2057が取り上げられています。

同号の雑録欄では、ジョージ・フォームビー(George Formby, 1904–1961)の歌曲、映画『艦隊を追って』(Follow the Fleet)関連のオルガン録音などもリーガル・ゾノフォン(Regal Zonophone)盤として言及されます。1936年6月の英国市場では、同レーベルが大衆歌謡、映画音楽、ブラス・バンド録音をまたぐ廉価・普及系レーベルとして機能していたことが確認できます。

ブランズウィック

ブランズウィック(Brunswick)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号で、伴奏用レコードと米国系スウィング録音の双方に現れます。メロディ・メイカー=リズム(Melody Maker—Rhythm)シリーズのBrunswick 02184とBrunswick 02185は、伴奏レコードとして紹介され、テムズ・ストリート・スタジオズ(Thames Street Studios)での録音品質にも触れられています。

同じ欄では、フランキー・トランバウアー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Frankie Trumbauer and His Orchestra)のBrunswick 02197、スタッフ・スミス・アンド・ヒズ・オニックス・クラブ・ボーイズ(Stuff Smith and His Onyx Club Boys)のBrunswick 02182も扱われています。1936年6月の英国市場において、ブランズウィック(Brunswick)はジャズ・スウィング系の輸入・再発売系レパートリーと実用的な伴奏レコードの両面で存在感を持っていました。

クリスタレート系ヴォカリオンとレックス

クリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング社(The Crystalate Gramophone Record Manufacturing Co. Ltd.)系のヴォカリオン(Vocalion)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号のスウィング欄と広告で大きく扱われています。ジョー・ヘイムズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Joe Haymes and His Orchestra)、ブルー・リズム・バンド(Blue Rhythm Band)、ベニー・カーター・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Carter and His Orchestra)のVocalion 5およびVocalion 6が紹介され、誌面広告ではヴォカリオン・スウィング・レコード(Vocalion Swing Records)がロンドンのシティ・ロード(City Road)を拠点に販売告知されています。

同じクリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング社(The Crystalate Gramophone Record Manufacturing Co. Ltd.)系のレックス(Rex)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号のレビュー欄で、チャーリー・クンツ(Charlie Kunz, 1896–1958)やアリス・フェイ(Alice Faye, 1915–1998)の関連盤として確認できます。1936年6月の英国市場では、ヴォカリオン(Vocalion)がスウィング専門色を強め、レックス(Rex)が大衆的な軽音楽・映画音楽レパートリーを扱っていました。

グラモフォン・エクスチェンジ社

グラモフォン・エクスチェンジ社(The Gramophone Exchange, Ltd.)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号に広告を掲載し、ロンドンのシャフツベリー大通り(Shaftesbury Avenue)を拠点とするレコード専門販売会社として活動していました。同広告では、ヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)、コロムビア(Columbia)、パーロフォン(Parlophone)、デッカ(Decca)、ブランズウィック(Brunswick)、デッカ・ポリドール(Decca-Polydor)の主要盤を扱うことを示しています。

同社は、店頭試聴、郵送販売、海外発送、外国録音の選定カタログを売りにしており、1936年6月の英国レコード市場で、専門小売店が単なる販売窓口ではなく、録音選択と国際流通を支える役割を担っていたことを示しています。

アルフレッド・イムホフ社

アルフレッド・イムホフ社(Alfred Imhof Ltd.)は、『ザ・グラモフォン』(The Gramophone)1936年6月号に広告を掲載し、ロンドンのニュー・オックスフォード・ストリート(New Oxford Street)を拠点に、ラジオ機器、蓄音機、レコードを扱う販売会社として確認できます。同広告では、購入後のサービスを強調し、顧客に無料サービス券を提供する販売方法を示しています。

同社の同月広告には、キルステン・フラグスタート(Kirsten Flagstad, 1895–1962)のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)盤、アイリーン・ジョイス(Eileen Joyce, 1908–1991)のピアノ録音、ブッシュ=ゼルキン・トリオ(Busch-Serkin Trio)のシューベルト録音、イェフディ・メニューイン(Yehudi Menuhin, 1916–1999)の協奏曲録音などが推薦盤として掲げられています。1936年6月の英国小売市場では、専門販売会社が新譜推薦、再生機器、保守サービスを組み合わせて販売していたことが確認できます。