1936年10月に録音された音楽
1936年10月は、スペイン内戦(Spanish Civil War)でフランシスコ・フランコ・バアモンデ(Francisco Franco Bahamonde, 1892–1975)が10月1日に国民派側の国家元首として公的に位置づけられ、マドリード(Madrid)方面の攻勢が強まりました。英国では10月4日にロンドン(London)東部でケーブル・ストリートの戦い(Battle of Cable Street)が起こり、10月5日にはジャロー失業者の行進(Jarrow Crusade)がロンドンへ向けて出発しました。10月9日にはフーヴァー・ダム(Hoover Dam)からロサンゼルス(Los Angeles)への送電が始まり、大規模公共事業が都市インフラに結びつきました。英国委任統治領パレスチナ(British Mandate for Palestine)では、1936年4月–10月のアラブ人ゼネストが終息しました。10月25日にはイタリア王国(Kingdom of Italy)とドイツ国(German Reich)の接近がローマ=ベルリン枢軸(Rome–Berlin Axis)として明確化し、10月29日にはイラク王国(Kingdom of Iraq)でバクル・シドキ(Bakr Sidqi, 1890–1937)が関与した軍事クーデターが発生しました。文化・スポーツでは、10月6日にニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)がニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)を破り、1936年のワールドシリーズ(1936 World Series)を制しました。
この月の確認されている録音:0曲
1936年10月の録音に関する情報のまとめ
1936年10月の録音資料では、米国ではアメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)のヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)およびブランズウィック・レコード(Brunswick Records)、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)、アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のヴィクター(Victor)およびブルーバード(Bluebird)系録音が目立ちます。英国では、英国デッカ・レコード社(The Decca Record Company Limited)、エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric and Musical Industries Ltd.)傘下のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)、コロムビア(Columbia)、パーロフォン(Parlophone)、クリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング社(Crystalate Gramophone Record Manufacturing Co. Ltd.)系のヴォカリオン(Vocalion)で録音活動が確認できます。同月は、ニューヨーク(New York)、シカゴ(Chicago)、ニューオーリンズ(New Orleans)、ロンドン(London)などで、スウィング、ブルース、ダンス・バンド、ラグタイム由来の小編成録音が並行して行われました。
アメリカン・レコード・コーポレーション/ヴォカリオン
アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)のヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)系では、1936年10月にニューヨークとシカゴで小編成ジャズの重要録音が行われました。とくに10月9日にシカゴで録音されたジョーンズ=スミス・インコーポレイテッド(Jones-Smith Incorporated)は、カウント・ベイシー(Count Basie, 1904–1984)、レスター・ヤング(Lester Young, 1909–1959)、ジミー・ラッシング(Jimmy Rushing, 1901–1972)らを含む録音で、カンザスシティ系スウィングの展開を示す重要例です。10月上旬から中旬には、シャーキー・ボナーノ(Sharkey Bonano, 1904–1972)、ヘンリー・アレン(Henry Allen, 1908–1967)、プットニー・ダンドリッジ(Putney Dandridge, 1902–1946)らの録音も行われ、同社系レーベルがジャズ、ヴォーカル、ブルース色の強い小編成録音を継続していたことが分かります。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://mainspringpress.org/mainspring-press-free-online-discographies/
アメリカン・レコード・コーポレーション/ブランズウィック
アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)のブランズウィック・レコード(Brunswick Records)系では、1936年10月21日にニューヨークでテディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and His Orchestra)の録音が行われました。この録音にはテディ・ウィルソン(Teddy Wilson, 1912–1986)とビリー・ホリデイ(Billie Holiday, 1915–1959)が関わっており、同月のブランズウィック・レコード(Brunswick Records)系録音の中でも代表的なセッションです。個別曲としては「Easy To Love」「The Way You Look Tonight」などが確認でき、同社系の録音がスウィング時代の都会的な小編成ジャズと密接に結びついていたことを示しています。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://mainspringpress.org/mainspring-press-free-online-discographies/
デッカ・レコード
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)では、1936年10月にシカゴとニューヨークでブルース、スウィング、ダンス・バンド系の録音が行われました。シカゴではハーレム・ハムファッツ(Harlem Hamfats)やリル・アームストロング・アンド・ハー・スウィング・バンド(Lil Armstrong and Her Swing Band)の録音があり、低価格盤市場に向けたブルース色の強い録音活動が続いていました。ニューヨークでは、10月29日にチック・ウェブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and His Orchestra)がエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald, 1917–1996)を含む録音を行い、「(If You Can’t Sing It) You’ll Have To Swing It」「Vote For Mr. Rhythm」など、同時期のスウィングとヴォーカル・ジャズを結びつける重要録音を残しました。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://mainspringpress.org/mainspring-press-free-online-discographies/
- https://www.discogs.com/master/1348638-Chick-Webb-And-His-Orchestra-Youll-Have-To-Swing-It-Vote-For-Mister-Rhythm
アールシーエー・マニュファクチャリング/ヴィクターおよびブルーバード
アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のヴィクター(Victor)系では、1936年10月7日にニューヨークでベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and His Orchestra)の録音が行われました。ベニー・グッドマン(Benny Goodman, 1909–1986)の同月録音では「Organ Grinder’s Swing」などが確認でき、スウィング時代の大編成録音を代表する動きです。また、ブルーバード(Bluebird)系では10月中旬にニューオーリンズのセント・チャールズ・ホテル(St. Charles Hotel)でブルース録音が行われ、同社系が大編成スウィングと低価格盤向けブルース録音を並行して扱っていたことが分かります。
- https://www.bluesandrhythm.co.uk/wp-content/uploads/2014/08/For-web-site-VIDO-MUSSO-DISCO.pdf
- https://www.45cat.com/78rpm/record/25445
- https://sundayblues.org/?tag=bluebird-records
英国デッカ
英国デッカ・レコード社(The Decca Record Company Limited)では、1936年10月にロンドンでダンス・バンド系の録音が行われました。ベンジャミン・バルーク・アンブローズ(Benjamin Baruch Ambrose, 1896–1971)率いるアンブローズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ambrose and His Orchestra)の録音では「Organ Grinder’s Swing」が確認でき、米国由来のスウィング曲が英国の商業録音市場に取り込まれていたことを示しています。ブライアン・ローランス・アンド・ヒズ・ランズダウン・ハウス・セクステット(Brian Lawrance and His Lansdowne House Sextet)の同月録音もあり、ロンドンのホテル・レストラン系ダンス・バンド文化と英国デッカ(Decca)の録音活動が結びついていました。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/people/cp40280/decca-record-company-limited
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ/ヒズ・マスターズ・ヴォイス
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric and Musical Industries Ltd.)傘下のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)系では、1936年10月にロンドンでハリー・リーダー(Harry Leader, 1906–1987)関連の小編成録音が行われました。「Ragging The Rag」系列の録音が確認でき、ラグタイム由来の語法を1930年代の英国録音市場で再構成していたことが分かります。同月のヒズ・マスターズ・ヴォイス(His Master’s Voice)系録音は、米国スウィングの影響だけでなく、英国側のダンス音楽・ラグタイム回顧的な商品企画も含んでいました。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://www.bl.uk/collection-guides/emi-archive
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ/コロムビア
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric and Musical Industries Ltd.)傘下のコロムビア(Columbia)系では、1936年10月にロンドンで米国系舞台芸能・ジャズ演奏家の録音が行われました。ジョン・“バブルス”・サブレット(John “Bubbles” Sublett, 1902–1986)の同月録音には、バック・ワシントン(Buck Washington, 1903–1955)らが関わっており、米国のヴォードヴィル、タップ、ヴォーカル・ジャズの系譜が英国コロムビア(Columbia)系の録音網に取り込まれていたことを示しています。個別曲の細目よりも、米国芸能人の英国録音市場への接続を示す事例として重要です。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://www.bl.uk/collection-guides/emi-archive
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ/パーロフォン
エレクトリック・アンド・ミュージカル・インダストリーズ社(Electric and Musical Industries Ltd.)傘下のパーロフォン(Parlophone)系では、1936年10月21日にロンドンでジョー・ダニエルズ(Joe Daniels, 1909–1993)の録音が行われました。このセッションでは、ラグタイム、スタンダード、ラテン系舞曲を含むレパートリーが扱われており、パーロフォン(Parlophone)系録音が英国国内盤だけでなく国外盤・系列盤にも展開される流通性を持っていたことが分かります。ジョー・ダニエルズ(Joe Daniels, 1909–1993)は英国のダンス・バンドおよびドラム奏者として知られ、1936年10月の同系録音を代表する人物です。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://www.bl.uk/collection-guides/emi-archive
クリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング/ヴォカリオン
クリスタレート・グラモフォン・レコード・マニュファクチャリング社(Crystalate Gramophone Record Manufacturing Co. Ltd.)系のヴォカリオン(Vocalion)では、1936年10月19日にロンドンでベニー・カーター・アンド・ヒズ・スウィング・クインテット(Benny Carter and His Swing Quintet)の録音が行われました。ベニー・カーター(Benny Carter, 1907–2003)は同時期の米国ジャズを代表する編曲家・アルトサクソフォン奏者であり、このロンドン録音は英国滞在期の活動を示す重要例です。資料上ではヴォカリオン(Vocalion)番号に加えてインペリアル(Imperial)番号なども確認でき、英国で録音された米国ジャズ演奏家の録音が複数レーベルで流通したことを示しています。
- https://archive.org/stream/brian-rust-jazz-records-free-edition-6/Brian%20Rust_jazz-records_free-edition-6_djvu.txt
- https://www.heritagegateway.org.uk/Gateway/Results_Single.aspx?resourceID=5&uid=1475683
