1937年11月に録音された音楽
1937年11月は、日中戦争(Second Sino-Japanese War)の拡大と欧州外交の緊張が重なった月でした。上海戦(Battle of Shanghai)では中国軍が11月中旬までに上海方面から後退し、南京(Nanjing)への危機が迫りました。1922年ワシントン九カ国条約第7条に基づくブリュッセル会議(The Conference of Brussels, November 3–24, 1937, Convened in Virtue of Article 7 of the Nine-Power Treaty of Washington of 1922)は1937年11月3日–24日に開かれましたが、日本の参加を得られず、停戦への実効策には至りませんでした。ドイツでは1937年11月5日の会議を記録したホスバッハ覚書(Hossbach Memorandum)が作成され、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler, 1889–1945)の膨張方針を示しました。1937年11月6日にはイタリア王国(Kingdom of Italy)が防共協定(Agreement against the Communist International)に加わりました。ブラジルではゲトゥリオ・ドルネレス・ヴァルガス(Getúlio Dornelles Vargas, 1882–1954)が1937年11月10日にエスタド・ノヴォ(Estado Novo)を開始しました。文化面では、1937年国際博覧会(Exposition Internationale des Arts et Techniques dans la Vie Moderne)がパリで1937年11月25日に閉幕し、ウォルト・ディズニー・プロダクション(Walt Disney Productions)の短編映画『オールド・ミル(The Old Mill)』が1937年11月5日に公開され、マルチプレーン・カメラ(multiplane camera)の初期実用例となりました。
この月の確認されている録音:0曲
1937年11月の録音に関する情報のまとめ
1937年11月の録音関連情報では、アメリカ合衆国の大手レコード会社によるスウィング録音、短命レーベルの整理、英国とフランスでのジャズ録音が並行して確認できます。デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)ではニューヨーク市とロサンゼルスで録音活動が続き、アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のヴィクター(Victor)およびブルーバード(Bluebird)でも主要バンドの録音が確認できます。アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)系では、ブランズウィック・レコード(Brunswick Records)とヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)を通じた録音・発行が行われる一方、マスター・レコード社(Master Records, Inc.)とヴァラエティ・レコード(Variety Records)の市場展開が整理されました。英国ではパーロフォン(Parlophone)とコロムビア(Columbia)、フランスではスウィング・レーベル(Swing)で同月録音が確認できます。
デッカ
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)では、1937年11月にニューヨーク市とロサンゼルスで複数のスウィングおよびポピュラー音楽録音が確認できます。ニューヨーク市ではチック・ウェッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)の録音が行われ、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald, 1917–1996)の歌唱を含むセッションも確認できます。ロサンゼルスではボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bob Crosby and his Orchestra)とボブ・クロスビーズ・ボブ・キャッツ(Bob Crosby’s Bob Cats)の録音活動が続きました。さらに1937年11月24日には、アンドリュース・シスターズ(The Andrews Sisters)がヴィック・ショーン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Vic Schoen and his Orchestra)の伴奏で録音を行い、「Bei mir bist du schoen (Means That You’re Grand)」を含むデッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)の重要なポピュラー録音が残されました。
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2025/11/RUST_JRR-6.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-01
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-24
アールシーエー・マニュファクチャリング社
アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)のヴィクター(Victor)およびブルーバード(Bluebird)では、1937年11月にニューヨーク市、ハリウッドなどでジャズ、スウィング、ダンス・バンド系の録音が確認できます。ヴィクター(Victor)では、エミリオ・カセレス・トリオ(Emilio Caceres Trio)やベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his Orchestra)の録音が行われ、同社のスウィング系カタログを支える月内活動が確認できます。ブルーバード(Bluebird)でも、オジー・ネルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ozzie Nelson and his Orchestra)などの録音が確認でき、同系列の普及価格帯レーベルでも録音活動が続いていました。
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2025/11/RUST_JRR-6.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-05
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-12
アメリカン・レコード・コーポレーション
アメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)系では、1937年11月にニューヨーク市でブランズウィック・レコード(Brunswick Records)およびヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)系の録音が確認できます。テディ・ウィルソン(Teddy Wilson, 1912–1986)を中心とするセッションでは、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday, 1915–1959)の歌唱を含む録音が行われ、同社系レーベルのジャズおよびヴォーカル録音の重要な動きとなりました。月後半にはミッジ・ウィリアムズ(Midge Williams, 1915–1952)の録音も確認でき、ヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)を通じた女性ヴォーカル系録音の展開も見られます。
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2025/11/RUST_JRR-6.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-01
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=PrimaryTitle&date=1937-11-23
マスター・レコード社とヴァラエティ・レコード
マスター・レコード社(Master Records, Inc.)とヴァラエティ・レコード(Variety Records)は、アーヴィング・ミルズ(Irving Mills, 1894–1985)が関与した1937年の短命レーベル企画として展開されました。1937年10月22日までにアメリカン・レコード・コーポレーション(American Record Corporation)との整理合意が成立し、1937年11月1日にマスター・レコード(Master Records)とヴァラエティ・レコード(Variety Records)のレーベルは市場から引き上げられる形になりました。ヴァラエティ・レコード(Variety Records)の原盤はヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)へ、マスター・レコード(Master Records)の原盤はブランズウィック・レコード(Brunswick Records)へ移され、該当盤には「Produced by Master Records, Inc.」の表示が用いられました。
- https://www.yumpu.com/en/document/view/29078926/the-master-and-variety-record-labels-the-iajrc
- https://mainspringpress.org/wp-content/uploads/2026/01/ARCAP_2nd-ed.pdf
パーロフォンとコロムビア
英国のパーロフォン(Parlophone)およびコロムビア(Columbia)レーベルでは、1937年11月にロンドンで複数のジャズおよびダンス・バンド録音が確認できます。ハリー・ロイ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Harry Roy and his Orchestra)、ハリー・ロイズ・タイガー・ラガマフィンズ(Harry Roy’s Tiger-Ragamuffins)、マックス・エイブラムス・アンド・ヒズ・リズム・メイカーズ(Max Abrams and his Rhythm Makers)などの録音が行われ、英国の商業レーベルがアメリカ由来のスウィング語法やジャズ・レパートリーを継続的に扱っていたことが確認できます。シド・フィリップス・アンド・ヒズ・バンド(Sid Phillips and his Band)の録音も同月に確認でき、英国コロムビア(Columbia)系の小編成・ダンス・バンド録音の一部をなしています。
スウィング・レーベル
フランスのスウィング・レーベル(Swing)では、1937年11月にパリでエディ・サウス(Eddie South, 1904–1962)関連の録音が確認できます。ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt, 1910–1953)、ステファン・グラッペリ(Stéphane Grappelli, 1908–1997)らを含む編成で録音が行われ、フランスにおけるジャズ録音活動の一例となりました。スウィング・レーベル(Swing)は、1930年代後半の欧州ジャズ録音を支える独立系レーベルとして、この時期のパリのジャズ・シーンを記録する役割を担っていました。
ミュージクラフト・レコード社
ミュージクラフト・レコード社(Musicraft Records, Inc.)は、1937年にニューヨークでジェファーソン・トラヴィス・ラジオ社(Jefferson Travis Radio Corporation)系のレコード事業として始まりました。1937年11月には、同社の月間レコード販売が創業時から四倍になったことが『タイム(Time)』誌で報じられ、初期の販路開拓と通信販売を含む販売活動が同月の企業動向として確認できます。同社は初期には主にクラシック音楽を扱い、後年にはジャズやポピュラー音楽にも範囲を広げました。
- https://archives.libraries.rutgers.edu/repositories/6/resources/697
- https://mainspringpress.org/2025/07/29/recording-the-1930s-the-first-american-independent-classical-labels/
