1938年10月に録音された音楽
1938年10月は、ミュンヘン協定(Munich Agreement)の履行により、ドイツ国(German Reich)が10月1日–10日にチェコスロヴァキア共和国(Czechoslovak Republic)のズデーテン地域(Sudetenland)を占領しました。東アジアでは日中戦争(Second Sino-Japanese War)が拡大し、大日本帝国(Empire of Japan)の軍が10月下旬に広州(Guangzhou)と武漢三鎮(Wuhan)を制圧し、中華民国国民政府(National Government of the Republic of China)は重慶(Chongqing)を中心とする抗戦体制を強めました。アメリカ合衆国(United States of America)では公正労働基準法(Fair Labor Standards Act of 1938)が施行され、最低賃金25セント、週44時間制、児童労働規制を定めました。10月22日にはチェスター・フロイド・カールソン(Chester Floyd Carlson, 1906–1968)とオットー・コルネイ(Otto Kornei, 生没年不明)が乾式複写技術の実験に成功しました。10月30日にはコロンビア・ブロードキャスティング・システム社(Columbia Broadcasting System, Inc.)のマーキュリー劇場オン・ジ・エア(The Mercury Theatre on the Air)で、オーソン・ウェルズ(Orson Welles, 1915–1985)がハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866–1946)原作の『宇宙戦争(The War of the Worlds)』を放送し、ラジオ放送の即時性と社会的影響力を示しました。
この月の確認されている録音:0曲
1938年10月の録音に関する情報のまとめ
1938年10月の録音関連資料では、78回転盤の商業録音、ラジオ蓄音機の販売、即時録音用ブランク盤の供給、既成レコードの小売流通が並行して確認できます。アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)はヴィクター・レコード(Victor Records)とブルーバード・レコード(Bluebird Records)を軸に、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)はジャズとダンス・バンド録音を継続し、アメリカン・レコード社(American Record Corporation)系ではブランズウィック・レコード(Brunswick Records)とヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)の録音活動が確認できます。録音機材・用品の側では、ユニバーサル・マイクロフォン社(Universal Microphone Co., Ltd.)が即時録音用ブランク盤を販売し、レコード小売ではユナイテッド・ラジオ・カンパニー(United Radio Company)が複数レーベルの在庫販売を行っていました。
アールシーエー・マニュファクチャリング
アールシーエー・マニュファクチャリング社(RCA Manufacturing Co., Inc.)は、1938年10月の同時代業界誌で、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)系列の録音・再生機器部門として、ヴィクター・レコード(Victor Records)とブルーバード・レコード(Bluebird Records)を含む販売企画を展開していました。同月の業界誌には、電気チューニング、クリスタル・ピックアップ、自動レコード交換機構を備えたラジオ蓄音機が掲載され、家庭用ラジオとレコード再生機を結びつける商品展開が続いていました。録音面では、ベニー・グッドマン・トリオ(Benny Goodman Trio)、ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)、ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and His Orchestra)が1938年10月12日–13日にシカゴでヴィクター・レコード向けに録音し、エディ・デランジ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Eddie DeLange and His Orchestra)も1938年10月18日にニューヨークでブルーバード・レコード向けの録音を行いました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Retailing/30s/Radio-Retailing-1938-10.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Radio-Today/30s/Radio-Today-1938-10.pdf
- https://adp.library.ucsb.edu/
デッカ・レコード
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)では、1938年10月14日にシカゴでボブ・ハガート(Bob Haggart, 1914–1998)とレイ・ボーダック(Ray Bauduc, 1906–1988)による「ザ・ビッグ・ノイズ・フロム・ウィネトカ(The Big Noise from Winnetka)」が録音され、デッカ・レコード2208として確認できます。同月19日にはフォー・オブ・ザ・ボブ・キャッツ(Four of the Bob Cats)およびボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bob Crosby and His Orchestra)のシカゴ録音が続き、24日–25日にはニューヨークでアンディ・カーク・アンド・ヒズ・トゥエルヴ・クラウズ・オブ・ジョイ(Andy Kirk and His Twelve Clouds of Joy)が「ジャンプ・ジャック・ジャンプ(Jump Jack Jump)」などを録音しました。これらの録音は、同社が1938年10月にもジャズ、スウィング、ダンス・バンドの商業録音を継続していたことを示します。
アメリカン・レコードとブランズウィック・レコード
アメリカン・レコード社(American Record Corporation)系では、1938年10月時点でブランズウィック・レコード社(Brunswick Record Corporation)とヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)を含む録音活動が確認できます。レイ・ノーブル・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ray Noble and His Orchestra)は1938年10月11日にニューヨークで「チェロキー(Cherokee)」などを録音し、ブランズウィック・レコードおよびコロムビア・レコード(Columbia Records)の番号で確認できます。オヴィー・アルストン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ovie Alston and His Orchestra)は1938年10月14日と21日にニューヨークでヴォカリオン・レコード系の録音を行いました。コロンビア・ブロードキャスティング・システム社(Columbia Broadcasting System, Inc.)によるアメリカン・レコード社(American Record Corporation)の取得と、コロムビア・レコーディング社(Columbia Recording Corporation)としての再編は1939年初頭の事象であり、1938年10月の企業活動としては扱いません。
ユニバーサル・マイクロフォン
ユニバーサル・マイクロフォン社(Universal Microphone Co., Ltd.)は、1938年10月の『ラジオ・トゥデイ(Radio Today)』で、即時録音と即時再生に用いるブランク盤を販売していました。広告では、セルロース硝酸塩で被覆した半可塑性の「シルバロイド(Silveroid)」ブランク盤と、高密度で広い周波数応答を目的とした「プロフェッショナル(Professional)」ブランク盤が示され、放送局、録音業者、業務用録音の需要を対象にしていました。同社の当月資料からは、市販レコードを制作した事実ではなく、録音用品市場への供給活動が確認できます。
ユナイテッド・ラジオ
ユナイテッド・ラジオ・カンパニー(United Radio Company)は、1938年10月の『ラジオ・クラフト(Radio-Craft)』で、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)、ブランズウィック・レコード社(Brunswick Record Corporation)、ヴォカリオン・レコード(Vocalion Records)、ブルーバード・レコード(Bluebird Records)、ヴィクター・レコード(Victor Records)、メロトーン・レコード(Melotone Records)、パーフェクト・レコード(Perfect Records)などの10インチ両面盤を大量販売する広告を出していました。これは録音制作ではなく、1938年10月時点で複数レーベルの既成レコードが小売・通信販売市場で流通していたことを示す資料です。
