1945年12月に録音された音楽
1945年12月は、戦後秩序の制度化と占領下日本の改革が並行して進んだ月でした。16日–26日にはモスクワ外相会議(Moscow Conference of Foreign Ministers)が開かれ、欧州諸国との講和準備や極東政策が協議されました。20日には連合国管理理事会法第10号「戦争犯罪、平和に対する罪および人道に対する罪の責任者の処罰」(Control Council Law No. 10: Punishment of Persons Guilty of War Crimes, Crimes Against Peace and Against Humanity)が制定されました。27日には国際通貨基金協定(Articles of Agreement of the International Monetary Fund)と国際復興開発銀行協定(Articles of Agreement of the International Bank for Reconstruction and Development)が発効し、戦後国際金融秩序が正式に動き始めました。日本では15日に「国家神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ノ件」(SCAPIN-448)が発出され、17日に衆議院議員選挙法中改正法律が公布されて女性参政権が認められ、選挙権年齢も20歳へ引き下げられました。22日には労働組合法が公布され、労働者の団結権を制度的に保障する枠組みが整えられました。10日のノーベル賞授賞式では、1945年ノーベル生理学・医学賞(The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1945)がアレクサンダー・フレミング(Alexander Fleming, 1881–1955)、エルンスト・ボリス・チェーン(Ernst Boris Chain, 1906–1979)、ハワード・ウォルター・フローリー(Howard Walter Florey, 1898–1968)に授与され、1945年ノーベル文学賞(The Nobel Prize in Literature 1945)はガブリエラ・ミストラル(Gabriela Mistral, 1889–1957)に授与されました。
この月の確認されている録音:0曲
1945年12月の録音に関する情報のまとめ
1945年12月の録音業界では、終戦後の市場再編を見据えた企業買収、専属契約の拡大、新規レーベルの準備、録音商品の多様化が同時に進みました。ミュージクラフト・コーポレーション(Musicraft Corporation)は企業再編とクラシック部門の再強化を進め、マーキュリー・レコード(Mercury Records)は初のアルバム企画や児童向け盤、民俗音楽部門の拡張に着手しました。デラックス(De Luxe)、ナショナル・レコード(National record label)、シグネチャー・レコード(Signature Record label)などの独立系も、契約獲得や新企画を通じて存在感を強めています。さらに、マジェスティック・レコード社(Majestic Records, Inc.)は新素材盤の生産を打ち出し、コロムビア・レコード(Columbia Records)は放送を活用した販売促進を準備しました。年末の資料からは、1946年初頭の発売・販売競争をにらんで、各社が録音、契約、流通、広告の全方面で動きを活発化させていたことが確認できます。
ミュージクラフト
ミュージクラフト・コーポレーション(Musicraft Corporation)は、1945年12月に企業体制と録音方針の両面で大きく動きました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号は、同社がジェファーソン=トラヴィス・コーポレーション(Jefferson-Travis Corporation)に取得され、完全子会社として運営されると報じています。続く12月22日号では、クラシック部門の拡張が伝えられ、室内楽・器楽録音計画を1946年2月から再開する方針と、クロール・カルテット(Kroll Quartet)との契約が確認できます。年末時点のミュージクラフトは、経営基盤の再編と高級録音分野の再構築を同時に進めていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード(Mercury Records)は、1945年12月に録音商品と所属陣容の拡張を進めました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号は、同社が12月末ごろに最初のアルバム企画を録音する予定であり、児童向け盤やエロル・ガーナー(Erroll Garner, 1921–1977)による10インチ盤の発売準備も進めていると報じています。同じ記事では、民俗音楽部門でプレーリー・ランブラーズ(Prairie Ramblers)とレックス・アレン(Rex Allen, 1920–1999)を加えたことが確認できます。12月22日号の広告では、前週に300,000枚をプレス・納品したと訴求しており、年末時点で生産面でも強い攻勢をかけていたことが読み取れます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
デラックス
デラックス(De Luxe)は、1945年12月に通常の流行歌盤とは異なる企画商品へ踏み込みました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号は、同社が催眠術師ラルフ・スレーター(Ralph Slater, 生没年未確認)と契約し、休息や睡眠を題材にした1枚組アルバム7種の制作を計画していると報じています。12月22日号の広告では、既発盤の即納を前面に出しており、新企画の準備と現行商品の販売強化が並行して進められていました。録音商品を娯楽・生活用途へ広げようとする動きが、同月の資料から確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
ナショナル・レコード
ナショナル・レコード(National record label)は、1945年12月に主力アーティストとの関係を強化しました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号は、ビリー・エクスタイン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Billy Eckstine and His Orchestra)との録音契約を1946年–1947年期に向けて更新したと報じています。記事は、過去1年間に500,000枚を販売したとされる実績を背景に、契約条件が引き上げられたと伝えています。12月22日号の広告では、ナショナル・ディスク・セールズ(National Disc Sales)が新譜と既発盤をまとめて販促しており、契約強化と流通促進が同時に進められていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、1945年12月に放送を利用した販促施策を準備していました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月22日号は、同社の録音宣伝番組が1946年1月12日から63局で放送開始予定であり、マーティン・ブロック(Martin Block, 1903–1967)が司会兼ディスクジョッキーを務めると伝えています。これは、レコード販売の後押しをラジオ番組へ組み込み、全国規模で需要喚起を図る施策でした。終戦直後の消費市場を見据え、録音商品の流通と宣伝を一体化させる動きが確認できます。
マジェスティック・レコード社
マジェスティック・レコード社(Majestic Records, Inc.)は、1945年12月に契約面と素材開発の両方で注目される動きを示しました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月22日号は、スリー・サンズ(The Three Suns)との対立が解消され、新たな1年契約が結ばれたと報じています。同号ではさらに、同社が「Duraflex」と呼ぶ割れにくいプラスチック盤の生産開始を発表したことも確認できます。最初の新素材盤は、アルフレッド・E・スミス(Alfred E. Smith, 1873–1944)追悼アルバムとして披露されました。マジェスティック・レコード社は、所属録音陣の再整備と盤材改良を同時に進めていました。
シグネチャー・レコード
シグネチャー・レコード(Signature Record label)は、1945年12月時点で初回商品の発売前段階にありながら、録音準備を進めていました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号は、同レーベルがまだ最初の盤を発売していない一方で、新たな原盤を蓄積していると伝えています。同記事では、レイ・ナンス(Ray Nance, 1913–1976)と契約し、同月末にナンスを中心とするカルテットで録音を行う予定であることが確認できます。新興レーベルが発売前から録音資産を形成していた状況を示す事例です。
スターリング・レコード社
スターリング・レコード社(Sterling Records, Inc.)は、1945年12月に新譜群の出荷を積極的に告知していました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号と12月22日号の広告では、複数の新録音を「新たなスターリングのヒット」として掲げ、発売日や出荷開始を明示しています。12月15日号ではモンテ・イースター・アンド・ヒズ・オーケストラ(Monte Easter and His Orchestra)による盤が紹介され、12月22日号では追加商品の出荷が続いていました。独立系レーベルとして、年末商戦に向けた継続的な新譜供給を進めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
エクセルシオール・レコード社
エクセルシオール・レコード社(Excelsior Record Co.)は、1945年12月に新譜広告を通じて販売活動を展開していました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号では、同社のレコード番号136を中心に販促広告が掲載され、12月22日号でもエクセルシオール・レコード(Excelsior Records)の広告が続いています。販促上では販売店・流通業者への即時注文を促しており、独立系企業が年末需要の取り込みを狙って積極的に市場へ働きかけていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
アールシーエー・ヴィクター
アールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)は、1945年12月の『ビルボード』(The Billboard)で継続的に新譜広告を展開しました。12月15日号では、ダイナ・ショア・ウィズ・ラス・ケース・アンド・ヒズ・オーケストラ(Dinah Shore with Russ Case and His Orchestra)、チャーリー・スピヴァク・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Spivak and His Orchestra)などの新譜が告知されています。12月22日号では、アースキン・ホーキンス・アンド・ヒズ・オーケストラ(Erskine Hawkins and His Orchestra)、トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and His Orchestra)などを前面に押し出した広告が掲載されました。大手企業として、年末商戦向けの新譜露出を強めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
デッカ・レコード・インコーポレイテッド
デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)は、1945年12月に新譜広告とアルバム企画の両面で動きが確認できます。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月15日号には、デッカ盤 Decca No. 18725 の広告が掲載され、同社が年末市場へ向けた流行歌盤の販促を継続していたことがわかります。12月22日号の業界欄では、バディ・クラーク(Buddy Clark, 1912–1949)とヒルデガルド(Hildegarde, 1906–2005)を扱うアルバム企画が翌週予定として伝えられ、ドロシー・ラムーア(Dorothy Lamour, 1914–1996)による映画関連曲の録音も報じられました。通常盤とアルバム商品の双方を活用し、年末から翌年初頭の販売計画を進めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1945/BB-1945-12-22.pdf
スタンダード・フォノ社
スタンダード・フォノ社(Standard Phono Company)は、1945年12月に販売体制の整備を進めました。『ビルボード』(The Billboard)1945年12月22日号は、同社がジェイ・キャメロン・ゴードン(J. Cameron Gordon, 生没年未確認)を総販売部長に任命したと報じています。記事は、同人物が以前ヴィクター系の販売業務に携わっていたことにも触れており、戦後市場拡大をにらんで販売部門の強化を進めていたことが確認できます。
