1947年5月に録音された音楽
1947年5月は、戦後秩序の制度化と冷戦初期の緊張が同時に進んだ月でした。5月3日、日本国憲法が施行されました。5月4日–5日、フランスではポール・ラマディエ(Paul Ramadier, 1888–1961)政権が共産党閣僚を政府から排除し、戦後の三党連立体制は終結しました。5月6日、アメリカ合衆国ウィスコンシン州南東部で、同州の歴史地震として最大級と評価される地震が発生しました。5月9日、国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development)はフランス向け初融資協定を調印し、戦後復興金融を本格化させました。5月15日、国際連合総会(United Nations General Assembly)は国際連合パレスチナ特別委員会(United Nations Special Committee on Palestine)の設置を決定しました。5月22日、アメリカ合衆国ではギリシャおよびトルコへの援助を定める法律(An Act To Provide for Assistance to Greece and Turkey)が成立しました。文化面では、5月3日にマーサ・グレアム(Martha Graham, 1894–1991)の舞踊作品『ナイト・ジャーニー』(Night Journey)がボストンで初演されました。
この月の確認されている録音:0曲
1947年5月の録音に関する情報のまとめ
1947年5月の録音産業では、戦後需要の高まりを経た市場再調整が進むなか、主要各社が販促策、新系列の準備、国際市場対応、流通網再編を進めていました。業界誌『レコード・インダストリー』(Record Industry)は、ワイヤー録音機への関心が高まる一方で、レコードとラジオ蓄音機が依然として販売の中心にあると論じ、小規模独立系メーカーの淘汰も始まりつつあると記しました。同月の同時代資料では、デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)による映画連動販促、キャピトル・レコード・インコーポレイテッド(Capitol Records, Inc.)による新系列準備、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカのアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division, Radio Corporation of America)による専属契約、コロムビア・レコード・インコーポレイテッド(Columbia Records, Inc.)のメキシコ生産拠点整備、アポロ・レコード・インコーポレイテッド(Apollo Records, Inc.)の販売網再編、ヴォーグ・レコード(Vogue Records)をめぐるマスター権の移転が確認できます。
デッカ・レコード
デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)は、映画『白昼の決闘』(Duel in the Sun)と結びつけたスクエアダンス・アルバムの販促を継続していました。1947年5月号の業界誌『レコード・インダストリー』(Record Industry)は、同社が3月末にロサンゼルスのロジャー・ヤング・オーディトリアム(Rodger Young Auditorium)で西海岸のレコード販売業者と関係者約1,000人を招いた催事を行い、その後も全国規模のディーラー向け窓面販促へ展開していたことを報じています。対象商品は4枚組レコードと踊り方の冊子を組み合わせた10ドル商品で、映画公開と店頭販売を結びつける共同販促が重視されていました。
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード・インコーポレイテッド(Capitol Records, Inc.)は、1947年5月に新系列「キャピトル・アメリカン・レッド・レーベル」(Capitol American Red Label)の導入を告知しました。業界紙『ザ・キャッシュ・ボックス』(The Cash Box)は、この系列が西部音楽、オールドタイム・ダンス、ヒル・カントリー音楽、マウンテン・バラッド、黒人アーティストによる特色ある録音を扱う予定であると報じています。同社は通常のブラック・レーベル系ポピュラー盤とは別建てでこの系列を展開し、2週間ごとに一般ポピュラー盤と交互に新譜を投入する方針を示しました。
アールシーエー・ヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカのアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division, Radio Corporation of America)は、1947年5月にモーリス・シュヴァリエ(Maurice Chevalier, 1888–1972)とジャン・サブロン(Jean Sablon, 1906–1994)を専属録音契約アーティストとして迎えたことを発表しました。『ザ・キャッシュ・ボックス』(The Cash Box)は、モーリス・シュヴァリエ(Maurice Chevalier, 1888–1972)の初回発売盤が同月末に販売予定であり、ジャン・サブロン(Jean Sablon, 1906–1994)の最初の録音も準備されていたと伝えています。戦後のアメリカ市場で外国人歌手への関心が高まるなか、同部門は欧州系スターの投入を強化していました。
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード・インコーポレイテッド(Columbia Records, Inc.)は、1947年5月にメキシコ工場の完成を発表しました。『ザ・キャッシュ・ボックス』(The Cash Box)は、同工場が1947年秋の本格稼働を見込み、現地需要の拡大とメキシコ人アーティストによる録音需要を背景に設けられたと報じています。記事では、同工場が自社でマスター録音を制作し、主としてメキシコ人アーティストの録音を扱う計画であることも明記されています。北米の大手レコード会社が中南米市場へ生産と録音の拠点を広げる動きとして重要です。
アポロ・レコード
アポロ・レコード・インコーポレイテッド(Apollo Records, Inc.)は、1947年5月に販売網の再編を進めました。『ザ・キャッシュ・ボックス』(The Cash Box)は、同社がワシントンD.C.とテキサス州ダラスに新たな支店を設け、従来のボルティモア支店を閉鎖したと報じています。さらに、ダラスのブルー・ボネット・ミュージック社(Blue Bonnet Music Co.)にテキサス州、オクラホマ州、アーカンソー州での独占配給を任せる方針が示されました。同号では、アメット・コブ・オーケストラ(Amette Cobb Orchestra)との契約も発表されており、販売網強化と録音レパートリー拡充が並行して進められていたことが分かります。
ヴォーグ・レコード
ヴォーグ・レコード(Vogue Records)では、1947年5月にフィル・スピタルニー(Phil Spitalny, 1890–1970)との録音関係解消が報じられました。『ザ・キャッシュ・ボックス』(The Cash Box)は、フィル・スピタルニー(Phil Spitalny, 1890–1970)が未払い保証金とロイヤルティの代替として、同社で制作済みだった13点のマスター所有権を取得したと伝えています。このうち8点は未発売であり、ヴォーグ・レコード(Vogue Records)は既発売分の店頭在庫回収にも合意していました。独立系レコード会社と専属アーティストの契約関係、マスター権の帰属、在庫処理が同時に表面化した事例です。
