1948年5月に録音された音楽
1948年5月は、戦後世界の政治秩序と社会制度が大きく動いた月でした。1948年5月3日、アメリカ合衆国最高裁判所(Supreme Court of the United States)はシェリー対クレーマー事件(Shelley v. Kraemer)で、人種制限付き不動産契約を州裁判所が強制執行することは違憲であると判断しました。1948年5月6日には、ローレンス・オリヴィエ(Laurence Olivier, 1907–1989)による映画『ハムレット(Hamlet)』がロンドンで世界初演されました。1948年5月7日–11日には、欧州統合の方向性を議論する欧州会議(Congress of Europe)がハーグで開催されました。1948年5月10日、朝鮮半島南部では第1回国会議員総選挙(The 1st National Assembly Elections)が実施され、同日、アメリカ合衆国大統領ハリー・S・トルーマン(Harry S. Truman, 1884–1972)は鉄道ストライキ回避のため鉄道接収を命じました。1948年5月14日には、イスラエル国家樹立宣言(The Declaration of the Establishment of the State of Israel)が発せられました。1948年5月26日には、南アフリカ連邦総選挙でヘレニフデ・ナシオナーレ党(Herenigde Nasionale Party)とアフリカーナー党(Afrikaner Party)の連合が政権を獲得し、同国の人種隔離政策はさらに制度化へ向かいました。
この月の確認されている録音:0曲
1948年5月の録音に関する情報のまとめ
1948年5月のレコード業界では、録音制限の影響が続くなかで、各社が原盤確保、価格政策、権利資産の獲得、関連事業の拡張を進めていました。月末には、コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)が長時間再生盤の導入を準備していることが業界紙で報じられ、記録媒体そのものの転換が目前に迫っていることが示されました。同じ月には、アールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division, Radio Corporation of America)による声楽盤録音、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)によるマジェスティック・レコード(Majestic Records)資産取得交渉、エムジーエム・レコード(M-G-M Records)の原盤確保と価格改定方針、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)の音楽出版事業強化、サヴォイ・レコード(Savoy Records)による偽造盤警告が確認できます。
コロムビア・レコード
1948年5月末、コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)が、33 1/3回転・マイクログルーヴ方式の長時間再生盤を近く発表する見通しであると報じられました。報道では、10インチ盤と12インチ盤の新方式が従来の78回転盤を大きく上回る再生時間を備えるとされ、同社が家庭用レコード媒体の規格転換を準備していたことが明らかになりました。正式発表は翌6月に行われるため、1948年5月時点では公表直前の予告報道として位置づけられます。
アールシーエー・ヴィクター
1948年5月、アールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division, Radio Corporation of America)は、録音制限下でも声楽盤の制作を進めていました。5月中旬には、デニス・デイ(Dennis Day, 1916–1988)の新録音が行われたと報じられ、器楽録音が難しい状況のなかで、声楽作品を中心に新しい原盤を確保しようとする動きが確認できます。業界全体で新録音の制約が強まるなか、同部門は発売計画を維持するための対応を続けていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1948/Billboard%201948-05-15.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/ARCHIVE-RCA/RCA-Victor-Record-Review/RCA-Victor-Record-Review-1948-05.pdf
デッカ・レコード
1948年5月末、デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)は、マジェスティック・レコード(Majestic Records)の原盤、レーベル権、契約アーティスト関連資産の取得をめぐって交渉していると報じられました。買収成立を示す同月資料は確認できませんが、同社が既存音源と契約資産の拡充を検討していたことは明確です。新規録音が制限される時期において、既存原盤やカタログ資産の確保は、レコード会社の供給力を左右する重要な経営課題となっていました。
エムジーエム・レコード
1948年5月、エムジーエム・レコード(M-G-M Records)は、録音禁止前に制作されたとされる「Toolie Oolie Doolie」の原盤を取得したと報じられました。さらに同月後半には、同社が1948年6月1日からレコード価格を75セント水準へ引き上げる予定であることが伝えられました。これらの動きから、同社が人気素材の確保と採算改善を同時に進めていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1948/Billboard%201948-05-08a.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/40s/1948/Billboard%201948-05-22.pdf
キャピトル・レコード
1948年5月末、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)は、音楽出版事業を強化する方針を進めていると報じられました。レコード制作と販売に加えて、楽曲の出版権管理を重視する動きは、ヒット曲の開発から販売までをより広く押さえようとする企業戦略の一環でした。1948年5月の時点で、同社はレコード会社としての活動にとどまらず、音楽ビジネス全体への関与を拡大しつつありました。
サヴォイ・レコード
1948年5月、サヴォイ・レコード(Savoy Records)は、同社盤の偽造品に注意を促す警告広告を業界紙に掲載しました。広告は、流通業者、販売店、ジュークボックス運営者に対して偽造盤への警戒を呼びかける内容であり、同社のヒット盤が不正複製の対象となっていたことを示しています。レコード需要の高まりと供給制約が重なるなか、偽造盤対策は独立系レーベルにとっても重要な経営課題となっていました。
