1949年3月に録音された音楽

この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク

1949年3月に録音された音楽

1949年3月は、戦後世界の再編と新しい技術・文化の定着が同時に進んだ月です。3月1日、インドネシア独立戦争(Indonesian National Revolution)の過程で、1949年3月1日総攻撃(Serangan Umum 1 Maret 1949)が実施されました。3月2日には、アメリカ合衆国空軍(United States Air Force)のB-50A爆撃機ラッキー・レディII(Lucky Lady II)が、空中給油を伴う世界初の無着陸世界一周飛行を完了しました。3月4日、国際連合安全保障理事会(United Nations Security Council)は、国際連合安全保障理事会決議第69号(United Nations Security Council Resolution 69)を採択し、イスラエル国(State of Israel)の国際連合加盟を国際連合総会(United Nations General Assembly)へ勧告しました。3月11日、アルゼンチン共和国では1949年憲法改正が成立しました。3月24日の第21回アカデミー賞(The 21st Academy Awards)では、『ハムレット』(Hamlet)が作品賞を受賞しました。3月31日、ニューファンドランド(Newfoundland)はカナダ(Canada)へ編入され、第10州となりました。同じ3月31日には、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)が45回転盤の一般発売を開始し、録音メディアをめぐる競争も新段階へ入りました。

この月の確認されている録音:0曲

1949年3月の録音に関する情報のまとめ

1949年3月の録音産業では、微細溝盤をめぐる方式競争が、構想段階から具体的な販売戦へ移りました。ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)は45回転盤の全国発売を目前にし、コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)は33 1/3回転長時間盤の販売促進を強化しました。キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)、マーキュリー・レコード社(Mercury Record Corporation)、テンポ・レコード社(Tempo Record Co. of America)、ディスカヴァリー・レコード社(Discovery Records, Inc.)、チェトラ=ソリア社(Cetra-Soria)も、それぞれ新方式への対応を明確にしました。販売現場では、アール・エイチ・メイシー社(R. H. Macy & Co., Inc.)が長時間盤と45回転盤を並べて実演し、新規格の競争は消費者へ直接訴える段階に入りました。

アールシーエー・ヴィクター

ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)は、1949年3月31日に45回転盤の一般発売を開始しました。『ザ・ビルボード』(The Billboard)1949年3月12日号は、発売時点で各分野を合わせて約200曲の単曲盤を用意する計画を報じています。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月30日号は、一般向け発売が翌3月31日から始まること、価格がポピュラー盤65セント、レッド・シール盤95セントと設定されたことを伝えました。45回転盤は専用プレーヤーと結びつけて市場へ投入され、同社は新しい再生規格をレコードと機器の両面から普及させようとしました。

コロムビア・レコード社

コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)は、33 1/3回転長時間盤の販売拡大を強く押し進めました。『ザ・ビルボード』(The Billboard)1949年3月19日号は、同社が1949年3月1日から3か月間、販売店に対して長時間盤購入分の追加5%返品特典を認めたと報じています。これは、小売店により厚い長時間盤在庫を持たせるための施策でした。さらに『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月23日号は、同社が3月28日から長時間盤の大規模な販売促進キャンペーンを開始すると伝えています。これは、アールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)の45回転盤一般発売直前に展開された対抗策でした。

キャピトル・レコード社

キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)は、45回転盤市場への参入準備を進めていました。『ザ・ビルボード』(The Billboard)1949年3月19日号は、同社が4月4日の発売開始に向けて18種類の45回転盤アルバムを準備し、その内訳を児童向け8作、ポピュラー音楽4作、ウェスタン音楽1作、クラシック音楽5作と報じています。あわせて、ポピュラー音楽の単曲盤7点と、テレフンケン(Telefunken)由来の単曲盤4点も予定されていました。同号は、キャピトル・レコード社名義の45回転盤対応アタッチメントを、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)が製造する計画も伝えています。3月時点で同社は、45回転盤陣営に明確に加わっていました。

マーキュリー・レコード社

マーキュリー・レコード社(Mercury Record Corporation)は、33 1/3回転長時間盤を重視する方針を明確にしました。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月16日号は、同社がクラシック音楽部門と一部の高価格商品を、長時間微細溝ビニライト盤で販売する方向へ切り替え、通常の高価格シェラック盤を原則として縮小すると報じています。一方で、既存78回転盤利用者への対応として、従来盤の供給は一定範囲で継続されました。1949年3月のマーキュリー・レコード社は、長時間盤を補助商品ではなく、主力媒体の一つとして位置づけていました。

テンポ・レコード社

テンポ・レコード社(Tempo Record Co. of America)は、78回転盤、33 1/3回転長時間盤、45回転盤の3方式を並行展開する方針を示しました。『ザ・ビルボード』(The Billboard)1949年3月5日号は、同社が4月1日から45回転盤市場へ参入し、最初の3方式同時展開をイタリア輸入クラシック目録で実施すると報じています。ポピュラー音楽分野については、45回転盤市場の拡大に応じて段階的に移行する方針が示されました。同号では、同社が4月初旬から生産盤をプラスチック製へ切り替え、破損しにくさと再生耐久性を訴求する計画も報じられています。テンポ・レコード社は、新速度規格と新素材の双方で市場対応を進めていました。

デッカ・レコード社

デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)は、1949年3月時点では新速度規格への全面移行を決めていませんでした。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月16日号は、同社が33 1/3回転長時間盤と45回転盤のどちらへ進むかについて結論を出しておらず、当面は78回転盤事業を中心に据える姿勢を示したと報じています。長時間盤と45回転盤をめぐる業界競争が急速に進むなかで、デッカ・レコード社は即時の陣営選択を避け、既存市場の維持を優先していました。

ディスカヴァリー・レコード社

ディスカヴァリー・レコード社(Discovery Records, Inc.)は、カナダ市場での流通体制を整えました。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月23日号は、同社がメイプル・リーフ・レコード社(Maple Leaf Records, Ltd.)と配給契約を結び、78回転盤と33 1/3回転微細溝長時間盤をカナダで扱わせる方針を報じています。ディスカヴァリー・レコード社は原盤用スタンパーを供給し、メイプル・リーフ・レコード社がモントリオール(Montreal)でプレスを行う体制とされました。これは、新規格盤の普及がアメリカ合衆国国内だけでなく、近隣市場へも広がり始めていたことを示します。

チェトラ=ソリア社

チェトラ=ソリア社(Cetra-Soria)は、長時間盤陣営へ加わる動きを見せました。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月30日号は、同社がコロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)側の33 1/3回転長時間盤陣営に加わったと報じています。同記事では、マーキュリー・レコード社(Mercury Record Corporation)、ディスカヴァリー・レコード社(Discovery Records, Inc.)、アレグロ・レコード社(Allegro Records)、コンサート・ホール・ソサエティ(Concert Hall Society)、メイフェア・レコード社(Mayfair Records)と並び、チェトラ=ソリア社の名が挙げられました。1949年3月末の時点で、長時間盤支持は大手だけでなく、クラシック音楽系の独立レーベルにも広がっていました。

アール・エイチ・メイシー社

アール・エイチ・メイシー社(R. H. Macy & Co., Inc.)は、1949年3月、ニューヨーク(New York)の店舗で新旧規格競争を消費者に直接示す販売活動を行いました。『ヴァラエティ』(Variety)1949年3月23日号は、同社がコロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)の微細溝長時間盤と、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)の45回転盤を並べて実演する売場を設置したと報じています。3月20日付の新聞広告では、この販売企画が「レコード速度の戦い」として打ち出されました。主要小売業者が両方式を比較展示したことは、規格競争がメーカー間の開発競争から、店頭での購買競争へ進んだことを示しています。