1950年11月に録音された音楽
1950年11月は、冷戦下の国際秩序が大きく揺れ動く一方、人権保障、選挙、災害、文化の各分野でも重要な出来事が重なった月でした。11月1日、米国ではハリー・S・トルーマン(Harry S. Truman, 1884–1972)大統領に対するブレア・ハウス(Blair House)での暗殺未遂事件が発生しました。11月3日、国際連合総会(United Nations General Assembly)は国際連合総会決議第377号A(V)「平和のための結集」(United Nations General Assembly Resolution 377 A (V), “Uniting for Peace”)を採択しました。11月4日には、人権及び基本的自由の保護のための条約(Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms)がローマで署名されました。11月10日–12日のグアテマラ大統領選挙では、ハコボ・アルベンス・グスマン(Jacobo Árbenz Guzmán, 1913–1971)が得票率60%超で当選しました。11月15日には、ジョン・フォード(John Ford, 1894–1973)監督の映画『リオ・グランデ(Rio Grande)』が米国で公開されました。11月24日–25日には、米国東部をグレート・アパラチアン・ストーム(Great Appalachian Storm of 1950)が襲いました。朝鮮戦争(Korean War)では、11月27日に長津湖周辺で中国人民志願軍(Chinese People’s Volunteers)による大規模攻勢が始まり、戦局は新たな局面に入りました。
この月の確認されている録音:0曲
1950年11月の録音に関する情報のまとめ
1950年11月の録音産業では、長時間盤と45回転盤をめぐる製造・販売体制の再編が進む一方、旧録音資産の再商品化、著名演奏家の組み合わせを活用した録音企画、価格維持をめぐる訴訟対応、自動演奏機の複数回転数対応などが同時に確認できます。コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)は新しい成形技術の導入準備と流通価格をめぐる法的対応を進め、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)は既存録音を活用した大型アルバム企画を展開しました。デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)は人気歌手と著名バンドリーダーの共演録音を準備し、マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)は長時間盤販売の促進策を打ち出しました。自動演奏機分野では、ルドルフ・ワーリッツァー社(The Rudolph Wurlitzer Company)が78回転盤・45回転盤・33 1/3回転盤への対応を前面に押し出していました。
コロムビア・レコード社
コロムビア・レコード社(Columbia Records, Inc.)について、『ザ・ビルボード(The Billboard)』1950年11月4日号は、新しい射出成形用金型の導入準備を進めていると報じました。盤種の多様化が進むなかで、同社が製造工程の更新に着手していたことが確認できます。さらに、同誌1950年11月18日号は、価格切下げをめぐる同社の訴訟がニューヨーク州最高裁判所で審理されたと報じており、同月のコロムビア・レコード社は、生産技術と流通価格の両面で事業環境への対応を進めていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1950/Billboard%201950-11-04.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1950/Billboard%201950-11-18.pdf
アールシーエー・ヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター部門(RCA Victor Division)について、『ザ・ビルボード(The Billboard)』1950年11月25日号は、『トレジャリー・オブ・イモータル・パフォーマンシズ(Treasury of Immortal Performances)』と題するアルバム・シリーズの展開を報じました。これは、過去の重要録音を新たな商品企画として再構成する動きであり、同部門が既存カタログの価値を再提示する販売戦略を進めていたことを示しています。
デッカ・レコード社
デッカ・レコード社(Decca Records, Inc.)について、『ザ・ビルボード(The Billboard)』1950年11月4日号は、トミー・ドーシー(Tommy Dorsey, 1905–1956)の同社移籍を受けた新たな録音展開に触れています。続く同誌1950年11月25日号では、ビング・クロスビー(Bing Crosby, 1903–1977)とトミー・ドーシーの共演録音が予定されていると報じられました。デッカ・レコード社は、既存の人気歌手と著名バンドリーダーを組み合わせた録音企画を通じて、ポピュラー分野の訴求力を高めようとしていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1950/Billboard%201950-11-04.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1950/Billboard%201950-11-25a.pdf
マーキュリー・レコード・コーポレーション
マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)について、『ザ・ビルボード(The Billboard)』1950年11月18日号は、長時間盤を対象とするボーナス販売計画を設定したと報じました。一定額以上の発注に対して無償商品を付与する仕組みで、同社が長時間盤の販売拡大を図るため、小売・流通段階への働きかけを強めていたことが確認できます。
ルドルフ・ワーリッツァー社
ルドルフ・ワーリッツァー社(The Rudolph Wurlitzer Company)は、『ザ・キャッシュ・ボックス(The Cash Box)』1950年11月25日号の広告で、同社製自動演奏機を78回転盤・45回転盤・33 1/3回転盤に対応できるよう、迅速かつ低コストで改装可能であると訴求しました。レコード規格の多様化が進むなかで、自動演奏機メーカーも複数速度対応を販売上の重要な要素として押し出していたことが分かります。
ロンドン・レコード
ロンドン・レコード(London Records)について、『ザ・ビルボード(The Billboard)』1950年11月4日号は、長時間盤市場の拡大を扱う記事のなかで、同社がクラシック系長時間盤向けの原盤蓄積を進めていると記しました。1950年11月時点で、同社が長時間盤を軸とするクラシック分野のカタログ形成を重視していたことが確認できます。
クオリティ・レコーズ・リミテッド
クオリティ・レコーズ・リミテッド(Quality Records Limited)について、『ザ・キャッシュ・ボックス(The Cash Box)』1950年11月25日号は、ドン・マッキム(Don McKim, 生没年不明)がゼネラル・マネージャーに就任したと報じました。同記事では、同社がカナダでクオリティ・レコーズ(Quality Records)とエムジーエム・レコード(M-G-M Records)の製造・流通に関与していたことにも触れており、カナダ市場におけるレコード供給体制の整備が進んでいたことが確認できます。
