1954年6月に録音された音楽
1954年6月は、冷戦下の政治危機、核技術、放送・大衆文化が重なった月です。アメリカ合衆国上院(United States Senate)の公聴会では、6月9日にジョセフ・ナイ・ウェルチ(Joseph Nye Welch, 1890–1960)がジョセフ・レイモンド・マッカーシー(Joseph Raymond McCarthy, 1908–1957)を批判し、反共政治の空気に転機を示しました。ジュネーヴ会議(Geneva Conference)ではインドシナ和平交渉が続き、ラオス王国(Kingdom of Laos)とカンボジア王国(Kingdom of Cambodia)の扱いも焦点になりました。中央アメリカでは、6月18日にグアテマラ共和国(Republic of Guatemala)への侵攻が始まり、6月27日にハコボ・アルベンス・グスマン(Jacobo Árbenz Guzmán, 1913–1971)が辞任しました。アメリカ合衆国連邦民間防衛局(Federal Civil Defense Administration)は民間防衛演習オペレーション・アラート(Operation Alert)を実施し、核戦争を想定した社会動員が可視化されました。科学技術では、6月26日にソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist Republics)のオブニンスク原子力発電所(Obninsk Nuclear Power Plant)が送電網へ接続されました。6月29日にはアメリカ合衆国原子力委員会(United States Atomic Energy Commission)がジュリアス・ロバート・オッペンハイマー(Julius Robert Oppenheimer, 1904–1967)の機密取り扱い許可を回復しないと決定しました。文化・スポーツでは、6月16日に国際サッカー連盟ワールドカップ・スイス1954(1954 FIFA World Cup Switzerland™)が開幕しました。
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1954年6月の録音に関する情報のまとめ
1954年6月の録音関連情報では、業界紙『ザ・ビルボード(The Billboard)』を中心に、45回転盤の定着、長時間盤と拡張再生盤の販売強化、児童向けレコードの再編、低価格盤の再投入、リズム・アンド・ブルース録音のポピュラー市場への波及、ジャズ長時間盤の体系化が同時に進んでいました。大手会社では、アールシーエー・ヴィクター・レコード(RCA Victor Records)が45回転盤と低価格盤を軸にした販売政策を整え、マーキュリー・レコード(Mercury Records)はエマーシー・レコード(EmArcy Records)を通じてジャズ長時間盤を拡充し、デッカ・レコード(Decca Records)、キャピトル・レコード(Capitol Records)、コロムビア・レコード(Columbia Records)は映画、舞台、テレビ番組、シングル市場を結びつけた販促を展開しました。リズム・アンド・ブルース分野では、アトランティック・レコード(Atlantic Records)、キャット・レコード(Cat Records)、フェデラル・レコード(Federal Records)、ヴィージェイ・レコード(Vee-Jay Records)、チェス・レコード(Chess Records)などの盤がチャートや地域別売上で存在感を示し、1954年夏のポピュラー音楽市場を大きく動かしていました。同月にはレコード製造各社とアメリカテレビ・ラジオ芸術家連盟(American Federation of Television and Radio Artists)の契約交渉も始まり、録音に関わる非音楽系出演者の労務条件も業界上の論点になっていました。
アールシーエー・ヴィクター・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、アールシーエー・ヴィクター・レコード(RCA Victor Records)が6月3日にアトランティック・シティ(Atlantic City)で春季会議を開き、年内計画を協議したと報じました。同会議では、ブルーバード・クラシックス(Bluebird Classics)、ジャズ企画、児童向けレコード、ポピュラー・シングル、秋季販売促進が議題とされ、レーベルX(Label “X”)とカムデン長時間盤(Camden LP’s)も検討対象に含まれました。同号は、同社がアルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini, 1867–1957)とナショナル・ブロードキャスティング・カンパニー交響楽団(National Broadcasting Company Symphony Orchestra)によるジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi, 1813–1901)作曲の歌劇『仮面舞踏会(Un ballo in maschera)』の一部再録音を行い、秋発売予定のアルバムに関連する動きとして扱っていたことも伝えています。マニー・サックス(Manie Sacks, 生没年不明)は、ディスクジョッキー向け標準盤が45回転盤へ移ることを、ポピュラー・シングル分野における78回転盤衰退の兆候と見ていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
デッカ・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、デッカ・レコード(Decca Records)がジョーンズ・ビーチ(Jones Beach)の舞台『アラビアン・ナイツ(Arabian Nights)』オリジナル・キャスト・アルバムを6月14日に発売予定とし、同作の楽曲をガイ・ロンバード(Guy Lombardo, 1902–1977)録音のシングルとして展開していたと報じました。同号はさらに、同社が6月–7月にかけて主要アーティストのレコードを毎週少なくとも1点発売する計画を立てていたと伝え、ビング・クロスビー(Bing Crosby, 1903–1977)とゲイリー・クロスビー(Gary Crosby, 1933–1995)、ガイ・ロンバード(Guy Lombardo, 1902–1977)、ペギー・リー(Peggy Lee, 1920–2002)らの新譜が当月販促の対象になっていました。6月5日付の同誌チャートでは、キティ・カレン(Kitty Kallen, 1921–2016)のデッカ・レコード(Decca Records)盤『リトル・シングス・ミーン・ア・ロット(Little Things Mean a Lot)』がポピュラー市場で強い位置にあり、同社の女性歌手シングルが当月の主力商品になっていました。
- https://books.google.com/books?id=5h4EAAAAMBAJ
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
キャピトル・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、キャピトル・レコード(Capitol Records)のスタン・フリーバーグ(Stan Freberg, 1926–2015)作品について、同社が通常は風刺対象者の承諾を得てから発売していたものの、アメリカ合衆国上院陸軍・マッカーシー公聴会(United States Senate Army–McCarthy Hearings)を題材にした『ポイント・オブ・オーダー(Point of Order)』では例外的に発売へ進めたと報じました。同号には、レイ・アンソニー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ray Anthony and His Orchestra)の『トップ・チューンズ(Top Tunes)』アルバムを月末に発売予定とする記事もあり、同社はテレビ番組連動の販促を進めていました。同号の人気アルバム表では、ジャッキー・グリーソン(Jackie Gleason, 1916–1987)とフランク・シナトラ(Frank Sinatra, 1915–1998)のキャピトル・レコード(Capitol Records)盤が上位に入り、ポピュラー・アルバム市場でも同社の存在感が大きくなっていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
コロムビア・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』の新譜レビューでは、コロムビア・レコード(Columbia Records)から、レス・エルガート(Les Elgart, 1917–1995)の『ジャスト・ワン・モア・ダンス(Just One More Dance)』、ピート・ルゴロ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Pete Rugolo and His Orchestra)の『イントロデューシング・ピート・ルゴロ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Introducing Pete Rugolo and His Ork)』、ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy, 1899–1985)指揮フィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)によるリヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864–1949)の歌劇『ばらの騎士(Der Rosenkavalier)』ワルツ盤が扱われました。同号の業界欄では、コロムビア・レコード(Columbia Records)がペギー・キング(Peggy King, 1930–2016)とヴァル・ヴァレンテ(Val Valente, 生没年不明)を契約したことも報じられています。6月26日付の同誌では、同社が『パジャマ・ゲーム(The Pajama Game)』関連の宣伝を展開し、ブロードウェイ・ミュージカルの録音商品化を当月の販売上の重要要素として扱っていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://books.google.com/books?id=oB4EAAAAMBAJ
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-26.pdf
コーラル・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、コーラル・レコード(Coral Records)がビリー・ウィリアムズ・カルテット(Billy Williams Quartet)を契約し、同月に同レーベルで最初の録音を行う予定だったと報じました。同号は、同社が夏季の販促計画として、テレサ・ブリュワー(Teresa Brewer, 1931–2007)の新譜用拡張再生盤カウンター・ディスプレイ、ギャビー・ヘイズ(Gabby Hayes, 1885–1969)の児童向け『トール・テイルズ(Tall Tales)』第3巻の包装企画を進めていたことも伝えています。コーラル・レコード(Coral Records)は、ポピュラー歌手、ヴォーカル・グループ、児童向け商品を同時に扱い、夏季販売へ向けた店頭販促を強めていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
エムジーエム・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、エムジーエム・レコード(M-G-M Records)が6月を「ジョニ・ジェイムス月間」と位置づけ、ジョニ・ジェイムス(Joni James, 1930–2022)の新譜『ガーデン・オブ・ローゼズ(Garden of Roses)』と『エヴリー・デイ(Every Day)』を重点販促していたと報じました。同号の小売向け記事では、同社が『イン・ア・ガーデン・オブ・ローゼズ(In a Garden of Roses)』を販売店で押し出すため、ポップアップ効果のあるレコード・プレイヤー型カウンターカードを用意していました。同号のリズム・アンド・ブルース欄では、同社がリズム・アンド・ブルース盤への注力を強める見通しも示され、エムジーエム・レコード(M-G-M Records)はポピュラー歌手の店頭販促とリズム・アンド・ブルース市場への接近を並行して進めていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
マーキュリー・レコード
1954年6月の『ザ・ビルボード(The Billboard)』では、マーキュリー・レコード(Mercury Records)がポピュラー、リズム・アンド・ブルース、カバー盤市場の接点に位置していました。6月12日付の同誌は、ザ・クルー・カッツ(The Crew-Cuts)がキャット・レコード(Cat Records)のザ・コーズ(The Chords)による『シュ・ブーン(Sh-Boom)』をマーキュリー・レコード(Mercury Records)で録音したことを報じました。これは、リズム・アンド・ブルース系のヒット候補曲を白人ポピュラー・グループが大手レーベルでカバーし、ポピュラー市場へ拡張していく1954年の代表的な動きです。同月の同誌ではパティ・ペイジ(Patti Page, 1927–2013)関連のマーキュリー・レコード(Mercury Records)盤も目立ち、同社は既存ポピュラー歌手と新興カバー市場の両方で展開していました。
- https://books.google.com/books?id=5h4EAAAAMBAJ
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
キャット・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』のリズム・アンド・ブルース欄では、キャット・レコード(Cat Records)のザ・コーズ(The Chords)による『シュ・ブーン(Sh-Boom)』が複数都市で売上反応を得ていました。同曲は、リズム・アンド・ブルース系の小規模レーベルから出た録音がポピュラー市場に波及する過程を示す重要な例です。同誌は、同曲を受けてザ・クルー・カッツ(The Crew-Cuts)がマーキュリー・レコード(Mercury Records)でカバー録音したことも伝えており、1954年6月時点でキャット・レコード(Cat Records)の録音が大手レーベルの発売戦略に影響を与えていました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
アトランティック・レコード
1954年6月の『ザ・ビルボード(The Billboard)』のリズム・アンド・ブルース・チャートでは、アトランティック・レコード(Atlantic Records)のビッグ・ジョー・ターナー(Big Joe Turner, 1911–1985)による『シェイク・ラトル・アンド・ロール(Shake, Rattle and Roll)』が強い市場反応を示していました。同作はリズム・アンド・ブルース市場の中心的な盤として扱われ、アトランティック・レコード(Atlantic Records)の全国的な存在感を高めました。1954年6月の同社は、リズム・アンド・ブルース録音がポピュラー市場へ波及していく局面に位置していました。
- https://books.google.com/books?id=5h4EAAAAMBAJ
- https://books.google.com/books?id=4h4EAAAAMBAJ
- https://books.google.com/books?id=oB4EAAAAMBAJ
サヴォイ・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、サヴォイ・レコード(Savoy Records)が当時の所属アーティスト陣に新しい名前を加えていたことを伝えています。同記事で扱われた範囲では、ザ・ドリームズ(The Dreams)などのヴォーカル・グループが対象に含まれ、リズム・アンド・ブルース、ブルース、ゴスペル系の録音をめぐる同社の補強が進んでいました。サヴォイ・レコード(Savoy Records)は大手ポピュラー・レーベルとは異なり、1954年6月時点でもリズム・アンド・ブルース系の人材発掘と録音供給を軸に活動していました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
- https://www.vocalgroupharmony.com/7ROWNEW/SavoyRecordsPartFive.htm
ロンドン・レコード
1954年6月12日付の『ザ・ビルボード(The Billboard)』は、ロンドン・レコード(London Records)が定価5.95ドルのポピュラー・アルバムを集中的に販促する準備を進めていたと報じました。同社は、フランク・チャックスフィールド(Frank Chacksfield, 1914–1995)の『イヴニング・イン・パリ(Evening in Paris)』を市場投入し、マントヴァーニ(Mantovani, 1905–1980)関連の12インチ盤や、テッド・ヒース(Ted Heath, 1902–1969)の『100th Palladium Concert』も予定していました。同号のクラシック新譜レビューでは、クレメンス・クラウス(Clemens Krauss, 1893–1954)指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Vienna Philharmonic Orchestra)の『ニュー・イヤー・コンサート1954(New Year Concert—1954)』、ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips, 1902–1974)指揮ロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)盤、キャスリーン・フェリア(Kathleen Ferrier, 1912–1953)参加のクリストフ・ヴィリバルト・グルック(Christoph Willibald Gluck, 1714–1787)作曲『オルフェオとエウリディーチェ(Orfeo ed Euridice)』抜粋盤も扱われました。
- https://books.google.com/books?id=Ux8EAAAAMBAJ
- https://archive.org/stream/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ/bub_gb_Ux8EAAAAMBAJ_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-06-12.pdf
サン・レコード
1954年6月のサン・レコード(Sun Records)関連では、サム・フィリップス(Sam Phillips, 1923–2003)がエルヴィス・アーロン・プレスリー(Elvis Aaron Presley, 1935–1977)をスタジオに呼び、楽曲『ウィズアウト・ユー(Without You)』を試させた出来事が記録されています。日付は資料によって6月6日と6月26日に分かれますが、1954年6月の出来事として扱われています。この試唱は発売録音ではありませんでしたが、同年7月5日のサン・レコード(Sun Records)における『ザッツ・オール・ライト(That’s All Right)』録音へつながる前段階に位置する録音関連活動でした。
- https://www.graceland.com/1954-1957
- https://www.elvisthemusic.com/elvis-presley-boy-tupelo-complete-1953-1955-recordings-coming-july-28/
- https://www.elvisrecordings.com/s540626.htm
