1954年9月に録音された音楽
1954年9月は、冷戦下の軍事・外交と、科学技術・文化の動きが重なった月でした。9月3日には中華人民共和国(People’s Republic of China)による金門(Kinmen/Quemoy)砲撃を契機に第一次台湾海峡危機(First Taiwan Strait Crisis)が始まり、9月8日にはマニラ(Manila)で東南アジア集団防衛条約(Southeast Asia Collective Defense Treaty)が署名されました。9月11日にはハリケーン・エドナ(Hurricane Edna)がアメリカ合衆国(United States of America)北東部とカナダ(Canada)大西洋岸に被害を与えました。9月28日には九か国会議(Conference of Nine Powers)がロンドン(London)で始まり、ドイツ連邦共和国(Federal Republic of Germany)の西側安全保障体制への参加が協議されました。9月29日には欧州原子核研究機構(European Organization for Nuclear Research)が正式に発足し、同日には映画『スタア誕生』(A Star Is Born)がロサンゼルス(Los Angeles)で初公開されました。9月30日にはアメリカ合衆国海軍(United States Navy)の原子力潜水艦ノーチラス(USS Nautilus, SSN-571)が就役し、原子力推進艦の時代が始まりました。
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1954年9月の録音に関する情報のまとめ
1954年9月の録音産業では、78回転盤から45回転盤・長時間盤への移行が進む一方で、児童向けレコード、廉価長時間盤、バックグラウンド音楽用レコード、ジュークボックス用レコードの展開が並行していました。『ビルボード』(Billboard)1954年9月11日号は、主要レーベルが秋季商戦に向けて児童向け商品を強化していたことを報じ、同月25日号にはジャズ、ポピュラー、リズム・アンド・ブルース、地方レーベルの広告・レビューが並びました。サン・レコード(Sun Records)では、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)の初期サン録音が1954年9月に進められ、ロックンロール成立期の重要な動きとして位置づけられます。
アールシーエー・ビクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)傘下のアールシーエー・ビクター(RCA Victor)は、1954年9月時点で78回転盤から45回転盤・長時間盤へ移る市場変化を強く意識していました。『ビルボード』(Billboard)1954年9月11日号では、同社の廉価長時間盤カムデン・レコード(Camden Records)が9月20日から表示価格を1.89ドルから1.98ドルへ変更する予定であることが報じられています。同号では、アールシーエー・ビクター(RCA Victor)の盤面保護仕様グルーヴ・ガード(Gruve-Gard)も取り上げられ、レコードの物理的耐久性と流通上の扱いやすさが販売戦略の一部になっていました。
ジェイ・ピー・シーバーグ
ジェイ・ピー・シーバーグ社(J. P. Seeburg Corporation)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、硬貨を使わない200選択式フォノグラフを使ったバックグラウンド音楽事業への参入計画を報じられました。この計画では、同社の指示で制作される賃貸用45回転盤を用い、盤のプレスはアールシーエー・ビクター(RCA Victor)が担当するとされました。収録楽曲はブロードキャスト・ミュージック・インコーポレイテッド(Broadcast Music, Inc.)管理曲または公有楽曲に限る構想で、アメリカ作曲家作詞家出版者協会(American Society of Composers, Authors and Publishers)系楽曲を使わない点が、同時代の権利処理と業務用音楽市場の関係を示していました。
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、秋季の児童向けレコード施策として「Introducing the Masterworks」「Introducing the Instruments of the Orchestra」「Introducing the Masters」の3系列を販売単位として打ち出していました。クラシック音楽の短縮紹介、管弦楽器の解説、作曲家の生涯紹介を組み合わせる構成で、78回転盤と45回転盤の双方で販売される予定でした。また、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong, 1901–1971)の『Louis Armstrong Plays W. C. Handy』は、1954年9月25日号の『ビルボード』(Billboard)広告で大きく扱われ、コロムビア・レコード(Columbia Records)のジャズ長時間盤展開を示す作品として市場に示されました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-09-11.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-09-25.pdf
- https://www.louisarmstronghouse.org/virtual-exhibits/theyre-my-tops-the-making-of-louis-armstrong-plays-w-c-handy/
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード(Mercury Records)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、児童向けのチャイルドクラフト(Childcraft)11点、プレイクラフト(Playcraft)6点を秋季ラインとして準備していたことが報じられました。内容には『アイーダ』(Aida)を題材にした「Opera for Children」、クリスマス歌曲、愛国的レコード、行進曲、物語録音などが含まれていました。児童向け市場でクラシック音楽、物語、季節商品を組み合わせる方針が見える動きです。
リトル・ゴールデン・レコード
リトル・ゴールデン・レコード(Little Golden Records)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、「A Child’s Introduction to the Orchestra」を10月に発売する計画を報じられました。7インチの割れにくい78回転盤または45回転盤8枚を箱入りにする商品で、同社が45回転盤を販売する初例とされています。価格は3.95ドルとされ、児童向けレコードが童謡商品にとどまらず、楽器・管弦楽教育の入門商品として整備されていたことを示します。
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード(Capitol Records)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、児童向けレコードにおいて音楽鑑賞シリーズを強化している主要レーベルとして報じられました。前年8月からの新シリーズでは、『くるみ割り人形』(The Nutcracker Suite)、『カルメン』(Carmen)、『四季』(The Seasons)などの音楽を背景にした物語形式のレコードが扱われ、別系列の「The Record Reader」では管弦楽器紹介や教育的レコードが組み込まれていました。児童向けレコードを家庭内教育と音楽鑑賞に結びつける動きとして位置づけられます。
デッカ・レコード
デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)は、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で、児童向け秋季ラインとして「A Child’s First Record」シリーズを10月発売予定と報じられました。対象は9か月から30か月の幼児層で、8枚組想定のシリーズ、12インチ盤2ドルという販売計画が示されています。同号には、デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)のカントリー・アンド・ウェスタン部門に関する録音・契約の動きも掲載され、児童向け商品と地域音楽部門の双方で秋季市場に向けた活動が見られました。
サン・レコード
サン・レコード(Sun Records)では、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)の初期商業録音が1954年9月に進められました。「Good Rockin’ Tonight」はサン・レコード(Sun Records)スタジオで1954年9月に録音されたとされ、9月中旬ごろの録音とする整理があります。サン・レコード(Sun Records)のSun 210として扱われる「Good Rockin’ Tonight」および「I Don’t Care If the Sun Don’t Shine」は、同社初期の地域的なロックンロール/ロカビリー形成を示す重要な盤です。発売日は資料によって9月25日説と10月4日説があります。
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/Sun-Records-sessions.pdf
- https://www.elvisthemusic.com/music/good-rockin-tonight/
- https://www.elvisthemusic.com/track/good-rockin-tonight-13/
エムジーエム・レコード
エムジーエム・レコード(M-G-M Records)は、1954年9月の新譜・レビュー欄でビリー・エクスタイン(Billy Eckstine, 1914–1993)のM-G-M K 11845を扱われました。同盤は「Mood Indigo」と「Do Nothin’ Till You Hear from Me」を収めたシングルとして整理され、1954年9月11日号の『ビルボード』(Billboard)で好意的なレビューを受けました。ジャズとポピュラー・ヴォーカルの境界に位置するビリー・エクスタイン(Billy Eckstine, 1914–1993)の録音は、1954年9月時点の大手レーベルによる成人向けポピュラー市場の一例です。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-09-11.pdf
- https://wardellgray.org/Wardell%20Gray%20Chronology%201954.html
ユナイテッド・レコード
ユナイテッド・レコード(United Records)は、1954年9月のリズム・アンド・ブルース系市場で複数の盤を広告・レビューに出していました。メンフィス・スリム・アンド・ヒズ・ハウス・ロッカーズ(Memphis Slim and His House Rockers)の「Four Years of Torment」を含むUnited 182は、『キャッシュ・ボックス』(Cash Box)1954年9月11日号の広告と『ビルボード』(Billboard)1954年9月25日号のレビューで扱われました。また、United 184も同月の広告で扱われ、同社がシカゴ(Chicago)のブルース/リズム・アンド・ブルース系カタログを継続的に市場投入していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1954/Billboard%201954-09-25.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1954/CB-1954-09-11.pdf
- https://campber.people.clemson.edu/unitedstates2.html
