1955年5月に録音された音楽
1955年5月は、冷戦期の国際秩序が大きく動いた月でした。5月5日にボン=パリ協定(Bonn–Paris Conventions)が発効し、ドイツ連邦共和国(Federal Republic of Germany)は占領体制を終えて主権を回復しました。翌5月6日には北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization)へ加盟し、5月14日にはソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist Republics)など東欧諸国がワルシャワ友好協力相互援助条約(Treaty of Friendship, Co-operation and Mutual Assistance)に署名しました。5月15日にはオーストリア国家条約(State Treaty for the Re-Establishment of an Independent and Democratic Austria)が署名され、オーストリア共和国(Republic of Austria)の主権回復が具体化しました。日本では5月11日、日本国有鉄道の宇高連絡船・紫雲丸と第三宇高丸が濃霧の高松港沖で衝突し、乗客乗員168人が死亡または行方不明となりました。文化面ではカンヌ国際映画祭(Festival de Cannes)で『マーティ(Marty)』がパルム・ドール(Palme d’or)を受賞しました。イギリスでは5月26日に1955年イギリス総選挙(1955 United Kingdom general election)が行われ、アンソニー・イーデン(Anthony Eden, 1897–1977)率いる保守統一党(Conservative and Unionist Party)が政権を維持しました。登山史では、5月15日にマカルーⅠ(Makalu I)、5月25日にカンチェンジュンガ主峰(Kangchenjunga Main)の初登頂が記録されました。
この月の確認されている録音:0曲
1955年5月の録音に関する情報のまとめ
1955年5月の録音関連では、独立系レーベルによるリズム・アンド・ブルース、ブルース、ゴスペル、ロックンロール系録音の動きが目立ちました。チェス・レコード(Chess Records)ではチャック・ベリー(Chuck Berry, 1926–2017)の初期録音が行われ、チェッカー・レコード(Checker Records)ではボ・ディドリー(Bo Diddley, 1928–2008)の録音が続きました。サン・レコード(Sun Records)ではジョニー・キャッシュ(Johnny Cash, 1932–2003)の初期シングルにつながる録音が1955年5月頃に位置づけられ、アトランティック・レコード(Atlantic Records)やユナイテッド・レコード(United Records)系でも月内の制作活動が見られます。一方、デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)、マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)では、1955年5月の新録音ではなく、既録音・既発売作品の市場展開が重要でした。
チェス・レコード
チェス・レコード(Chess Records)は、1955年5月21日、チャック・ベリー(Chuck Berry, 1926–2017)の「メイベリーン(Maybellene)」を録音しました。録音場所はシカゴのユニバーサル・レコーディング社(Universal Recording Corp.)とされ、同曲は同年7月にチェス・レコード(Chess Records)から発売されました。この録音は、ブルース、カントリー、リズム・アンド・ブルースの要素を結びつけた初期ロックンロール録音として重要です。
- https://www.crlf.de/ChuckBerry/cbdb/song/135-COMEBACKMAYBELLENE.html
- https://www.britannica.com/biography/Chuck-Berry
- https://www.britannica.com/topic/Chess-Records
チェッカー・レコード
チェッカー・レコード(Checker Records)は、チェス・レコード(Chess Records)の系列レーベルとして、1955年5月15日にボ・ディドリー(Bo Diddley, 1928–2008)の「ディドリー・ダディ(Diddley Daddy)」を録音しました。同曲はチェッカー 819(Checker 819)として1955年6月に発売されました。ボ・ディドリー(Bo Diddley, 1928–2008)のリズム様式を広げた初期録音の一つであり、同系列レーベルのロックンロール、リズム・アンド・ブルース分野での活動を示しています。
- https://albumlinernotes.com/Bo_Diddley_His_Best.html
- https://www.discogs.com/release/14316573-Bo-Diddley-His-Best
サン・レコード
サン・レコード(Sun Records)では、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash, 1932–2003)の初期録音「ヘイ・ポーター(Hey, Porter)」と「クライ・クライ・クライ(Cry! Cry! Cry!)」が1955年に発売されました。「クライ・クライ・クライ(Cry! Cry! Cry!)」の録音日は資料により細部が一定せず、1955年5月頃の録音とされます。サン・レコード(Sun Records)はこの時期、メンフィスを拠点に、カントリー、ブルース、ロックンロールの境界をまたぐ録音を送り出していました。
- https://sunrecords.com/artists/johnny-cash/
- https://sunrecords.com/releases/hey-porter-cry-cry-cry/
- https://johnny-cash-infocenter.com/songs/cry-cry-cry/
アトランティック・レコード
アトランティック・レコード(Atlantic Records)は、1955年5月に複数の録音セッションを行いました。セッション・インデックスでは、5月10日、5月11日、5月12日、5月24日、5月29日、5月30日の録音が整理されており、リズム・アンド・ブルース、ジャズ、ブルース系の録音制作が同月内に継続していました。同社の1955年5月の活動は、単一のヒット録音に限らず、複数ジャンルの制作を並行して進めた動きとして位置づけられます。
- https://www.jazzdisco.org/atlantic-records/discography-1955/session-index/
- https://www.jazzdisco.org/atlantic-records/discography-1955/
ユナイテッド・レコード
ユナイテッド・レコード(United Records)とステイツ・レコード(States Records)では、1955年5月にシカゴのリズム・アンド・ブルース、ブルース、ヴォーカル・グループ系録音の動きがありました。資料上、1955年5月12日にデニス・バインダー(Dennis Binder, 1920–没年不明)関連のセッションがあり、5月27日にはダンダーリアーズ(The Danderliers)とモロッコズ(The Moroccos)の録音が行われました。また、ユナイテッド 189(United 189)は1955年5月にキャッシュ・ボックス(The Cash Box)の広告で告知されています。
- https://campber.people.clemson.edu/unitedstates2.html
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1955/CB-1955-05-28.pdf
ヴィージェイ・レコード
ヴィージェイ・レコード(Vee-Jay Records)は、1955年5月にゴスペル系シングル群を発売・宣伝しました。専門資料では、ヴィージェイ 137(Vee-Jay 137)、ヴィージェイ 139(Vee-Jay 139)、ヴィージェイ 140(Vee-Jay 140)が1955年5月のゴスペル発売群として整理され、1955年5月21日付キャッシュ・ボックス(The Cash Box)で紹介と広告が掲載されました。各録音の録音日は、この資料からは確定できません。
- https://campber.people.clemson.edu/veejay.html
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1955/CB-1955-05-21.pdf
デッカ・レコード
デッカ・レコード・インコーポレイテッド(Decca Records, Inc.)では、ビル・ヘイリー・アンド・ヒズ・コメッツ(Bill Haley & His Comets)の「ロック・アラウンド・ザ・クロック(Rock Around the Clock)」が1955年5月に大きな市場的意味を持ちました。同曲の録音日は1954年4月12日であり、1955年5月の新録音ではありません。映画『暴力教室(Blackboard Jungle)』で使用されたことを契機に、同曲は1955年春から再発売・チャート上昇へ向かいました。
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/RockAroundTheClock.pdf
- https://filmtalk.org/2017/04/24/blackboard-jungle-how-glenn-fords-son-peter-launched-bill-haleys-rock-around-the-clock/
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1955/Billboard%201955-05-14.pdf
マーキュリー・レコード・コーポレーション
マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)では、プラターズ(The Platters)の「オンリー・ユー(Only You (And You Alone))」が1955年春から初夏にかけて市場化されました。同曲のマーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)版は1955年4月26日に録音されたとされ、発売時期は資料により1955年5月または6月とされます。1955年5月の新録音ではありませんが、同年のドゥーワップ、リズム・アンド・ブルース、ポップ市場の接点を示す録音でした。
- https://www.discogs.com/master/235135-The-Platters-Only-You-And-You-Alone-Bark-Battle-And-Ball
- https://www.uncamarvy.com/Platters/platters.html
- https://www.billboard.com/artist/the-platters/
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)では、フランク・シナトラ(Frank Sinatra, 1915–1998)のアルバム『イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ(In the Wee Small Hours)』が1955年4月25日に発売され、1955年5月には販売・批評・広告上の展開期にありました。同作は1955年5月の新録音ではなく、1954年3月1日および1955年2月8日–3月4日の録音セッションに基づく作品です。長時間盤アルバムを一貫した夜の気分で構成した作品として、1950年代中期のアルバム制作史に位置づけられます。
- https://www.sinatra.com/frank-sinatras-seminal-1955-capitol-album-in-the-wee-small-hours-to-be-reissued-in-blue-notes-tone-poet-vinyl-series-on-nov-14-marking-the-albums-70th-anniversary/
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1955/Billboard%201955-05-14.pdf
アールシーエー・ビクター
アールシーエー・ビクター(RCA Victor)は、1955年5月7日付ビルボード(Billboard)で、放送局向け録音ライブラリーであるアールシーエー・シソーラス(RCA Thesaurus)の新企画を告知しました。これは市販レコードの新譜録音ではなく、放送用トランスクリプション、番組素材、録音済み音源ライブラリーの供給事業に関する動きでした。1955年5月の同社活動には、市販レコードとは別系統の放送用録音事業も含まれていました。
- https://books.google.com/books?id=BRwEAAAAMBAJ&pg=PA27
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1955/Billboard%201955-05-07.pdf
