1956年4月に録音された音楽
1956年4月は、脱植民地化、冷戦の組織再編、映像技術、文化報道が交差した月でした。4月7日、スペイン(Spain)はモロッコ王国(Kingdom of Morocco)との共同宣言で、モロッコ北部のスペイン保護領統治の終了を認めました。チュニジア王国(Kingdom of Tunisia)では、独立直後の4月にハビーブ・ブルギーバ(Habib Bourguiba, 1903–2000)が首相として政府を率い始めました。4月14日、アンペックス社(Ampex Corporation)は全米ラジオ・テレビ放送事業者協会(National Association of Radio and Television Broadcasters)の会合で実用的なビデオテープ録画装置を公開しました。4月17日、共産党・労働者党情報局(Information Bureau of the Communist and Workers’ Parties)が解散しました。4月18日–27日にはニキータ・セルゲーエヴィチ・フルシチョフ(Nikita Sergeyevich Khrushchev, 1894–1971)とニコライ・アレクサンドロヴィチ・ブルガーニン(Nikolai Alexandrovich Bulganin, 1895–1975)がイギリス(United Kingdom)を訪問しました。4月18日–19日にはグレース・ケリー(Grace Kelly, 1929–1982)とモナコ公レーニエ3世(Rainier III, Prince of Monaco, 1923–2005)の結婚が国際的に報じられました。4月19日にはスペイン(Spain)南部でアタルフェ=アルボローテ地震(1956 Atarfe–Albolote earthquake)が発生しました。
この月の確認されている録音:0曲
1956年4月の録音に関する情報のまとめ
1956年4月の録音・レコード市場では、アールシーエー・ビクター(RCA Victor)とチェス・レコード(Chess Records)で当月録音の重要作品が生まれました。同時に、キャピトル・レコード(Capitol Records)は新しい録音施設を稼働させ、コロムビア・レコード(Columbia Records)はブロードウェイ・キャスト録音の長時間再生レコードを市場に送り出しました。デッカ・レコード(Decca Records)、サン・レコード(Sun Records)、スペシャルティ・レコード(Specialty Records)、マーキュリー・レコード(Mercury Records)、アトランティック・レコード(Atlantic Records)、インペリアル・レコード(Imperial Records)などの盤も、ロックンロール、リズム・アンド・ブルース、カントリー、ポピュラー音楽の市場拡大を示しました。
アールシーエー・ビクター
1956年4月14日、アールシーエー・ビクター(RCA Victor)はアメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルのアールシーエー・スタジオ(RCA Studios)で、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)の「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー(I Want You, I Need You, I Love You)」を録音しました。同作は「ハートブレイク・ホテル(Heartbreak Hotel)」に続くアールシーエー・ビクター(RCA Victor)期初期の重要録音で、5月4日にシングルとして発売されました。『ビルボード(Billboard)』1956年4月21日号では「ハートブレイク・ホテル(Heartbreak Hotel)」が100万枚規模の販売に達したことが報じられ、同月の同社はエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)を中心に急速な市場拡大を進めていました。
- https://www.elvisthemusic.com/track/i-want-you-i-need-you-i-love-you-11/
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-04-21.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-14.pdf
チェス・レコード
1956年4月16日または4月19日、チェス・レコード(Chess Records)はアメリカ合衆国イリノイ州シカゴの4750コテージ・グローヴ(4750 Cottage Grove)で、チャック・ベリー(Chuck Berry, 1926–2017)の「ロール・オーバー・ベートーヴェン(Roll Over Beethoven)」を録音しました。録音日については資料上の差異があり、4月16日または4月19日とされます。同曲にはジョニー・ジョンソン(Johnnie Johnson, 1924–2005)とウィリー・ディクソン(Willie Dixon, 1915–1992)も関わり、5月の発売後にチェス・レコード(Chess Records)のロックンロール展開を代表する作品になりました。
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/RollOverBeethoven.pdf
- https://www.loc.gov/programs/national-recording-preservation-board/recording-registry/descriptions-and-essays/
キャピトル・レコード
1956年4月、キャピトル・レコード(Capitol Records)はアメリカ合衆国カリフォルニア州ハリウッドでキャピトル・レコード・タワー(Capitol Records Tower)を稼働させました。4月22日には同タワー内のキャピトル・タワー・スタジオ(Capitol Tower Studios)で、フランク・シナトラ(Frank Sinatra, 1915–1998)がネルソン・リドル(Nelson Riddle, 1921–1985)の56人編成オーケストラを指揮し、『カラーの音詩(Tone Poems of Color)』の録音を行いました。同月のキャピトル・レコード(Capitol Records)では、レス・バクスター(Les Baxter, 1922–1996)の「ザ・プア・ピープル・オブ・パリ(The Poor People of Paris)」もチャート上位を維持していました。
- https://cityclerk.lacity.org/onlinedocs/2006/06-2381_rpt_plan_10-3-06.pdf
- https://www.laconservancy.org/learn/historic-places/capitol-records-tower/
- https://www.discoverlosangeles.com/visit/the-capitol-records-building-the-story-of-an-la-icon
コロムビア・レコード
1956年4月2日、コロムビア・レコード(Columbia Records)は『マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)』オリジナル・ブロードウェイ・キャスト録音の最初の長時間再生レコードを発売しました。この録音は1956年3月に行われ、4月にはブロードウェイ・キャスト録音として市場に出ました。ゴダード・リーバーソン(Goddard Lieberson, 1911–1977)がアルバム化権を確保したこの録音には、レックス・ハリソン(Rex Harrison, 1908–1990)、ジュリー・アンドリュース(Julie Andrews, 1935–)、スタンリー・ホロウェイ(Stanley Holloway, 1890–1982)らが参加しました。
- https://masterworksbroadway.com/music/my-fair-lady-original-broadway-cast-recording-1956/
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/MyFairLady.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-04-28.pdf
デッカ・レコード
1956年4月16日、デッカ・レコード(Decca Records)はバディ・ホリー(Buddy Holly, 1936–1959)の初シングル「ラヴ・ミー(Love Me)」/「ブルー・デイズ、ブラック・ナイツ(Blue Days, Black Nights)」を発売しました。この2曲は1月26日にアメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルのブラッドリー・スタジオ(Bradley Studios)で、オーウェン・ブラッドリー(Owen Bradley, 1915–1998)の制作により録音されました。『キャッシュ・ボックス(The Cash Box)』1956年4月14日号と4月21日号では、ウェッブ・ピアース(Webb Pierce, 1921–1991)、レッド・ソヴァイン(Red Sovine, 1917–1980)、キティ・ウェルズ(Kitty Wells, 1919–2012)らのデッカ・レコード(Decca Records)盤も掲載されていました。
- https://albumlinernotes.com/Buddy_Holly_Collection.html
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-14.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-21.pdf
サン・レコード
1956年4月のサン・レコード(Sun Records)では、カール・パーキンス(Carl Perkins, 1932–1998)の「ブルー・スエード・シューズ(Blue Suede Shoes)」が各種チャートで大きく扱われました。同作は1955年12月に録音され、1956年4月にはアールシーエー・ビクター(RCA Victor)の「ハートブレイク・ホテル(Heartbreak Hotel)」と並ぶロックンロールの代表的ヒットになっていました。カントリー、リズム・アンド・ブルース、ポピュラーの境界を横断した同作は、独立系レーベルの全国的成功を示しました。
- https://watch.countrymusichalloffame.org/videos/remembering-carl-perkins-blue-suede-shoes-at-sixty
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-14.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-04-21.pdf
スペシャルティ・レコード
1956年4月、スペシャルティ・レコード(Specialty Records)はリトル・リチャード(Little Richard, 1932–2020)の「ロング・トール・サリー(Long Tall Sally)」で、リズム・アンド・ブルースとポピュラーの双方の市場に広く関わりました。同作は1956年2月に録音され、4月には『キャッシュ・ボックス(The Cash Box)』のリズム・アンド・ブルース系の紙面で大きく扱われていました。スペシャルティ・レコード(Specialty Records)のリズム・アンド・ブルース録音は、この時期のロックンロール市場拡大と密接に結びついていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-07.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-21.pdf
- https://www.vocalgroupharmony.com/7ROWNEW/SpecialtyRecordsPartSix.htm
ドット・レコード
1956年4月21日号の『ビルボード(Billboard)』は、ドット・レコード(Dot Records)が株式発行と事業拡大を計画していると報じました。ドット・レコード(Dot Records)はパット・ブーン(Pat Boone, 1934–)らのシングルで商業的成功を重ねていた独立系レーベルで、1956年4月には資本面と事業面の拡張が進んでいました。同月の同社は、録音作品だけでなく、独立系レコード会社の成長を示す企業活動としても注目されます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-04-21.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-14.pdf
マーキュリー・レコード
1956年4月のマーキュリー・レコード(Mercury Records)では、プラターズ(The Platters)の「ザ・マジック・タッチ(The Magic Touch)」がポピュラーおよびリズム・アンド・ブルース市場で扱われていました。プラターズ(The Platters)は同月に初期アルバム収録曲の録音も行い、シングル市場での成功を長時間再生レコードの商品展開へ広げました。マーキュリー・レコード(Mercury Records)は、ボーカル・グループ録音をポピュラー市場とリズム・アンド・ブルース市場の双方へ展開していました。
- https://www.uncamarvy.com/Platters/platters.html
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-21.pdf
- https://www.45cat.com/record/70819×45
アトランティック・レコード
1956年4月のアトランティック・レコード(Atlantic Records)では、レイ・チャールズ(Ray Charles, 1930–2004)の「ドローン・イン・マイ・オウン・ティアーズ(Drown in My Own Tears)」がヒットを続けていました。同月には「ホワット・ウッド・アイ・ドゥ・ウィズアウト・ユー(What Would I Do Without You)」/「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー(Hallelujah, I Love Her So)」も評価され、レイ・チャールズ(Ray Charles, 1930–2004)の録音はゴスペル的唱法とリズム・アンド・ブルースを結びつける作品として広がりました。アトランティック・レコード(Atlantic Records)は、1956年4月のリズム・アンド・ブルース市場を代表する会社の一つでした。
- https://raycharlesvideomuseum.blogspot.com/2010/08/ray-charles-is-in-town-chronology-1956.html
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-21.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-04-07.pdf
インペリアル・レコード
1956年4月のインペリアル・レコード(Imperial Records)では、ファッツ・ドミノ(Fats Domino, 1928–2017)の「アイム・イン・ラヴ・アゲイン(I’m in Love Again)」/「マイ・ブルー・ヘヴン(My Blue Heaven)」がリズム・アンド・ブルース・チャートに入っていました。同作は1955年10月に録音され、1956年4月にはニューオーリンズ系リズム・アンド・ブルースが全国ポピュラー市場へ広がる動きを示しました。インペリアル・レコード(Imperial Records)は、ファッツ・ドミノ(Fats Domino, 1928–2017)を通じてロックンロールとリズム・アンド・ブルースの接点を広げていました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-04-21.pdf
- https://kimsloans.wordpress.com/rockin-60s/founders-2/fats-domino/
- https://strathdee.wordpress.com/2010/05/03/fats-domino-the-crossover-years-1955-57/
ヴァーヴ・レコード
1956年4月28日号の『ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)』は、ヴァーヴ・レコード(Verve Records)のアニタ・オデイ(Anita O’Day, 1919–2006)『アニタ(Anita)』を含む同時代のジャズ・ボーカル録音を論じました。同作はバディ・ブレグマン(Buddy Bregman, 1930–2017)の編曲を伴うジャズ・ボーカル作品として紹介されました。ヴァーヴ・レコード(Verve Records)は、ロックンロール中心の市場変化と並行して、ジャズ・ボーカルの長時間再生レコードを展開していました。
