1956年11月に録音された音楽
1956年11月は、冷戦、脱植民地化、公民権、国際文化行事が重なった月です。スエズ危機(Suez Crisis)では、エジプト共和国(Republic of Egypt)のガマール・アブドゥル・ナセル(Gamal Abdel Nasser, 1918–1970)政権をめぐる軍事衝突が国際問題化し、11月6日–7日に停戦が発効し、第一次国際連合緊急軍(First United Nations Emergency Force)の展開につながりました。ハンガリー人民共和国(Hungarian People’s Republic)では11月4日、ソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist Republics)軍がブダペストへ大規模進攻し、イムレ・ナジ(Imre Nagy, 1896–1958)政権は崩壊しました。アメリカ合衆国(United States of America)では11月6日の1956年アメリカ合衆国大統領選挙(1956 United States presidential election)でドワイト・デイヴィッド・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower, 1890–1969)が再選されました。インド共和国(Republic of India)では11月1日に州再編成法(States Reorganisation Act, 1956)が施行され、言語を軸とする州境再編が進みました。11月12日には、国際連合総会(United Nations General Assembly)がスーダン(Sudan)、モロッコ(Morocco)、チュニジア(Tunisia)の加盟を承認しました。11月13日には、合衆国最高裁判所(Supreme Court of the United States)がブラウダー対ゲイル事件(Browder v. Gayle, 352 U.S. 903 [1956])でバス分離法を違憲とした下級審判断を支持しました。11月22日には、オーストラリア連邦(Commonwealth of Australia)のメルボルンで第十六回オリンピック競技大会(Games of the XVI Olympiad)が開幕しました。
この月の確認されている録音:0曲
1956年11月の録音に関する情報のまとめ
1956年11月の同時代業界資料では、録音セッション日そのものよりも、レコード会社の契約更新、原キャスト・アルバム権、映画サウンドトラック盤、販促用拡張再生盤、季節アルバム、販売支店、録音技術者契約などの企業活動が目立ちます。アールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)はエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)を軸にアルバム販促と契約再編を進め、コロムビア・レコード(Columbia Records)はブロードウェイ原キャスト盤と自社配給網を強化しました。キャピトル・レコード(Capitol Records)、デッカ・レコード(Decca Records)、エムジーエム・レコード(MGM Records)なども、テレビ、映画、クリスマス商戦、海外配給を結びつけた動きを見せています。
アールシーエー・ヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)では、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)を中心にした契約・販促政策が大きく扱われました。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、同年のレコード印税43万ドルを長期に分配する契約設計、当初の2年契約と1年オプションを2つの5年期間へ組み替える内容、10,000,000枚規模の盤売上を報じています。同月には、アルバム販促企画「パーフェクト・フォー・パーティーズ(Perfect For Parties)」も展開され、『セブンティーン(Seventeen)』誌、ラジオ局、25セントの試聴用拡張再生盤を組み合わせ、50万枚超の発送を見込む施策として報じられました。さらに、ディスクジョッキー向けリリースに曲名、演奏時間、作曲者、レコード番号、出版社、伴奏編成を記したファイルカードを付ける運用、レッド・ベンソン(Red Benson, 生没年不明)の自作自演マスター取得、ミッチェル・エアーズ(Mitchell Ayres, 生没年不明)の「Guaglione」/「The Awakening of Pedro」の発売も確認できます。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-17.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-24.pdf
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、ブロードウェイ原キャスト盤と配給網の両面で当月の活動が確認できます。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、コロムビア・レコード(Columbia Records)のディスク・クラブが、ザ・モスト・ハッピー・フェラ(The Most Happy Fella)の原キャスト・アルバムを11月特別商品として368,000人の会員向け郵送案内に載せたと報じています。11月21日付の記事では、キャンディード(Candide)の原キャスト盤権を獲得したことで、同社が1956–1957年のブロードウェイ・ミュージカル4作中3作を押さえたとされ、リル・アブナー(Li’l Abner)は11月18日に録音され、ベルズ・アー・リンギング(Bells Are Ringing)は11月29日の開幕後に録音予定とされました。また、同月末にはデトロイトに自社配給支店を設け、従来のビューエル・サンズ社(Buhl Sons Co.)経由から1956年12月3日に切り替える準備も報じられています。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-24.pdf
- https://books.google.co.ls/books?id=hQoEAAAAMBAJ&printsec=frontcover
エピック・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)系のエピック・レコード(Epic Records)では、クラシックとポピュラー・アルバムの両面で販促が確認できます。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、エピック・レコード(Epic Records)がコンセルトヘボウ管弦楽団(Concertgebouw Orchestra)のシェヘラザード(Scheherazade)をめぐり、同楽団の同レーベルでのアルバム売上100,000枚を記念してエドゥアルト・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum, 1900–1959)にゴールド・ロングプレイ盤を贈る予定であることを報じています。同記事では、レオン・フライシャー(Leon Fleisher, 1928–2020)をクラシック部門の新戦力として扱うこと、アニタ・エリス(Anita Ellis, 1920–2015)のアルバム『アイ・ワンダー・ホワット・ビケイム・オブ・ミー(I Wonder What Became of Me)』を複数都市で試聴会にかけること、レスター・ラニン(Lester Lanin, 1907–2004)のダンス・アルバムをダブルデイ社(Doubleday)との直送郵便施策で宣伝することも確認できます。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-17.pdf
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード(Capitol Records)では、販売組織、契約、季節商品が同時代資料に現れます。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、トーマス・モーガン(Thomas Morgan, 生没年不明)が1957年1月1日付で地区販売管理職へ昇格し、マックス・キャリソン(Max Callison, 生没年不明)がキャピトル配給会社の全国販売管理職へ移る販売体制変更を報じています。同月には、ジャッキー・グリーソン(Jackie Gleason, 1916–1987)のクリスマス・アルバム『メリー・クリスマス(Merry Christmas)』の広告、ジミー・ブリードラヴ(Jimmy Breedlove, 生没年不明)のソロ契約、ダニー・ケイ(Danny Kaye, 1911–1987)の最初のシングル「Ciu Ciu Bella」を国際連合児童基金(United Nations Children’s Fund)向けの慈善企画として扱う記事も確認できます。一方、ソングライターズ・プロテクティブ・アソシエーション(Songwriters Protective Association)は、未出版曲を提出する作曲者に対してキャピトル・レコード(Capitol Records)が求める契約条項を警戒する通知を出しており、同社の楽曲獲得手続きも当月の業界問題として扱われていました。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-24.pdf
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デッカ・レコード
デッカ・レコード(Decca Records)は、アメリカ合衆国(United States of America)での販売会議と、イギリス(United Kingdom)でのロックンロール歌手契約の両面で確認できます。1956年11月14日付の『バラエティ(Variety)』は、デッカ・レコード(Decca Records)がニューヨークで部門別販売幹部会議を終え、販売担当副社長シドニー・ゴールドバーグ(Sydney Goldberg, 生没年不明)が今後の商品・販促計画を説明したと報じています。同じ1956年11月のロンドン発記事では、トミー・スティール(Tommy Steele)が劇場出演契約を得たこと、デッカ・レコード(Decca Records)が長期録音契約を結んだこと、「Rock With the Caveman」がイギリスのヒット・パレードで上昇していたこと、さらに同社が長時間再生盤を計画していたことが確認できます。また、アールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)とのヨーロッパ配給切替に関連し、1957年4月からアールシーエー(RCA)レーベル名でヴィクター商品をヨーロッパ発売する新契約について、同月にロンドンで協議が行われていました。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-10.pdf
コーラル・レコード
コーラル・レコード(Coral Records)では、ローレンス・ウェルク・アンド・ヒズ・シャンペーン・ミュージック(Lawrence Welk and His Champagne Music)の季節アルバムが当月の重点商品として確認できます。1956年11月14日付の『バラエティ(Variety)』は、コーラル・レコード(Coral Records)の『メリー・クリスマス・フロム・ローレンス・ウェルク・アンド・ヒズ・シャンペーン・ミュージック(Merry Christmas From Lawrence Welk and His Champagne Music)』が100,000枚に近づき、同レーベルで最速級の売上を示していると報じています。同記事は、ローレンス・ウェルク(Lawrence Welk, 1903–1992)のテレビ番組で同アルバムが大きく宣伝される予定であることも示しており、テレビ出演者の知名度をアルバム販売に結びつける事例として位置づけられます。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-17.pdf
エムジーエム・レコード
エムジーエム・レコード(MGM Records)は、クリスマス商戦、映画主題歌、特別アルバムで当月の活動が確認できます。1956年11月14日付の『バラエティ(Variety)』は、同社がクリスマス向けに10点のアルバムを重点販売し、そのうち5点が新作であること、シングルではバリー・ゴードン(Barry Gordon)の「I Like Christmas」/「Zoomah, The Santa Claus From Mars」を追加すると報じています。1956年11月28日付の記事では、山口淑子(1920–2014)がエムジーエム・レコード(MGM Records)から初めてレコードを出し、『八月十五夜の茶屋(The Teahouse of the August Moon)』のテーマ「August Moon」と『追想(Anastasia)』の主題歌を組み合わせる予定であることも確認できます。同月には、ダルテガ(D’Artega, 1907–1998)の特別アルバム『ストラディヴァリ・シャンパン(Stradivari Champagne)』を1956年12月1日発売予定の商品として扱う記事も出ています。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-24.pdf
エービーシー・パラマウント・レコード
エービーシー・パラマウント・レコード(ABC-Paramount Records)は、販売網、タレント発掘、放送局対応で当月の活動が確認できます。1956年11月14日付の『バラエティ(Variety)』は、同社社長サム・クラーク(Sam Clark, 生没年不明)と販売管理職ラリー・ニュートン(Larry Newton, 生没年不明)が、西海岸の販売会社との会合と新人発掘のために出張したと報じています。同記事は、ニューヨークの独立局ダブリューエヌイーダブリュー(WNEW)が商品名を含む曲を放送しない方針を取ったことに対し、同社がジョージ・ハミルトン4世(George Hamilton IV, 1937–2014)の「A Rose and a Baby Ruth」を「A Rose and A Candy Bar」に差し替えた特別盤を作ったことも伝えています。これは録音・発売後の放送規制対応であり、同社がヒット曲の放送機会を維持するために別バージョンのディスクを運用した事例です。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1956/CB-1956-11-17.pdf
アールケーオー・ユニーク・レコード
アールケーオー・ユニーク・レコード(RKO-Unique Records)は、映画音楽、出版、サウンドトラック盤を結びつける企業活動で確認できます。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、同社の出版子会社ラマス・ミュージック(Lamas Music)が11月中旬までに地方担当者7人を加え、映画スコアの著作権運用を本格化させると報じています。初期の重点対象は、ジョー・マイロー(Joe Myrow, 1910–1987)とマック・ゴードン(Mack Gordon, 1904–1959)による『バンドル・オブ・ジョイ(Bundle of Joy)』の楽曲、およびジェーン・パウエル(Jane Powell, 1929–2021)主演の『ザ・ガール・モスト・ライクリー(The Girl Most Likely)』の楽曲でした。同記事は、出演者が既存レコード会社との専属契約を持つ場合でも、映画サウンドトラック盤へ出演できる特約を契約に入れる方針を示しており、ジェーン・パウエル(Jane Powell, 1929–2021)がヴァーヴ・レコード(Verve Records)所属でありながら、同映画のサウンドトラック盤でアールケーオー・ユニーク・レコード(RKO-Unique Records)に参加する予定であることも確認できます。
ドット・レコード
ドット・レコード(Dot Records)は、録音技術者契約と西部地区の宣伝体制で確認できます。1956年11月14日付の『バラエティ(Variety)』は、ドット・レコード(Dot Records)とエクルズ・レコーディング・スタジオ(Eccles Recording Studios)が、国際電気労働者組合(International Brotherhood of Electrical Workers)Local 45の放送・録音技術者部門と契約したと報じています。同記事では、ランディ・ウッド(Randy Wood, 1917–2011)がドット・レコード(Dot Records)を率い、ベン・ジョーダン(Ben Jordan, 生没年不明)が同社主任技師に選ばれたことも確認できます。1956年11月28日付の同紙には、ジェリー・ジョンソン(Jerry Johnson, 生没年不明)が同社西部地区の宣伝責任者に就任した記事も出ており、録音・制作体制と地域宣伝の両面で当月の企業活動が読めます。
リバティ・レコード
リバティ・レコード(Liberty Records)は、キャピトル・レコード(Capitol Records)から移ったマージー・レイバーン(Margie Rayburn, 生没年不明)をめぐる動きで確認できます。1956年11月28日付の『バラエティ(Variety)』は、マージー・レイバーン(Margie Rayburn, 生没年不明)がキャピトル・レコード(Capitol Records)を離れてリバティ・レコード(Liberty Records)と契約し、最初の両面「Every Minute of the Day」および「Take A Gamble On Me」は、リバティ・レコード(Liberty Records)がキャピトル・レコード(Capitol Records)から購入したマスターであると報じています。このため、同月に確認できる主な活動は新規録音ではなく、既存マスターの取得と新レーベルからの発売準備です。
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード(Mercury Records)は、ヒット盤の宣伝、地域宣伝、契約アーティストで当月の活動が確認できます。1956年11月7日付の『バラエティ(Variety)』は、トロント出身のヴォーカル・グループ、ザ・ハイライツ(The Hi-Lites)がマーキュリー・レコード(Mercury Records)と契約し、最初の録音が「The Girl With the Bells」であると報じています。同月資料には、パティ・ペイジ(Patti Page, 1927–2013)の「Mama from the Train」、ジョージア・ギブス(Georgia Gibbs, 1919–2006)の「Tra La La」、ザ・ダイアモンズ(The Diamonds)の「On My Word of Honor」など、同社のポピュラー歌手・ヴォーカル・グループ商品も現れます。11月21日付の記事では、ソリー・ソロモン(Solly Solomon, 生没年不明)がピッツバーグ地区のマーキュリー・レコード(Mercury Records)宣伝を担当したことも確認できます。
- https://archive.org/stream/variety204-1956-11/variety204-1956-11_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1956/Billboard%201956-11-24.pdf
