1957年12月に録音された音楽
1957年12月は、冷戦下の安全保障、宇宙開発、原子力、国際文化が同時に大きく動いた月でした。1957年12月16日–19日には、パリで北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization)初の首脳会議が開かれ、集団防衛と科学技術協力が議題になりました。1957年12月6日には、アメリカ合衆国(United States of America)のヴァンガード試験機3号(Vanguard Test Vehicle 3)が打ち上げ直後に失敗し、人工衛星競争の厳しさを示しました。1957年12月23日には、シッピングポート原子力発電所(Shippingport Atomic Power Station)が運転段階に入り、原子力発電の実用化を象徴しました。1957年12月10日のノーベル賞(Nobel Prize)授賞式では、チェン・ニン・ヤン(Chen Ning Yang, 1922–2025)とツン・ダオ・リー(Tsung-Dao Lee, 1926–2024)が物理学賞、アルベール・カミュ(Albert Camus, 1913–1960)が文学賞、レスター・ボウルズ・ピアソン(Lester Bowles Pearson, 1897–1972)が平和賞を受けました。1957年12月25日には、エリザベス2世(Elizabeth II, 1926–2022)のクリスマス放送(Christmas Broadcast)が初めてテレビ放送され、王室メディアの形式も変化しました。
この月の確認されている録音:0曲
1957年12月の録音に関する情報のまとめ
1957年12月の録音産業では、ステレオ・ディスク、録音済みステレオ・テープ、ロングプレイ盤、低価格アルバム、クラシック定期購入制度、年末商戦向けのシングル宣伝が並行して動いていました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月23日号・1957年12月30日号では、オーディオ・フィデリティ(Audio Fidelity, Inc.)のステレオ・ディスク実演を契機として、主要メーカーがステレオ盤の発売時期、再生機器、既存在庫への影響を慎重に見極めていたことが報じられました。同時に、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)、コロムビア・レコード(Columbia Records)、マーキュリー・レコード(Mercury Records)の録音済みテープ市場参入も販売拡大要因として取り上げられ、モノラル盤中心の市場からステレオ時代へ向かう準備段階が明確になりました。
オーディオ・フィデリティ
オーディオ・フィデリティ(Audio Fidelity, Inc.)は、1957年12月にステレオ・ディスクをめぐる業界の議論の中心になりました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月23日号は、シドニー・フレイ(Sidney Frey, 生没年不明)がウェストレックス(Westrex)のカッター入手後に本格的なステレオ制作へ進む意向を示したことを報じました。1957年12月30日号では、同社のステレオ・ディスク実演が主要レコード会社・蓄音機メーカーの反応を引き出し、ステレオ・ディスクが研究段階から商業化段階へ進む前夜の話題として扱われました。1957年12月の同社の活動は、1958年以降に拡大するステレオ・ロングプレイ盤市場の先行事例でした。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1957/Billboard%201957-12-23.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1957/Billboard%201957-12-30.pdf
- https://library.syracuse.edu/digital/afdd/HOME.HTM
アールシーエー・ヴィクター・レコード部門
アールシーエー・ヴィクター・レコード部門(RCA Victor Record Division)は、1957年12月末にクラシック盤の会員制販売と年末向けレコード販売を並行して進めていました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号は、アールシーエー・ヴィクター・ソサエティ・オブ・グレート・ミュージック(RCA Victor Society of Great Music)が1958年1月1日から運営を始め、アルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini, 1867–1957)指揮、エヌビーシー交響楽団(NBC Symphony Orchestra)によるベートーヴェン交響曲9曲のアルバムを導入特典として扱うことを報じました。同号では、アールシーエー・ヴィクター(RCA Victor)のエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley, 1935–1977)関連盤も年末チャート上で大きく扱われ、クラシック定期購入制度とポピュラー盤の年末需要が同時に動いていました。
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、1957年12月時点でステレオ・ディスクの将来性を認めながらも、消費者向けの拙速な導入には慎重でした。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号では、ゴダード・リーバーソン(Goddard Lieberson, 1911–1977)が、ステレオ・ディスクは将来的に消費者向けに十分洗練されるが、1948年のロングプレイ盤導入のように既存規格をただちに置き換えるものではない、という見解を示しました。同号は、コロムビア・レコード(Columbia Records)が高忠実度録音シリーズ「アドベンチャーズ・イン・サウンド(Adventures in Sound)」を準備していたことも報じており、同社がステレオ化の前段階として音響効果と高忠実度商品を強調していたことを示しています。
キャピトル・レコード社
キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)は、1957年12月にエンジェル・レコード(Angel Records)取得後の販売体制を強化していました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号は、同社がロジャー・ホール(Roger Hall, 生没年不明)をエンジェル・レコード(Angel Records)の全国販売責任者に任命し、1958年向けの初回発売計画と欧州側の制作・包装・販売連携を進めていたことを報じました。同号では、録音済みテープ販売の伸長にも触れられ、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)、コロムビア・レコード(Columbia Records)、マーキュリー・レコード(Mercury Records)の参入が録音済みテープ市場を刺激したとされています。1957年12月の同社は、クラシック系レーベル運用、ロングプレイ盤、録音済みテープを並行して強化していました。
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード(Mercury Records)は、1957年12月にダイアモンズ(The Diamonds)の「ザ・ストロール(The Stroll)」を重点的に宣伝していました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月23日号には、同曲を若年層向けダンス流行と結びつける広告が掲載され、ディスクジョッキー向けに「ストロール(Stroll)」の図解カードを提供する施策が示されました。1957年12月30日号では、ジョー・ルイス(Joe Louis, 1914–1981)が同曲の宣伝のためにディスクジョッキーへの電話プロモーションを行ったことも報じられています。同号の録音済みテープ市場記事では、マーキュリー・レコード(Mercury Records)の参入も販売拡大要因の一つとして扱われました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1957/Billboard%201957-12-23.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1957/Billboard%201957-12-30.pdf
ムーン・レコード
ムーン・レコード(Moon Records)は、1957年12月末に新興レーベルとして登場しました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号によれば、エリオット・ウェクスラー(Elliot Wexler, 生没年不明)が自身のレーベルとしてムーン・レコード(Moon Records)を設立し、初回発売として子ども向けアルバム10点を各1.49ドルで出しました。同記事では、店舗、スーパーマーケット、通信販売を含む幅広い流通を狙う方針も示されています。子ども向けレコード市場に対する価格・販路・パッケージ面からの新規参入でした。
ウォルドーフ・ミュージック・ホール・レコード
ウォルドーフ・ミュージック・ホール・レコード(Waldorf Music Hall Records)は、1957年12月末に低価格アルバムの新ラインを投入しました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号は、同社がカラートーン(Colortone)レーベルで1.49ドルの12インチ・ロングプレイ盤ラインを開始し、初回発売として20点を用意したことを報じています。内容はポピュラー・スタンダード、ムード音楽、地域テーマのアルバムなどで、専用の4色ラベルとラップアラウンド・カバーを用いた商品設計も示されました。1957年末の低価格ロングプレイ盤市場を示す動きでした。
エムジーエム・レコード
エムジーエム・レコード(M-G-M Records)は、1957年12月末に1958年新年向けのアルバム発売計画を進めていました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号は、同社がロングプレイ盤8点とエクステンデッド・プレイ盤5点を準備していたことを伝えています。ロングプレイ盤には、シャルル・トレネ(Charles Trenet, 1913–2001)の楽曲を扱うガイ・ラファーツ(Guy Luypaerts, 1917–2015)のアルバム、ディック・ハイマン(Dick Hyman)の『ハイファイ・ハープシコード(Hi-Fi Harpsichord)』、ハンク・ウィリアムズ(Hank Williams, 1923–1953)関連の『ジ・イモータル・ハンク・ウィリアムズ(The Immortal Hank Williams)』などが含まれていました。同社は新年向けの商品編成を年末段階で整えていました。
ユナイテッド・アーティスツ・レコード社
ユナイテッド・アーティスツ・レコード社(United Artists Record Corporation)は、1957年12月末に映画音楽関連の販売・配給準備を進めていました。『ビルボード(The Billboard)』1957年12月30日号は、同社社長マックス・ヤングスタイン(Max Youngstein, 1913–1997)のもと、アル・タマリン(Al Tamarin, 生没年不明)が西海岸に入り、1958年第1四半期に配給予定の映画作品と、その音楽がサウンドトラック・パッケージになり得る可能性について、配給関係者と協議したことを報じました。対象作品には『情婦(Witness for the Prosecution)』や『突撃(Paths of Glory)』などが含まれており、映画会社系レコード部門が映画音楽の商品化を進める動きでした。
ベル・カント・マグネティック・レコーデッド・テープ
ベル・カント・マグネティック・レコーデッド・テープ(Bel Canto Magnetic Recorded Tape)は、1957年12月の録音済みステレオ・テープ市場を示す会社でした。『テープ・レコーディング(Tape Recording)』1957年12月号には、クリスマス向けのステレオ・テープとして、ロバート・レイムズ(Robert Rheims, 生没年不明)によるワーリッツァー・パイプ・オルガン演奏とカリヨンを組み合わせた20曲の伝統的クリスマス・キャロル集が紹介されました。同号は録音済みテープを家庭用音楽メディアとして扱っており、1957年12月の段階でステレオ体験がディスクだけでなくテープ商品にも広がっていたことを示しています。
