1958年6月に録音された音楽
1958年6月は、冷戦下の政治再編、宇宙開発、地域紛争、社会運動、スポーツ文化が同時に動いた月です。フランスではシャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle, 1890–1970)が6月1日に第四共和政下の首相となり、第五共和政へ向かう憲法改正の流れが始まりました。国際連合安全保障理事会(United Nations Security Council)は6月11日に決議第128号を採択し、レバノン国際連合監視団(United Nations Observation Group in Lebanon)を設置しました。ハンガリーではイムレ・ナジ(Imre Nagy, 1896–1958)が6月16日に処刑され、1956年ハンガリー革命の余波を象徴する出来事となりました。アメリカ合衆国では、1958年国家航空宇宙法(National Aeronautics and Space Act of 1958)の上院案が6月16日に通過し、アメリカ合衆国海軍原子力潜水艦ノーチラス(USS Nautilus, SSN-571)は6月9日にサンシャイン作戦(Operation Sunshine)へ出発しました。6月30日には全米有色人地位向上協会対アラバマ州・パターソン司法長官事件(National Association for the Advancement of Colored People v. Alabama ex rel. Patterson, Attorney General)で結社の自由に関わる判決が出され、同日アラスカ州昇格法(Alaska Statehood Act)がアメリカ合衆国議会で承認されました。6月29日には国際サッカー連盟(Fédération Internationale de Football Association)主催の1958年ワールドカップ決勝でブラジルがスウェーデンを破り、同国初の優勝を果たしました。
この月の確認されている録音:0曲
1958年6月の録音に関する情報のまとめ
1958年6月の録音関連業界では、ステレオ盤の市販化、ステレオ・テープとの競合、78回転盤から45回転盤への移行、販売制度の再編が同時に進みました。当月の同時代業界資料では、各社がステレオ長時間盤、録音済みステレオ・テープ、ステレオ再生機器、流通・返品制度を整備する動きが目立ちます。また、全米録音芸術科学アカデミー(National Academy of Recording Arts and Sciences)の東部支部が初の公開会合を開き、録音産業内の顕彰制度と専門団体化の動きも表面化しました。
アールシーエー・ヴィクター
ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Radio Corporation of America)のアールシーエー・ヴィクター・レコード部門(RCA Victor Record Division)は、1958年6月にステレオ盤55点、録音済みステレオ・テープ・カートリッジ32点、15機種のステレオ・ディスク蓄音機ラインを発表しました。価格帯は129–2,500ドルとされ、ステレオ盤と従来のモノラル盤を再生できるカートリッジ、録音済みテープの扱いやすさを高めるカートリッジ方式、ステレオ・テープ再生機を組み合わせて、市場全体をステレオ再生へ誘導する構成でした。ジョージ・アール・マレック(George R. Marek, 生没年不明)は、ステレオ盤の製造には厳密な検査と高い不良率が伴うため価格が高くなると説明し、秋以降はモノラル盤とステレオ盤を一対一で発売する方針を示しました。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、1958年6月1日付でシングル盤とアルバムの販売政策を改定しました。ウィリアム・ピー・ギャラガー(William P. Gallagher, 生没年不明)が発表した制度変更では、シングル盤の注文手順、配給業者の保証枠、返品制度、全国的プロモーション体制が見直されました。アルバムについては、四半期ごとの返品特典が全商品系列へ広げられ、販売店が在庫リスクを管理しやすい仕組みに改められました。この改定は、ステレオ盤の市場投入と並行して、録音物の流通・販売管理を再編する動きでした。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード社(Mercury Record Corporation)は、1958年6月にステレオ盤分野への参入を発表し、初回発売としてポピュラー7点、クラシック5点のアルバムを用意しました。初回12点は、先に録音済みステレオ・テープとして販売されていた商品の販売実績を基準に選ばれました。同月には、同社が78回転盤の製造を完全に廃止する方針も報じられました。アーウィン・スタインバーグ(Irwin Steinberg, 生没年不明)は、プラターズ(The Platters)の「Twilight Time」で78回転盤の販売比率が1.8パーセントにとどまったことを例に挙げ、45回転盤専用生産へ移る理由を説明しました。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_36/cashbox19unse_36_djvu.txt
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
グランド・アワード
グランド・アワード(Grand Award)は、1958年6月7日付の同時代業界資料で、同社初のステレオ長時間盤シリーズを2週間後に発売すると報じられました。初回発売は8点で、各盤の小売価格は4.98ドルとされました。同社は、過去1年半の録音セッションをステレオで行ってきたため、追加発売に使えるカタログをすでに持っていると説明しました。発売予定には、ポール・ホワイトマン(Paul Whiteman, 1890–1967)関連の『Hawaiian Magic』や、トミー・ドーシー(Tommy Dorsey, 1905–1956)とジミー・ドーシー(Jimmy Dorsey, 1904–1957)の楽団曲集、グレン・ミラー(Glenn Miller, 1904–1944)関連曲集などが含まれていました。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_36/cashbox19unse_36_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-07.pdf
オーディオ・フィデリティ・レコーディングス
オーディオ・フィデリティ・レコーディングス(Audio Fidelity Recordings)は、1958年5月30日–6月1日のメモリアル・デー週末に、ニューヨーク州ロングアイランドのブリッジハンプトン・ロード・レース・センター(Bridgehampton Road Race Center)でスポーツカー・レース音源を録音しました。シドニー・フレイ(Sidney Frey, 生没年不明)は、スポーツカー・クラブ・オブ・アメリカ(Sports Car Club of America)の8イベント・プログラム全体を録音対象にしました。この録音は、ブリッジハンプトン・カップ・レース(Bridgehampton Cup Race)とスポーツカー走行音を高忠実度アルバムとして再現する企画でした。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_36/cashbox19unse_36_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-07.pdf
ミラー・インターナショナル
ミラー・インターナショナル社(Miller International Co.)は、1958年6月14日付の同時代業界資料に、ステレオ・フィデリティ(Stereo-Fidelity)の「完全なステレオ録音カタログ」を広告掲載しました。広告では、同社のステレオ長時間盤を1枚1.98ドル、ディーラー向けキットを8枚入り15.84ドルで販売する形が示されました。廉価ステレオ長時間盤をまとまったカタログとして市場へ出す動きは、1958年6月のステレオ普及期を示す具体例です。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
オメガ
オメガ(Omega)は、録音済みテープのオメガテープス(Omegatapes)を制作していた企業として紹介され、1958年6月に4点のステレオ・アルバムでステレオ盤分野へ参入しました。デイヴ・ヒューバート(Dave Hubert, 生没年不明)は、同社のステレオ盤はステレオ再生を第一に考えて作曲、編曲、録音されたもので、モノラル再生は二次的な考慮にすぎないと説明しました。発売予定には、ロイド・マム・アンド・ヒズ・スターライト・ルーフ・オーケストラ(Lloyd Mumm And His Starlight Roof Orchestra)の『Champagne Music』、ディック・マークス・アンド・ヒズ・カルテット(Dick Marx And His Quartet)の『Marx Makes Broadway』、宇宙時代の効果音を扱う『Destination Moon』、ポール・タナー(Paul Tanner, 1917–2013)のエレクトロ・テルミン演奏を含む『Music For Heavenly Bodies』が含まれていました。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
キング・レコード
キング・レコード(King Records)は、1958年6月下旬にステレオ長時間盤の市場投入を進めました。同時代業界資料では、ジョニー・ペイト・トリオ・プラス・スリー(Johnnie Pate Trio Plus Three)の『Jazz Goes Ivy League』が、同社のステレオ盤展開に関わる作品として扱われています。録音日と録音会場は、同資料では確認できません。1958年6月の動きとして確認できるのは、同社がステレオ長時間盤市場へ入ったことです。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-28.pdf
- https://www.zeroto180.org/king-records-in-a-nutshell/
- https://bsnpubs.com/king/02king500/02king500.html
カールトン・レコード
カールトン・レコード(Carlton Records)は、1958年6月14日付の同時代業界資料で、1958年7月にステレオ長時間盤カタログを開始すると報じられました。同社は「アンリミテッド・サウンド」と説明される技術的特徴を掲げ、より正確なステレオ再生を実現するとしました。1958年6月時点では、ステレオ市場参入へ向けた発売準備が確認できます。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
アトコ・レコード
アトコ・レコード(Atco Records)は、1958年6月14日付の同時代業界資料で、サンディ・スチュワート(Sandy Stewart, 生没年不明)とアーヴィング・フィールズ(Irving Fields, 1915–2016)の契約を発表しました。同記事では、両者の録音はすでに完了しており、サンディ・スチュワート(Sandy Stewart, 生没年不明)は「A Certain Smile」と「Kiss Me Richard」、アーヴィング・フィールズ(Irving Fields, 1915–2016)は「Syncopated Sadie」と「Ragtime Rock」を発売予定としていると報じられています。1958年6月時点で、新契約と新録音物の発売準備が進んでいました。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
ハノーバー・レコード
ハノーバー・レコード(Hanover Records)は、1958年6月14日付の同時代業界資料で、3組のアーティストを新たに契約したと報じられました。対象には、同社が2つのマスターを購入し即時発売予定としたインストゥルメンタルズ(The Instrumentals)、ディーン・エドワーズ(Dean Edwards, 生没年不明)、ローラ・レスリー(Laura Leslie, 生没年不明)が含まれます。マスター購入と新譜発売準備を伴う企業活動として、同月のレコード市場での動きが確認できます。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)は、1958年6月にデザイン・レコード(Design Records)が発売した『Pal Joey』関連アルバムに対して差止命令を得ました。記事によれば、キャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)は、同アルバムのジャケットがキャピトル・レコード社(Capitol Records, Inc.)の映画『Pal Joey』オリジナル・サウンドトラック・アルバムのジャケットに酷似し、購入者に同一演奏を含む商品だと誤認させるおそれがあると主張しました。サウンドトラック盤の商品表示、ジャケット、レコード市場の競争に関わる当月の企業活動でした。
- https://archive.org/stream/cashbox19unse_37/cashbox19unse_37_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1958/CB-1958-06-14.pdf
