1959年9月に録音された音楽
1959年9月、世界では冷戦下の宇宙開発と首脳外交が大きく動きました。ソビエト連邦(Union of Soviet Socialist Republics)のルナ2号(Luna 2)は月面に到達し、人工物として初めて地球外天体へ接触しました。アメリカ合衆国(United States of America)ではドワイト・デイヴィッド・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower, 1890–1969)とニキータ・セルゲーエヴィチ・フルシチョフ(Nikita Sergeyevich Khrushchev, 1894–1971)が会談し、軍縮・通商・東西関係が議題となりました。アメリカ合衆国(United States of America)では労使報告開示法(Labor-Management Reporting and Disclosure Act of 1959)が成立し、労働組合の財務報告と内部民主制が制度化されました。日本では昭和34年台風第15号(Typhoon Vera、伊勢湾台風)が本州を襲い、戦後日本の気象災害史に大きな痕跡を残しました。セイロン自治領(Dominion of Ceylon)ではソロモン・ウェスト・リッジウェイ・ディアス・バンダラナイケ(Solomon West Ridgeway Dias Bandaranaike, 1899–1959)首相が銃撃され、翌日に死亡しました。フランスではトランスポール・アエリアン・アンテルコンチナントー307便(Transports Aériens Intercontinentaux Flight 307)が墜落しました。文化面ではナショナル・ブロードキャスティング・カンパニー(National Broadcasting Company)で『ボナンザ(Bonanza)』が放送開始され、アメリカ合衆国(United States of America)のテレビ番組制作におけるカラー放送時代の広がりを示しました。
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1959年9月の録音に関する情報のまとめ
1959年9月の録音関連業界では、長時間盤とステレオ盤を中心にした販売促進、ポピュラー音楽部門の制作体制再編、独立レーベルの新規参入やアルバム化が進みました。『ビルボード(The Billboard)』と『キャッシュ・ボックス(The Cash Box)』には、アーティスト・アンド・レパートリー(Artists and Repertoire)の組織変更、販売店向け割引、地域別シングル展開、録音チームの海外派遣など、録音物の制作・流通・販売を一体化させる動きが見られます。ステレオ長時間盤の普及期に、主要会社と独立会社の双方が録音技術、制作組織、広告手法を競い合っていた時期です。
アールシーエー・ビクター
アールシーエー・ビクター(RCA Victor)は、リビング・ステレオ(Living Stereo)を前面に出した「ニュー・ゴールデン・エイジ・オブ・サウンド・アルバム(New Golden Age of Sound Albums)」の販促を展開しました。ミラクル・サーフェス(Miracle Surface)を掲げた長時間盤の音質訴求と、試聴用長時間盤を組み合わせた小売促進が特徴でした。ジョン・エイチ・ブレック・インコーポレーテッド(John H. Breck, Inc.)との連動により、レコード専門店以外の消費財広告とも結びつけていました。
- https://www.cuttersguide.com/pdf/Periodical-Publications/life-by-time-inc-published-september-28-1959.pdf
- https://www.elvisrecords.com/new-golden-age-of-sound/
コロムビア・レコード
コロムビア・レコード(Columbia Records)は、ポピュラー音楽部門のアーティスト・アンド・レパートリー(Artists and Repertoire)体制を大幅に変更しました。西海岸にもポピュラー音楽部門の体制を置き、長時間盤とシングル盤を分けて扱うだけでなく、制作担当者が複数の商品形態を横断して扱う方向へ再編しました。また、ジェリー・ヴェイル(Jerry Vale, 1930–2014)と新たな7年契約を結び、新アルバム『ザ・セイム・オールド・ムーン(The Same Old Moon)』の発売を予定しました。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Billboard/50s/1959/Billboard%201959-09-21.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Music/Cash-Box/50s/1959/CB-1959-10-03.pdf
キャピトル・レコード
キャピトル・レコード・インコーポレイテッド(Capitol Records, Inc.)は、アーティスト・アンド・レパートリー(Artists and Repertoire)部門を再編し、制作チーム単位を導入しました。同社はポピュラー音楽制作を従来の担当者単位からチーム制へ移し、録音企画、制作、販売展開をより組織的に結びつけました。ステレオ盤と長時間盤の市場が拡大するなかで、同社の制作管理体制が変化したことを示す動きです。
マーキュリー・レコード
マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)は、大規模な企業広告キャンペーンを開始しました。この広告展開は、個別盤の宣伝だけでなく、会社名と録音ブランド全体を消費者へ訴求する方向を示していました。ステレオ長時間盤市場の拡大期に、マーキュリー・レコード・コーポレーション(Mercury Record Corporation)は音質、レパートリー、企業イメージを組み合わせて販売促進を行いました。
アトランティック・レコーディング・コーポレーション
アトランティック・レコーディング・コーポレーション(Atlantic Recording Corporation)は、ロックンロール系アーティストによる8000番台長時間盤6点を発売しました。対象には、ルース・ブラウン(Ruth Brown, 1928–2006)の『ミス・リズム(Miss Rhythm)』、レイ・チャールズ(Ray Charles, 1930–2004)の『ホワットド・アイ・セイ(What’d I Say)』、ラヴァーン・ベイカー(LaVern Baker, 1929–1997)の『ブルース・バラッズ(Blues Ballads)』、クライド・マクファター(Clyde McPhatter, 1932–1972)の『クライド(Clyde)』、ジョー・ターナー(Joe Turner, 1911–1985)の『ビッグ・ジョー・イズ・ヒア(Big Joe Is Here)』、ザ・クローヴァーズ(The Clovers)の『ダンス・パーティー(Dance Party)』が含まれていました。また、地域別に歌詞を差し替えた『ハイ・スクール・ユーエスエー(High School U.S.A.)』の20都市版シングルを準備し、地域市場を意識した複数バージョン展開を進めました。
トゥエンティース・フォックス・レコード
トゥエンティース・フォックス・レコード(20th-Fox Records)は、同社初の大規模販売プログラム「プロフィットスコープ(ProfitScope)」を開始しました。同プログラムでは、販売店が同社の主要アルバムを20パーセント割引で仕入れられる仕組みが示され、長時間盤市場における小売支援策として機能しました。映画会社系レコード部門がアルバム販売を強化する動きとして位置づけられます。
オーディオ・フィデリティ・レコード
オーディオ・フィデリティ・レコード(Audio Fidelity Records)は、同社カタログの録音を紹介するラジオ番組「ジ・オーディオ・フィデリティ・アワー(The Audio Fidelity Hour)」を毎週日曜夜に放送しました。販売店からの共同広告要望にも対応し、高音質録音を前面に出した独立レーベルとして、放送、店頭広告、新録音を連動させました。1959年9月29日には西海岸での録音活動も予定され、同社の録音制作と販促の両面が拡大しました。
エヴェレスト・レコード
エヴェレスト・レコード(Everest Records)は、ベロック・インストゥルメント・コーポレーション(Belock Instrument Corporation)が開発した機材を用いる2組の録音チームを欧州へ派遣しました。一方のチームはイタリアのローマで映画『ザ・セント・オブ・ミステリー(The Scent of Mystery)』のスコア録音を行い、もう一方のチームはイギリスのロンドンでロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)の交響作品を35ミリ磁気テープ方式で録音する計画でした。ステレオ時代の高音質録音技術を、国際的なクラシック録音と映画音楽録音へ展開する動きでした。
テキサス・プラスチックス
テキサス・プラスチックス(Texas Plastics)は、独立レコード会社向けのプレスおよび流通サービスを提供しました。インディアナポリスのウィスパリング・パインズ(Whispering Pines)レーベル向けにシングルを発売し、地方独立レーベルの制作物を製造・流通へ接続しました。レコード会社そのものではありませんが、録音関連産業における製造・流通支援の動きとして重要です。
キング・レコード
キング・レコード(King Records)は、ルディ・ウェスト(Rudy West, 生没年不明)と専属録音契約を結びました。ルディ・ウェスト(Rudy West, 生没年不明)はザ・ファイヴ・キーズ(The Five Keys)の初期リード・ヴォイスであり、リズム・アンド・ブルース系歌手の再配置をめぐる同社の録音契約活動を示しています。1950年代末のキング・レコード(King Records)は、既存グループ出身の歌手を取り込みながら、自社のリズム・アンド・ブルース録音を拡張していました。
カリコ・レコード
カリコ・レコード(Calico Records)は、長時間盤分野へ進出しました。最初のアルバムは、シングル『シンス・アイ・ドント・ハヴ・ユー(Since I Don’t Have You)』で成功したザ・スカイライナーズ(The Skyliners)を中心にした企画でした。シングル・ヒットを長時間盤商品へ発展させる独立レーベルの動きとして、1950年代末のポップ市場の変化を示しています。
マラソン・レコード
マラソン・レコード(Marathon Records)は、ミシシッピ州ハッティズバーグに設立されました。同社は新たな地方独立レーベルとして発足し、録音制作担当者を置きました。ニューヨークやロサンゼルス以外の地域から新しい録音会社が登場していたことを示す動きです。
