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Fitz and The Tantrums「MoneyGrabber」レビュー|レトロ・ソウル風ポップの気持ちよさ

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Fitz and The Tantrums「MoneyGrabber」

好きな曲メモ #0001

Fitz and The Tantrums『Pickin’ Up The Pieces』ジャケット写真

「MoneyGrabber」は、1960年代ソウルの身体的な高揚感を、2010年代のインディーポップの明快な輪郭で鳴らした一曲です。手拍子、ホーン、鍵盤、ドラムが冒頭から無駄なく配置され、曲はほとんど助走を置かずに熱を帯びていきます。古いソウルへの敬意ははっきり感じられますが、単なる再現ではなく、フックの強いポップソングとして整理されているところに、この曲の鮮やかさがあります。

フィッツ・アンド・ザ・タントラムズ(Fitz and The Tantrums)の初期サウンドは、ヴィンテージな質感を現代のバンド演奏として切れ味よく響かせる点に特徴があります。「MoneyGrabber」ではその魅力が特に分かりやすく、マイケル・フィッツパトリック(Michael Fitzpatrick)の押し出しの強いボーカルと、ノエル・スキャッグス(Noelle Scaggs)の鋭く抜ける声が、曲全体の推進力をさらに高めています。軽快でありながら芯が太く、短い時間の中にバンドの熱量とサウンドの個性が凝縮されています。

基本情報

曲名:MoneyGrabber
アーティスト:フィッツ・アンド・ザ・タントラムズ
収録アルバム:『Pickin’ Up The Pieces』
リリース日:2010年8月24日
シングルリリース日:2011年8月15日
レーベル:ダンジャーバード・レコード(Dangerbird Records)
ジャンル:レトロ・ソウル/ポップ/インディーポップ

作詞・作曲:マイケル・フィッツパトリック、クリス・シーフリード(Chris Seefried)
プロデュース:マイケル・フィッツパトリック、クリス・シーフリード
ミュージックビデオ:マイケル・モーハン(Michael Mohan)監督

演奏メンバー:
マイケル・フィッツパトリック/ボーカル、キーボード、パーカッション
ノエル・スキャッグス/ボーカル、タンバリン
ジェームズ・キング(James King)/サクソフォーン、フルート
イーサン・フィリップス(Ethan Phillips)/ベース
ジェレミー・ルズムナ(Jeremy Ruzumna)/キーボード
ジョン・ウィックス(John Wicks)/ドラム、パーカッション

YouTube

「MoneyGrabber」のミュージックビデオは、楽曲の持つ推進力をほとんどそのまま映像化したような作りです。赤と青の照明に照らされた演奏シーンを中心に、フィッツ・アンド・ザ・タントラムズの身体的なグルーヴと、舞台上で音が立ち上がっていく感覚が前面に出ています。

映像は物語性で引っ張るタイプではなく、バンドの演奏そのものを見せることに重心があります。そのため、手拍子、ホーン、鍵盤、タイトなリズム、そしてマイケル・フィッツパトリックとノエル・スキャッグスの掛け合いが、視覚的にも分かりやすく伝わります。過度に作り込まれた映像というより、曲の熱量をそのまま舞台上に置いたようなミュージックビデオで、初期のフィッツ・アンド・ザ・タントラムズが持っていたライブバンドとしての強さをよく捉えています。

Apple Music

アップル・ミュージック(Apple Music)で音だけに向き合うと、「MoneyGrabber」の構成の巧さがよりはっきり見えてきます。手拍子とドラムが作る乾いたリズム、短く差し込まれる鍵盤、必要なところだけを明るく押し出すホーンが、過剰に飾られることなく、コンパクトな曲の中に整理されています。

この曲の面白さは、ヴィンテージ・ソウルの質感をまといながら、音像そのものは決して重くなりすぎないところにあります。声、リズム、ホーンがそれぞれ前に出る瞬間を持ちながら、全体としてはポップソングの速度感を失っていません。映像ではバンドの身体性が強く伝わりますが、音だけで聴くと、フィッツ・アンド・ザ・タントラムズの初期サウンドが持っていた整理された熱量と、フックの作り方の巧みさがよく分かります。

アップル・ミュージックで「MoneyGrabber」を聴く

おすすめポイント

おすすめしたいのは、曲の短さと勢いのよさがきれいに噛み合っているところです。「MoneyGrabber」は、じっくり盛り上げる曲ではありません。手拍子とドラムが鳴った時点で空気を作り、そこに声とホーンが入ると、もう曲は走り出しています。助走の少なさが、この曲の気持ちよさにつながっています。

マイケル・フィッツパトリックの歌は、きれいに磨き上げた声で聴かせるというより、少しざらついた声で曲を前に押していくタイプです。そこへノエル・スキャッグスの声が入ると、サウンドに明るさと切れ味が加わります。二人の声はなめらかに溶け合うというより、互いに反応しながら曲を動かしていて、そのやり取りがこの曲の大きな魅力になっています。

ホーンと鍵盤の入り方もよくできています。ホーンは長いソロで目立つのではなく、短い合いの手のように差し込まれ、曲の温度を一段上げています。鍵盤も前に出すぎず、リズムの隙間で曲に厚みを加えています。どの音も派手に主張しすぎないのに、曲全体はしっかり熱を持っています。

古いソウルの質感はありますが、懐かしさだけに頼った曲ではありません。リズムは軽く、フックは分かりやすく、バンドの演奏も引き締まっています。初めて聴いても入りやすく、何度か聴くと声やホーンの細かい掛け合いが耳に残る。そこが「MoneyGrabber」をすすめたくなるいちばんの理由です。

この曲について

「MoneyGrabber」は、フィッツ・アンド・ザ・タントラムズ(Fitz and The Tantrums)のデビュー・アルバム『Pickin’ Up The Pieces』に収録された曲です。アルバムは2010年8月24日にダンジャーバード・レコード(Dangerbird Records)から発表され、「MoneyGrabber」は4曲目に置かれています。バンドの初期サウンドを知るには、まず手に取りやすい一曲です。

フィッツ・アンド・ザ・タントラムズの出発点には、かなり身近な制作環境がありました。マイケル・フィッツパトリック(Michael Fitzpatrick)は、元交際相手から近所で売られていた教会オルガンの話を聞き、その楽器を50ドルで手に入れたことが創作のきっかけになったと語っています。そのオルガンから「MoneyGrabber」が直接生まれたとまでは確認できませんが、古い楽器の手触りや、自宅に近い場所で音を組み立てていく感覚は、初期のフィッツ・アンド・ザ・タントラムズの音に確かに通じています。

「MoneyGrabber」は、古いソウルやリズム・アンド・ブルースの感触を持ちながら、昔の音をそのままなぞる曲ではありません。手拍子、ホーン、鍵盤、男女ボーカルの掛け合いは、どれも分かりやすく前に出ていますが、曲そのものは短く、よく引き締まっています。レトロな質感を持ちながらも、聴こえ方は重くなく、ポップソングとしてすっと入ってきます。

チャート面でも、「MoneyGrabber」はフィッツ・アンド・ザ・タントラムズ初期の代表曲として一定の広がりを見せました。ビルボード・アダルト・オルタナティブ・エアプレイ(Billboard Adult Alternative Airplay)で2位、ビルボード・アダルト・ポップ・エアプレイ(Billboard Adult Pop Airplay)で34位、ビルボード・ホット・ロック・アンド・オルタナティブ・ソングス(Billboard Hot Rock & Alternative Songs)で33位を記録しています。アメリカレコード協会(Recording Industry Association of America)によるゴールド認定も確認できます。

「MoneyGrabber」は、テレビドラマ『クリミナル・マインド/FBI vs. 異常犯罪(Criminal Minds)』第6シーズン第5話「安全地帯(Safe Haven)」でも使われています。フィッツ・アンド・ザ・タントラムズ(Fitz and The Tantrums)の初期サウンドが、アルバムやライブだけでなく、映像作品の中でも響きやすい力を持っていたことがうかがえます。

巨大なヒット曲というより、ラジオ、ライブ、映像作品などを通じて少しずつ広がっていった曲という印象があります。だからこそ、「MoneyGrabber」には初期のフィッツ・アンド・ザ・タントラムズらしい手触りが残っています。演奏は整いすぎていませんが、曲としてはよく整理されている。そのバランスが、この曲をただのレトロ趣味ではなく、何度も聴き返せるポップソングにしています。

聴く・探す

アップル・ミュージック(Apple Music)では、『Pickin’ Up The Pieces』をアルバム単位で聴けます。「MoneyGrabber」が気に入ったら、そのままアルバムを通して聴いてみると、手拍子、ホーン、鍵盤、男女ボーカルの掛け合いが、ほかの曲でも大きな魅力になっていることが分かります。

アップル・ミュージックで『Pickin’ Up The Pieces』を聴く

CDやレコードで手元に置きたい場合は、アマゾン(Amazon)などで『Pickin’ Up The Pieces』を探すこともできます。配信で聴くのとは少し違い、アルバムとして手元に置くと、曲順やジャケットを含めて、この時期のフィッツ・アンド・ザ・タントラムズの雰囲気をより味わいやすくなります。

Amazon.co.jp: Pickin Up The Pieces [Analog]: ミュージック
Amazon.co.jp: Pickin Up The Pieces : ミュージック

アマゾンで『Pickin’ Up The Pieces』のCD・レコードを探す

まとめ

「MoneyGrabber」は、レトロ・ソウルの質感を持ちながら、昔の音をそのまま再現するだけの曲ではありません。手拍子、ホーン、鍵盤、男女ボーカルの掛け合いがはっきりしていて、短い曲の中にバンドの勢いがしっかり詰まっています。

フィッツ・アンド・ザ・タントラムズ(Fitz and The Tantrums)の初期サウンドは、懐かしさよりも、まずリズムの気持ちよさで引き込むところに魅力があります。「MoneyGrabber」は、その良さがとても分かりやすく出ている曲です。少し荒削りな演奏の熱と、ポップソングとしての聴きやすさがうまく重なっています。

初めて聴く人にもすすめやすく、すでに知っている人でも、あらためて聴くと声の掛け合いやホーンの入り方が耳に残ります。短く、勢いがあり、何度も再生したくなる。フィッツ・アンド・ザ・タントラムズを聴き始める入口としても、『Pickin’ Up The Pieces』へ進むきっかけとしても、ちょうどいい一曲です。