Janet Jackson「Rhythm Nation」
好きな曲メモ #0002

最初のビートが鳴ると、空気がすっと引き締まります。Janet Jackson「Rhythm Nation」は、明るく弾けるダンス・ポップとは少し違います。乾いたドラム、鋭く刻まれるシンセ、掛け声のようにそろうコーラス。音の輪郭が硬く、白黒の映像に映る隊列の動きまで、そのまま耳に残ります。
それでも、聴き心地は決して重くありません。リズムはしっかり身体を動かし、短いフックは一度聴くと離れません。はじめて買ったCDアルバム『Rhythm Nation 1814』の中でも、この曲のかっこよさは特別に強く残っています。
基本情報
曲名:Rhythm Nation
アーティスト:ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)
収録アルバム:『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』
リリース日:1989年9月19日
シングルリリース日:1989年10月24日
レーベル:A&Mレコード(A&M Records)
ジャンル:R&B/ソウル/ダンス・ポップ/ニュー・ジャック・スウィング
作詞・作曲:ジャネット・ジャクソン、ジェイムズ・ハリスIII(James Harris III)、テリー・ルイス(Terry Lewis)
プロデュース:ジャネット・ジャクソン、ジミー・ジャム(Jimmy Jam)、テリー・ルイス
ミュージックビデオ:ドミニク・セナ(Dominic Sena)監督
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白黒の画面に、軍服風の衣装、工場跡のようなセット。Janet Jackson「Rhythm Nation」のミュージックビデオは、最初から空気が張りつめています。ドラムの硬い響きに合わせて、腕が伸び、足が踏み込まれ、身体が鋭く止まります。音の角ばった感触が、そのまま動きになっています。
ジャネット・ジャクソンは、画面の中心にいながら、ひとりだけを大きく見せる存在ではありません。周りのダンサーと同じ動きの中に入り、隊列の芯になることで、曲の力を強くしています。腕の角度、肩の入れ方、首の動きまでそろった振付は、派手さよりも精度で見せるタイプのかっこよさです。
色を削ぎ落とした映像だからこそ、リズムと身体の動きが前に出ます。冷たく、硬く、でも踊れる。1980年代末のポップ・ミュージックの中でも、このビデオが今も強く残る理由は、その無駄のなさにあります。
Apple Music
音だけで聴くと、この曲の骨格の強さがよくわかります。ドラムは乾ききっていて、低音もむやみに膨らませません。シンセ、パーカッション、掛け声が短い単位で切り込んできて、リズムの面が硬く押し出されます。甘い余韻を残すタイプのR&Bではなく、音の角をあえて残したダンス・トラックです。
ジャネット・ジャクソンの歌も、声量でねじ伏せるものではありません。言葉をリズムの上に細かく置き、身体の動きと同じ精度でフレーズを刻んでいきます。そこにコーラスが重なると、個人の歌というより、隊列全体が声を出しているように聴こえます。ミュージックビデオを見ていなくても、あのそろったステップが音の中に立ち上がってきます。
サビは短く、太く、無駄がありません。覚えやすいフックを持ちながら、曲全体はかなり引き締まっています。1980年代末のポップスに多かった華やかなきらめきより、黒い革、金属、コンクリートの質感が前に出る曲です。聴き返すたびに、ビートの硬さとポップ・ソングとしての強さが、同じ場所で鳴っていることに驚かされます。
アップル・ミュージックで「Rhythm Nation」を聴く
おすすめポイント
「Rhythm Nation」は、イントロから音の手触りがはっきりしています。ドラムは乾き、ビートは角ばり、掛け声は短く鋭く入ってきます。音数を増やして押し切るのではなく、ひとつひとつの音を硬い面として並べていく。その隙間の詰め方が、この曲の緊張を作っています。
ダンス・ミュージックなのに、浮ついた明るさはありません。リズムは強く、身体は自然に動きますが、曲全体はずっと引き締まっています。サビも大きく広がるより、短いフレーズを何度も打ち込んでくる作りです。甘く流れず、耳に角を残したまま進んでいくところがたまりません。
ジャネット・ジャクソンの歌も、声を張り上げて押すタイプではありません。言葉をビートの上に正確に置き、細かいリズムの中で歌を刻んでいきます。そこにコーラスが重なると、ひとりの声というより、そろった足音のように聴こえます。映像を見ていなくても、あの隊列の動きが頭の中に立ち上がります。
私にとって『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』は、はじめて買ったCDアルバムです。その中でも「Rhythm Nation」は、最初に針を落としたわけでも、いちばん甘いメロディを持っていたわけでもないのに、ずっと強く残りました。硬いビート、低く抑えた声、黒と白の映像。その全部が、ポップ・ミュージックのかっこよさとして刻まれています。
この曲について
「Rhythm Nation」は、1989年のアルバム『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』を代表する曲のひとつです。前作『Control』で自分の意思を前に出したジャネット・ジャクソンは、このアルバムで視線を社会へ広げました。人種、貧困、暴力、教育。扱っている題材は重いのに、音楽は説教ではなく、まずビートで身体に入ってきます。
曲作りの大きなきっかけになったのは、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)の「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」でした。ジミー・ジャムは、ミネアポリスのレストランでこの曲を耳にしたとき、ブリッジに出てくるギターのブレイクに反応し、「Rhythm Nation」のトラックの手がかりをつかんだと語っています。スタジオへ戻ると、その2小節のギター・ループにリン・ドラムを重ね、そこから曲が形になっていきました。
だから「Rhythm Nation」には、ファンクの粘りが残っています。ただし、それは70年代ファンクをそのまま再現した音ではありません。ギター・リフの引っかかりを、乾いたドラムと硬いビートの中に置き直し、1989年のダンス・ポップとして鋭く引き締めています。懐かしさよりも、冷たさと緊張のほうが前に出るサンプリングです。
アルバム制作は、ジャネット・ジャクソン、ジミー・ジャム、テリー・ルイスを中心に、ミネアポリスのFlyte Tymeスタジオで進められました。ジミー・ジャムは、A&Mレコードの関係者をスタジオに入れず、自分たちの作りたい音に集中したと話しています。1988年冬のミネアポリスは厳しい寒さで、外に出る気にならなかったことも制作に向いていた、という話もこのアルバムらしいエピソードです。
音作りにも、その閉じた空気が出ています。ジミー・ジャムは、このアルバムには怒りやむき出しの感じ、荒れた場所に風が吹くような感覚が必要だったと語っています。ガラスの割れる音、ゴミ箱のふた、足音のような音も使われ、曲間のインタールードまで含めて、アルバム全体に硬い手触りが与えられました。「Rhythm Nation」のドラムやコーラスが冷たく響くのは、単なるアレンジの派手さではなく、アルバム全体の音の設計とつながっています。
ミュージックビデオの印象も、この曲から切り離せません。ジャネットは「Miss You Much」「The Knowledge」「Rhythm Nation」を組み込んだ短編映画を作ろうとし、レコード会社に100万ドルの予算を求めました。ジミー・ジャムは、A&M社長のギル・フリーセンに曲を聴かせるため、ジャネットのレンジローバーでマリブの海沿いを走りながら大音量で曲を流すことを提案したと語っています。その後、予算は通りました。あの白黒映像は、曲の付属品ではなく、アルバム全体の見せ方を決める大きな勝負だったのです。
『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』は、7曲の全米トップ5ヒットを生み、長編ミュージックビデオ『Rhythm Nation 1814』はグラミー賞のBest Music Video — Longformを受賞しました。英国では「Rhythm Nation」単曲がOfficial Singles Chartで最高23位を記録しています。
2020年には、アルバム『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』がアメリカ議会図書館のNational Recording Registryに登録されました。ヒット曲を並べたアルバムというだけではなく、ビート、映像、ダンス、社会的なメッセージを一枚のポップ作品としてまとめた記録として残っています。
聴く・探す
アップル・ミュージック(Apple Music)では、『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』をアルバム単位で聴けます。
「Rhythm Nation」だけでも十分に強い曲ですが、アルバムで聴くと、前後の曲とのつながりがよく見えてきます。「State of the World」や「The Knowledge」と並ぶ前半では、社会的なテーマと硬いビートがひとつの流れになっています。
アップル・ミュージックで『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』を聴く
CDやレコードで手元に置きたい場合は、アマゾン(Amazon)などで『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』を探すこともできます。配信で聴くのとは少し違い、アルバムとして手元に置くと、曲順、ジャケット、インタールードまで含めて、この時期のジャネット・ジャクソンの作り込まれた世界をより味わいやすくなります。

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まとめ
「Rhythm Nation」を聴き返すたびに、やはり最初のビートで背筋が伸びます。乾いたドラム、短く刻まれる声、隊列のようにそろうコーラス。どの音も余計に飾られていないのに、曲全体の輪郭はとても強く残ります。
ダンス・ポップとして身体を動かす力がありながら、軽く流れていかないところが、この曲のいちばん好きなところです。冷たく、硬く、でも耳から離れない。『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』をはじめて買ったCDアルバムとして聴いたときの衝撃は、今もこの曲のビートの中に残っています。
