Music recorded in January 1910

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Music recorded in January 1910

1910年1月は、政治・技術・社会運動・災害・国際法が同時に動いた月でした。グレートブリテン及びアイルランド連合王国では、グレートブリテン及びアイルランド連合王国議会(Parliament of the United Kingdom of Great Britain and Ireland)下院総選挙の投票が1月15日に始まり、ハーバート・ヘンリー・アスキス(Herbert Henry Asquith, 1852–1928)政権は「人民予算」をめぐる憲政危機のなかで信任を問いました。同じ選挙戦の前後には女性参政権請願運動も展開され、参政権問題が議会政治の争点として可視化されました。1月12日–13日にはメトロポリタン歌劇場(Metropolitan Opera House)でリー・ド・フォレスト(Lee de Forest, 1873–1961)による無線送信実験が行われ、劇場外の聴衆が上演を聴取しました。天文学では、1910年1月の大彗星(Great January Comet of 1910 (1910 A1))が1月13日に裸眼彗星として報告され、17日に近日点に達しました。1月下旬にはセーヌ川の大洪水がパリを直撃し、都市交通と経済活動を大きく麻痺させました。さらに1月26日には、第二回万国平和会議で採択された「陸戦の法規慣例に関する条約(Convention (IV) respecting the Laws and Customs of War on Land and its Annex: Regulations concerning the Laws and Customs of War on Land)」など1907年のハーグ条約群の一部が発効し、20世紀初頭の国際秩序整備が一段進みました。

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1910年1月の録音に関する情報のまとめ

1910年1月に確認できる録音関連情報では、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)が年初の販売戦略をエジソン・アンベロール・レコード(Edison Amberol Record)と新型アンベローラ(Amberola)に集中させていたことが明瞭です。『The Edison Phonograph Monthly』1910年1月号では、レオ・スレザーク(Leo Slezak, 1873–1946)のオペラ録音を前面に押し出した販促、新録音人材の告知、外国語アンベロール録音の国内カタログ統合、そして4分用・2分用再生機の過渡期対応が並行して扱われています。したがって、この月は単なる新譜紹介の月というより、4分シリンダー時代の拡張と、録音レパートリーの国際化を販売現場へ浸透させる転換点として見ることができます。

レオ・スレザーク

『The Edison Phonograph Monthly』1910年1月号では、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)がレオ・スレザーク(Leo Slezak, 1873–1946)を年初最大級の訴求対象として扱っていたことが確認できます。同号は、1909年12月1日に発売済みの10点のレオ・スレザーク(Leo Slezak, 1873–1946)録音を、1910年1月中に新聞広告、店頭展示、コンサートで積極的に売り込むよう販売店へ求めており、エジソン・グランド・オペラ・アンベロール・レコード(Edison Grand Opera Amberol Record)が高級音楽市場で重要商品になっていたことを示しています。

アンベローラと再生機の過渡期

1910年1月号では、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)がアンベローラ(Amberola)の供給不足に直面しながらも、その普及を年初の最重要課題としていたことが読み取れます。同時に、出荷済みのアンベローラ(Amberola)には4分用のモデルL再生機のみが付属し、2分盤と4分盤の両用を可能にする新型再生機はまだ十分供給できていないと説明されており、再生機構の移行期が販売面の制約になっていました。

新録音人材

1910年1月号の「New Edison Record Talent」では、ポーク・ミラー(Polk Miller, 1844–1913)とオールド・サウス・カルテット、ジャック・プレザンツ(Jack Pleasants, 生没年不明)、マリー・ドレスラー(Marie Dressler, 1868–1934)、H・ベン・ヘントン(H. Benne Henton, 生没年不明)らが新戦力として紹介されています。ここで重要なのは、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)がオペラだけでなく、コメディー、黒人霊歌・南部レパートリー、サクソフォン独奏といった多様な録音分野を同時に拡張しようとしていた点です。

外国語アンベロール録音の国内カタログ化

1910年1月号では、次の国内総合カタログに、1910年1月までに発行されたイギリス、ドイツ、フランス、メキシコ、アルゼンチン、ポルトガル、フィリピンの外国語アンベロール録音を組み込む方針が示されています。これは、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)がアメリカ国内市場向けカタログのなかで外国語・海外系列録音を可視化し、4分シリンダーの国際的レパートリーを通常商品として流通させようとしていたことを示す重要な動きです。