Music recorded in January 1911
1911年1月は、公的制度、都市治安、交通技術、舞台文化が同時に動いた月でした。1月1日にはアメリカ合衆国で郵便貯金制度(Postal Savings System)が始まり、銀行不信や移民の送金・貯蓄需要に応える新しい公的金融の仕組みが動き出しました。4日にはロンドンでシドニー街包囲戦(Siege of Sidney Street)が起こり、都市警察と武装急進派の衝突が大きく報道されました。7日にはウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)がアメリカ合衆国議会(United States Congress)に阿片規制強化を求める特別教書を送り、国際的な薬物統制が政治課題として前景化しました。18日にはユージーン・バートン・イーリー(Eugene Burton Ely, 1886–1911)がアメリカ合衆国海軍装甲巡洋艦ペンシルベニア(USS Pennsylvania)への着艦を成功させ、21日にはモンテカルロ自動車ラリー(Rallye Automobile Monte-Carlo)が始まりました。さらに26日にはグレン・ハモンド・カーティス(Glenn Hammond Curtiss, 1878–1930)が水上機の実用化を印象づけ、同日ドレスデンではリヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864–1949)とフーゴー・フォン・ホーフマンスタール(Hugo von Hofmannsthal, 1874–1929)による《ばらの騎士》が初演され、1911年という年の新しさが技術と芸術の両面から示されました。
Confirmed recordings this month: 0
1911年1月の録音に関する情報のまとめ
1911年1月の録音界では、当月のエジソン系資料に新年商戦後の補充、新譜の予告、外国録音の拡張がはっきり表れています。『Edison Phonograph Monthly』1911年1月号は、3月発売予定のエジソン・アンベロールとエジソン・スタンダードの新譜一覧を掲載し、アンベロールの1911年1月分は1911年2月25日発売・1911年3月カタログ掲載という販売サイクルで整理されていました。また同号では、外国録音の販促強化と新しい声楽人材の訴求が並行して進められており、1911年初頭の市場が国内新譜だけでなく、国際的レパートリーの厚みでも競争していたことが確認できます。
3月発売予定の新譜一覧
1911年1月号の重要点は、3月発売予定新譜の予告がまとまった形で示されたことです。誌面では、1911年2月25日解禁の3月新譜としてエジソン・アンベロールを掲げ、冒頭にニューヨーク・ミリタリー・バンド(New York Military Band)による「Napoleon’s Last Charge」を置いています。また同号は、レオン・ライス(Leon Rice, 生没年不明)の初登場録音を3月リストの第10,479番「When the Roses Bloom」として紹介しており、新譜一覧そのものが新規アーティスト投入の告知媒体にもなっていました。
- https://archive.org/download/edisonphonograph09moor/edisonphonograph09moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1911-Vol-9.pdf
外国録音の拡張
1911年1月号は、ヨハン・シュトラウス楽団とギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団という二つの著名な欧州楽団の録音を、販売上の重要資産として前面に出しました。本文は、1911年1月補遺までを含む一覧として、ヨハン・シュトラウス楽団の録音に加え、フランス側カタログにはギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の録音が200点以上あると説明しており、外国録音が単なる添え物ではなく、継続的に拡充される主要商品群だったことを示しています。
- https://archive.org/download/edisonphonograph09moor/edisonphonograph09moor.pdf
- https://cylinders.library.ucsb.edu/detail.php?query=990026675050203776&query_type=mms_id
- https://cylinders.library.ucsb.edu/detail.php?query=990025441440203776&query_type=mms_id
新しい声楽人材の訴求
同じ1911年1月号では、レオン・ライス(Leon Rice, 生没年不明)を新顔として押し出す一方、エリザベス・スペンサー(Elizabeth Spencer, 1871–1938)についてはエジソン専属契約下の歌手として強く訴求しています。誌面は、レオン・ライスの録音価値を将来性込みで評価しつつ、エリザベス・スペンサーを「exclusive Edison Artist」と明記しており、録音会社が1911年の段階で曲目だけでなく専属歌手の存在自体を商品力として体系的に売り出していたことがわかります。
- https://archive.org/download/edisonphonograph09moor/edisonphonograph09moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1911-Vol-9.pdf
