Music recorded in August 1912

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Music recorded in August 1912

1912年8月は、政治・社会・文化の各面で転機が重なった月でした。アメリカ合衆国では8月5日–7日に進歩党(Progressive Party)の全国大会が開かれ、セオドア・ローズヴェルト(Theodore Roosevelt, 1858–1919)が大統領候補に指名され、女性参政権を含む改革路線が強く打ち出されました。中米のニカラグアでは8月4日にアメリカ合衆国海軍(United States Navy)の部隊が首都へ到着し、同月後半にかけて介入が拡大しました。8月24日にはアラスカ準州(Territory of Alaska)が成立し、北太平洋側の統治体制が改められました。文化面では8月13日にジュール・マスネ(Jules Massenet, 1842–1912)が没し、フランス歌劇の一時代に区切りがつきました。社会史では救世軍(The Salvation Army)創設者ウィリアム・ブース(William Booth, 1829–1912)が8月20日に死去しました。さらに同月、アメリカ合衆国司法省(United States Department of Justice)がモーション・ピクチャー・パテンツ・カンパニー(Motion Picture Patents Company)を反トラスト法違反で提訴し、映画産業の構造変化を促す節目ともなりました。

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1912年8月の録音に関する情報のまとめ

1912年8月の録音関連資料を見ると、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、家庭内録音の拡張と4分用機械の販路強化を同時に進めていました。8月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー(Edison Phonograph Monthly)』では、8月1日開始の新しいホーム録音装置、アンベローラIIIの在庫販売開始、新しい歌手陣の紹介、さらに1912年10月向け国内新譜の告知が並んでいます。ここからは、同月のエジソンが「家庭録音」「4分用機械」「新しい声楽家の投入」を柱に、秋商戦へ向けた準備を進めていたことが確認できます。

新しい4分録音機と手動シェービング機

1912年8月1日、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)は、新しいホーム録音装置の発送開始を告知しました。構成は4分用録音機、ブランク3本、手動シェービング機で、従来は2分用中心だった家庭録音を4分用へ拡張する意図が明確です。記事では、利用者が販売店に削り直しを依頼しなくても自宅で再使用できる点を大きな利点として強調しており、価格は一式8ドル、内訳は手動シェービング機4.50ドル、4分用録音機3ドル、シェービング済みブランク1本20セントでした。オペラ機とアンベローラ向けには専用録音腕1.25ドル、ホーン50セントも用意されていました。

アンベローラIII

アンベローラIIIは、ホーンレス機を比較的手の届きやすい価格で求めたい需要に応える新機種として扱われました。1912年8月号は、この機種がすでに卸売業者在庫から入手可能になったと明記しています。機構はオペラ・モデルと同系で、移動マンドレル、固定式リプロデューサー、自動停止装置を備え、モデルLリプロデューサーによって4分用レコード専用とされました。仕上げはマホガニーと金色オークまたは風化オークで、価格はアメリカ合衆国で125ドル、カナダで150ドルでした。

新しい歌手陣と10月向け新譜告知

1912年8月号は、新しいエジソン・アーティストとしてアナ・ケース(Anna Case, 1889–1984)とマーガレット・キーズ(Margaret Keyes, 生没年不明)を前面に出しました。あわせて同号の「New Edison Records」では1912年10月向け国内新譜が告知され、アナ・ケースの《Rigoletto—Dearest Name》、マーガレット・キーズの《O Happy Day, O Day So Dear》、さらにキャスリーン・パーロウ(Kathleen Parlow, 1890–1963)による《Nocturne E Flat》など、声楽と器楽の高級路線が目立ちます。一方で《La Marseillaise》や《Waiting for the Robert E. Lee》も並んでおり、軍楽、大衆歌、芸術曲を横断する編成で秋の新譜を組んでいたことが確認できます。