Music recorded in July 1897
1897年7月は、北米ではカナダ・ユーコン準州の金鉱発見が報道を通じて一気に広まり、人々の移動と投機熱が社会を揺さぶった月として記憶されます。アメリカ合衆国では高関税を柱とする関税法が成立し、国際貿易と産業保護をめぐる政治判断が経済の方向性を色濃くしました。ヨーロッパでは、ロンドンのオールイングランド・ローン・テニス・クラブ(All England Lawn Tennis Club)でウィンブルドン選手権が会期末を迎え、近代スポーツ文化の定着を示しました。北極圏ではサロモン・アウグスト・アンドレー(Salomon August Andrée, 1854–1897)が気球による北極到達を目指して出発し、科学技術への期待とリスクの同居が象徴的に表れました。同時期、ストックホルム総合芸術及び産業博覧会(General Art and Industrial Exposition of Stockholm)やテネシー州制100周年記念万国博覧会(Tennessee Centennial and International Exposition)が会期中で、都市と産業、メディア技術を見せる博覧会が各地で「未来像」を競っていました。
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1897年7月の録音に関する情報のまとめ
1897年7月は、博覧会などの公開空間で新しいメディア技術が注目される一方、円盤式録音(ディスク)を含む商業録音が具体的な実演・複製・流通の局面に入りつつあった時期として位置づけられます。以下では、1897年7月に関連づけて確認できる録音トピックを整理します。
ストックホルム総合芸術及び産業博覧会と「音声を記録して残す」実演
ストックホルム総合芸術及び産業博覧会(General Art and Industrial Exposition of Stockholm)は1897年5月15日–10月3日に開催され、当時の新しいメディア技術としてフィルムやフォノグラフがテーマの一つに含まれていたことが確認できます。また、開会式典は初期の録音で記録され、スウェーデン国王オスカル2世(Oscar II, 1829–1907)の開会演説を含む音声記録が残っている旨が記されています。
- https://en.wikipedia.org/wiki/General_Art_and_Industrial_Exposition_of_Stockholm
- https://www.cambridge.org/core/journals/popular-music/article/technology-and-its-vicissitudes-playing-the-gramophone-in-sweden-19031945/AD69BCE09F20A0BE591FE64CD2F2B867
アメリカ合衆国でのベルリーナー録音(円盤)と1897年7月の録音日付例
アメリカ議会図書館(Library of Congress)のエミール・ベルリーナー関連コレクション(Emile Berliner collection)の記述には、1897年7月1日にニューヨークで録音されたディスク(演奏者は「不詳のオーケストラ」)が含まれることが示されています。1897年当時、円盤録音が「日付を伴う制作物」として蓄積されていた事例の一つとして扱えます。
北米の「金鉱ラッシュ報道」と録音産業の同時代的環境
1897年7月、蒸気船ポートランド号(Portland)がシアトルに到着し、クロンダイク川流域の金の到来が大規模な金鉱ラッシュ(いわゆる「スタンピード」)を引き起こした経緯が整理されています。同時代の大衆娯楽市場は、この種の急激な社会熱(ニュース、見世物、歌、語り物)と強く結びついていましたが、1897年7月の時点で「金鉱ラッシュそのものを直接記録した特定の録音」を本項の参照資料だけで確定することはできません。ここでは、録音が消費される社会環境(ニュースが人を動かし、都市に人波と資本を呼び込む状況)として位置づけます。
アメリカ合衆国の高関税政策と録音ビジネスの市況背景
ウィリアム・マッキンリー(William McKinley, 1843–1901)政権下で、1897年7月24日にディングリー法(Dingley Act)が成立したことが確認できます。これは広範な輸入品に高い関税を課す枠組みで、1890年代後半の産業保護と国内市場重視の政策環境を示します。録音産業に限った直接効果を本項の参照資料だけで断定はできませんが、製造・流通を含む消費財市場の前提条件として同時代背景に置けます。
- https://millercenter.org/president/william-mckinley/key-events
- https://fraser.stlouisfed.org/title/tariff-1897-dingley-tariff-5862/fulltext
- https://en.wikipedia.org/wiki/Dingley_Act
