Music recorded in September 1899
1899年9月は、国際関係と社会制度の転換が同時進行した月でした。デンマークでは1899年9月5日に労使間の「九月協約(September Compromise)」が成立し、以後の集団交渉の枠組みを形づくる契機となりました。東アジアをめぐっては、ジョン・ヘイ(John Hay, 1838–1905)が1899年9月6日に「門戸開放通牒(Open Door Notes)」を列強に送付し、中国市場に関する方針を打ち出しました。フランスではドレフュス事件(Dreyfus affair)の渦中、アルフレド・ドレフュス(Alfred Dreyfus, 1859–1935)が1899年9月9日にレンヌ軍法会議(Rennes court-martial)で有罪評決を受け、続いてエミール・ルーベ(Émile Loubet, 1838–1929)が1899年9月19日に特赦を与えました。探検の分野では、ハルフォード・ジョン・マッキンダー(Halford John Mackinder, 1861–1947)が1899年9月13日にケニア山(Mount Kenya)最高峰への初登頂を成し遂げています。同じ9月、ニューヨークではヘンリー・ヘイル・ブリス(Henry Hale Bliss, 生没年不明)が1899年9月13日に自動車に衝突され、翌日に死亡した事例が報じられ、自動車交通が都市生活へ与える影響を象徴しました。さらに大西洋ではサン・シリアコ・ハリケーン(San Ciriaco hurricane)が1899年9月上旬まで継続し、災害が長期化しうる現実も突きつけています。
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1899年9月の録音に関する情報のまとめ
1899年9月は、録音物そのものの新譜供給と並行して、再生音量や再生追従性(溝を正確にトレースする能力)をめぐる改良・競争が強く意識されていたことが、同時代資料から確認できます。雑誌『ザ・フォノスコープ』(The Phonoscope)1899年9月号は、録音・再生技術の「最近の発展」を特集し、新レコード情報や機器広告をまとめて掲載しています。また、トーマス・アルバ・エジソン(Thomas Alva Edison, 1847–1931)は1899年9月21日に蓄音機(phonograph)の改良に関する特許を出願しており、溝の波形をより正確に追従する再生機構が当時の重要テーマであったことが読み取れます。
トーマス・アルバ・エジソンの特許出願(1899年9月21日)
トーマス・アルバ・エジソン(Thomas Alva Edison, 1847–1931)は1899年9月21日付で「蓄音機(phonograph)」に関する特許を出願しており、溝に刻まれた波形(基音・倍音を含む)をより正確に追従するための再生器(reproducing device)の形状・当たり方が主題となっています。これは、音量だけでなく、歪みや情報落ちを抑えた再生忠実度の改善を狙う設計課題が、1899年の時点で特許文書として明確に扱われていた事例です。
- https://patents.google.com/patent/US652457
- https://edison.sas.rutgers.edu/images/patents/00652457.PDF
ザ・フォノスコープが報じた録音再生技術の大音量化
『ザ・フォノスコープ』(The Phonoscope)1899年9月号は、録音・再生技術の発展を論じる記事を掲げ、近い時期に「音量」と「原音への忠実さ」の両面で大きな前進があったと説明しています。記事中では、従来型のグラフォフォン(Graphophone)と比較して、より大きな円筒タブレットを用いる「グランド」系機種で記録面の表面速度を高めることが、結果として大音量化に結びつく、という趣旨の記述が確認できます。
ザ・フォノスコープの新レコード欄(米国主要各社の情報集約)
『ザ・フォノスコープ』(The Phonoscope)1899年9月号は、「トーキングマシン(talking machine)向け新レコード」欄を設け、米国の主要トーキングマシン会社から寄せられたリストをもとに新レコード情報を集約して掲載しています。同号はあわせて「最新の流行歌」リストも掲げており、録音物(records)と出版楽曲(songs)の動きが同一媒体内で並走して扱われていたことが確認できます。
コロンビア・フォノグラフ・カンパニーの小型ワックスディスク式機器の紹介
『ザ・フォノスコープ』(The Phonoscope)1899年9月号のトレード欄には、コロンビア・フォノグラフ・カンパニー(Columbia Phonograph Company)が小型のワックスディスク(wax disks)を用いる「玩具的グラモフォン(toy Gramophone)」を提示している旨が記されており、サウンドボックス(sound box)が中心から外周へ移動する方式である点まで説明されています。同誌は実機を聴いていないため評価は控える、という態度も併記しており、当時の新機種情報が必ずしもレビューを伴わず流通していたことも分かります。
