Music recorded in August 1908

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Music recorded in August 1908

1908年8月は、社会制度、航空技術、都市災害、映像文化、国際関係、人種問題が同時に大きく動いた月でした。8月1日、連合王国ではオールド・エイジ・ペンションズ法 1908年(Old Age Pensions Act 1908)が成立し、高齢者年金制度の実施枠組みが整いました。同日、カナダのブリティッシュ・コロンビア州フェルニーでは大火が発生し、市街地は短時間で壊滅的被害を受けました。8月8日にはウィルバー・ライト(Wilbur Wright, 1867–1912)がフランスのル・マンで欧州初の公開飛行を行い、動力飛行の信頼性を広く示しました。8月14日–16日にはアメリカ合衆国イリノイ州スプリングフィールドで大規模な人種暴動が起こり、黒人住民の家屋や商店が襲撃され、この事件は後の全米黒人地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People)創設の契機の一つとなりました。8月17日にはフランスで『ファンタスマゴリー』(Fantasmagorie)が上映され、映画表現の新段階を印象づけました。さらに8月20日にはアメリカ合衆国大西洋艦隊(United States Atlantic Fleet)がシドニー港に入港し、大規模な歓迎のなかで海軍力と対外関係を誇示しました。

Confirmed recordings this month: 0

1908年8月の録音に関する情報のまとめ

1908年8月の録音界では、二分シリンダー中心の市場が、長時間再生を前提とする新方式へ大きく傾き始めたことが確認できます。トーマス・エジソン(Thomas Edison, 1847–1931)陣営では、四分シリンダーであるアンベロールの一般発売を同年10月1日に控え、録音制作、販売店教育、宣材配布が一斉に進みました。いっぽうで、1908年アメリカ合衆国大統領選挙に合わせたウィリアム・ジェニングス・ブライアン(William Jennings Bryan, 1860–1925)とウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)の演説録音が強い話題を呼び、録音メディアが政治宣伝の実用品として用いられる段階に入っていたことも重要です。資料上、1908年8月は新方式の本格発売前夜でありながら、録音の内容、売り方、業界秩序が同時に組み替えられていた転換月でした。

アンベロール登場前夜

1908年8月は、エジソンの四分シリンダーであるアンベロールの実用化が、録音現場と販売計画の両面で具体化した時期でした。後年の整理資料では、四分シリンダー録音は1908年春の終わりまでに नियमित化しており、1908年7月30日と8月5日・20日・25日にはカル・スチュワート(Cal Stewart, 1856–1919)の四分セッションが確認できます。さらに1908年8月1日付の販売通達では、10月1日から新しい長時間レコードと既存機向けアタッチメントを導入する方針が打ち出されており、8月は試作段階ではなく、発売準備段階に入っていたと見てよい月です。

タフト演説レコードの8月出荷

1908年8月の時事録音として最も目立つのは、ウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)の演説レコードです。資料では、トーマス・エジソン(Thomas Edison, 1847–1931)陣営がタフトの受諾演説の主要部分を12本のレコードにまとめ、1908年8月20日ごろからオレンジ工場より出荷すると告知していました。これにより、家庭や店舗で大統領候補本人の声を比較して聞くという、新しい政治的音声消費が成立していたことがわかります。

販促物の集中投入と選挙レコード商戦

1908年8月は、新録音そのものだけでなく、それを売るための販促体制が整えられた月でもありました。資料では、アンベロール用の説明ビラ、店頭ハンガー、既存機を二分・四分兼用にするアタッチメント告知物、さらにタフト録音用の四ページ補遺と店頭掲示物が準備され、一般配布向けの小冊子類も1908年8月20日にディーラーへ発送されたことが確認できます。録音商品が単体で並ぶのではなく、選挙報道と店頭広告を連動させて売られる段階に入っていた点が、1908年8月の特徴です。