Music recorded in July 1909
1909年7月は、政治・技術・社会不安が同時進行した月でした。ペルシアでは立憲派がテヘランへ進軍し、立憲体制の再建へ向けた大きな転換が起こりました。航空ではルイ・ブレリオ(Louis Blériot, 1872–1936)が7月25日に英仏海峡横断飛行を成功させ、飛行機が実用的な長距離移動手段になり得ることを世界に示しました。スペインのバルセロナでは7月末に徴兵とモロッコ政策への反発が噴出し、「悲劇の一週間」と呼ばれる騒乱に発展しました。軍事技術の面では、ウィルバー・ライト(Wilbur Wright, 1867–1912)とオーヴィル・ライト(Orville Wright, 1871–1948)が開発した1909年型軍用機がアメリカ陸軍に引き渡され、航空機の軍事利用が制度として動き始めました。海上交通では英国汽船ワラタ号が南アフリカ沖で消息を絶ち、近代交通の進歩と危うさが同じ月に可視化されました。
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1909年7月の録音に関する情報のまとめ
1909年7月の録音界では、円筒レコード市場がなお拡張局面にあり、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)が新しい専属人材の確保、外国語録音の拡充、そしてアンベロル・レコード(Amberol Records)の高級化を同時に進めていたことが確認できます。7月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』(Edison Phonograph Monthly)では、ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854–1932)の楽団契約、アンベロルのグランド・オペラ計画、アルゼンチン向けスペイン語録音、外国語カタログの再編などがまとまって報じられており、1909年後半へ向けた攻勢の準備段階がはっきり見えます。
スーザ楽団のエジソン録音契約
1909年7月号では、ジョン・フィリップ・スーザ(John Philip Sousa, 1854–1932)がナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)と契約し、同楽団が円筒レコードを独占的に録音すると告知されました。記事では実際の録音開始は8月以降、発売はさらに2〜3か月後になるとされており、7月時点では発表先行の大型ニュースでした。6月にヴィクター・ハーバート(Victor Herbert, 1859–1924)の契約が発表された直後であり、1909年夏のエジソン陣営が有力音楽家の囲い込みを急いでいたことが分かります。
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
アンベロルのグランド・オペラ計画
同じ7月号では、第一級の歌手によるアンベロル・レコード(Amberol Records)のグランド・オペラ録音を将来計画として公表しました。発売時期は少なくとも秋以降とされ、既存の専属契約のため直ちに確保できない歌手がいることも説明されています。さらに、9月向けの通常リストにはイタリア語アンベロル3点もすでに含まれており、4分円筒を大衆曲中心の商品から高級声楽レパートリーへ広げようとする方針が、1909年7月の段階で明確に示されていました。
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
アルゼンチン向けスペイン語録音の追加
1909年7月には、アルゼンチンとウルグアイの代表的歌曲を中心とする新しいスペイン語録音群が公表されました。記事によれば、この新録音群はエジソン・スタンダード・レコード(Edison Standard Records)とアンベロル・レコード(Amberol Records)の双方で構成され、二重唱、独唱、さらに両国の国歌まで含む内容でした。録音はニューヨークで行われ、アメリカ国内だけでなく海外でも直ちに販売するとされており、南米向け市場の重視がうかがえます。
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
外国語カタログの拡充
1909年7月号では、外国語録音の販売体制も整理され、複数の専用カタログと補助サプリメントが案内されました。とくに英国録音については、英国盤カタログにアンベロル30点とスタンダード659点が含まれると説明され、直近3か月で制作された英国アンベロルはアメリカ製に劣らない品質だと強調されています。これは1909年7月の時点で、エジソンが国内市場だけでなく移民社会と海外市場の双方を視野に入れて録音事業を再編していたことを示す動きです。
- https://archive.org/stream/edisonphonograph07moor/edisonphonograph07moor_djvu.txt
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1909-Vol-7.pdf
