Music recorded in March 1909

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Music recorded in March 1909

1909年3月の世界は、政権交代、外交危機の収束、科学探検の始動、近代美術の展開、大型工業計画の開始が同時進行した月でした。3月4日にはウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)がアメリカ合衆国大統領に就任し、同月にはボスニア危機でドイツ帝国(German Empire)の圧力を受けたロシア帝国(Russian Empire)がセルビア王国(Kingdom of Serbia)支援を後退させ、危機はひとまず収束へ向かいました。3月23日にはセオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt, 1858–1919)がスミソニアン協会(Smithsonian Institution)支援の東アフリカ遠征に出発し、標本収集を通じた自然史研究の拡大を象徴しました。文化面ではアンリ・マティス(Henri Matisse, 1869–1954)がセルゲイ・シチューキン(Sergei Shchukin, 1854–1936)から大画面装飾画《ダンス》《音楽》の制作依頼を受け、20世紀絵画史の重要作へつながる動きが始まります。さらに3月31日、ベルファストではハーランド・アンド・ウルフ(Harland & Wolff)がタイタニック(RMS Titanic)の建造を開始し、巨大客船時代の象徴が具体的なかたちを取り始めました。

Confirmed recordings this month: 0

1909年3月の録音に関する情報のまとめ

1909年3月の録音業界では、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)が、従来の2分用スタンダード盤と4分用アンバーオール盤の両立をどう進めるかを重要課題として扱っていました。3月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』では、月ごとの新譜数の配分が議論される一方で、5月発売予定の新譜一覧が公表され、4分用の長尺録音と2分用の既存需要を並行して維持する姿勢が明確に示されています。また同号にはボヘミア語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポーランド語、スウェーデン語の新しい外国語録音一覧も掲載されており、英語圏外の市場や移民コミュニティ向けの録音供給が拡大していたことも確認できます。3月そのものの具体的な録音日としては、後年のディスコグラフィーで、フレデリック・ガンスター(Frederick Gunster, 生没年不明)の録音が1909年3月16日にニューヨークで行われたと整理されており、春から初夏にかけての発売へ向けた制作がこの時期に進んでいたことがわかります。

アンバーオールとスタンダードの併売方針

1909年3月号では、毎月どれだけの新しいスタンダード盤とアンバーオール盤を出すべきかが「難しい問題」として扱われています。スタンダード盤を月10点程度まで減らすべきだという意見がある一方、まだ4分用アタッチメントを持たない利用者に対しては月20点未満では不公平だという見方も示されました。これに対し、アンバーオール盤については少なくとも月20点の新譜投入に異論がないと記されており、1909年3月は2分用利用者を維持しつつ4分用長尺録音を拡大していく移行期の只中にあったといえます。

5月分新譜の告知

1909年3月号には、5月分として発売予定のスタンダード盤とアンバーオール盤の新譜一覧が掲載されました。アンバーオール盤では、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770–1827)の《エグモント》序曲(Egmont Overture)をエジソン・コンサート・バンド(Edison Concert Band)が演奏した第155番、ディグビー・ベル(Digby Bell, 1847–1917)による第156番《The Tough Kid on the Right Field Fence》、メイベル・マッキンリー(Mabel McKinley, 1872–1946)の第157番《My Rancho Maid》、エドワード・ミーカー(Edward Meeker, 1873–1937)の第158番《Clancy’s Wooden Wedding》、バイロン・G・ハーラン(Byron G. Harlan, 1861–1936)らによる第159番《You’re a Grand Old Bell》、アメリカ海兵隊軍楽隊(United States Marine Band)による第160番《The Bachelors Waltz》などが並びます。スタンダード盤でも、カル・スチュアート(Cal Stewart, 1856–1919)の《Uncle Josh at a Baseball Game》や、アメリカ海兵隊軍楽隊(United States Marine Band)の《Thomas Jefferson March》などが5月分新譜として告知されていました。

外国語録音の拡張

1909年3月号の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』には、ボヘミア語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポーランド語、スウェーデン語の新録音一覧が掲載されました。さらに1909年6月号では、3月号掲載分として、ボヘミア語10点、フランス語52点、ドイツ語29点、イタリア語25点、ポーランド語8点、スウェーデン語18点が整理されています。これは、ナショナル・フォノグラフ・カンパニー(National Phonograph Company)が1909年春の段階で、英語録音だけでなく多言語市場を重要な販売先として認識し、録音供給を体系的に広げていたことを示す材料です。

3月に確認できる実際の録音日

1909年3月そのものの具体的な録音日として現時点で確認しやすいのは、後年の総合ディスコグラフィーに掲載されたアンバーオール第167番です。この録音はフレデリック・ガンスター(Frederick Gunster, 生没年不明)による《Where Is My Wandering Boy Tonight?》で、ニューヨークにおいて1909年3月16日に録音されたと整理されています。一方で、同じ5月分新譜に入る第156番、第157番、第160番などは1909年1月から2月頃の録音とみられており、3月号に掲載された新譜群の多くが、数週間から数か月前の録音素材を基礎に編成されていたこともうかがえます。