Music recorded in May 1909

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Music recorded in May 1909

1909年5月は、科学・文化・社会運動・スポーツがそれぞれ別の方向から近代世界の輪郭を押し広げた月だった。5月7日にはアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein, 1879–1955)がチューリヒ大学の理論物理学職に任命され、学界での本格的な地位を得た。13日にはミラノ発の第1回ジロ・デ・イタリア(Giro d’Italia)が始まり、自転車競技は新聞文化と結びついた大衆的イベントとして新しい段階に入る。17日にはセルゲイ・ディアギレフ(Serge Diaghilev, 1872–1929)率いるバレエ・リュス(Ballets Russes)がパリのシャトレ座で注目を集め、西欧の舞台芸術に鮮烈な刺激を与えた。29日には飛行船LZ 5の耐久飛行と事故が硬式飛行船の可能性と危険性を同時に印象づけ、31日にニューヨークで開かれた全国黒人会議(National Negro Conference)は翌年の全米有色人種地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People)へつながる重要な節目となった。さらにモアハウス彗星(Comet Morehouse)はこの月まで観測され、変動する尾の姿で当時の天文学に強い印象を残している。

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1909年5月の録音に関する情報のまとめ

1909年5月の録音界では、エジソンの4分アンベロールを中心とする商品拡張がいっそう具体化した。『Edison Phonograph Monthly』1909年5月号には、スペイン語圏向けレパートリーの新制作、新しい演者の導入、1909年7月発売分の先行告知が同時に現れており、この月が国内向け月報であるだけでなく、海外市場と将来発売計画を一体で動かしていた時期だったことがわかる。販売面でもアンベロールの売上が標準盤に迫っていたと報告されており、長時間録音形式が急速に普及段階へ入っていたことが確認できる。

1909年5月号で確認できる録音関連の主要項目

1909年5月号の『Edison Phonograph Monthly』では、「Spanish Amberol Records」「New Edison Talent」「Advance List of Edison Standard and Edison Amberol Records for July, 1909」が並列して掲載されている。これは1909年5月が、海外向け録音、人材補強、翌月以降の発売準備を同時進行で進めていた月であったことを示している。

スペイン語圏向けアンベロール録音の拡張

同号は、ニューヨーク録音所でスペイン市場向けのアンベロール録音群を制作したと伝えている。内容は、14曲のスペイン語フラメンコ録音、12曲のプエルトリコ作品、さらにジョセフ・ラミレス(Joseph Ramirez, 生没年不明)によるバンドゥリア独奏4曲に及び、ローラ・ラ・フラメンカ(Lola la Flamenca, 生没年不明)、グラシア・ロペス(Gracia Lopez, 生没年不明)、ホルヘ・H・サントーニ(Jorge H. Santoni, 生没年不明)らの名が挙げられている。1909年5月には、ヒスパニック系レパートリーの拡充がすでに明白な事実として確認できる。

新しい演者と団体の導入

「New Edison Talent」欄では、ウィリアム・H・サンテルマン(William H. Santelmann, 生没年不明)指揮のアメリカ合衆国海兵隊軍楽隊(United States Marine Band)と、グレース・キャメロン(Grace Cameron, 生没年不明)が新しい顔ぶれとして掲げられている。さらに同じ5月号の7月発売予告では、グレース・キャメロンの《Help! Help! Help! I’m Falling In Love》が商品化予定として記載されており、この月の「新演者紹介」が単なる宣伝ではなく、実際の発売計画と直結していたことがわかる。

アンベロール販売の急伸

「Selling the Goods」欄では、アンベロールの売上が急速に伸び、前月の販売が標準エジソン・レコードにかなり近づいたと報告されている。1908年秋に登場した4分形式が、1909年5月の段階で既存の2分形式に肉薄し始めていたことを示す一次的証言であり、この月の録音市場を考えるうえで重要である。

1909年7月発売分の先行告知と注文日程

1909年5月号には、7月発売分の標準盤・アンベロールの先行リストが掲載され、ジョッバー向け到着目標を1909年6月25日以前、一般販売解禁を1909年6月25日午前8時としていた。加えて、販売側には1909年5月10日までの発注が求められており、5月の段階でおよそ1か月先の発売計画が厳密な日程管理のもとで運用されていたことが確認できる。具体例として、エジソン・コンサート・バンド(Edison Concert Band)の《The Peacock》や、グレース・キャメロンの《Help! Help! Help! I’m Falling In Love》がこの時点で告知されている。