Music recorded in September 1910
1910年9月は、宗教・教育・航空・文化の各分野で節目が続いた月です。1日には教皇ピウス10世(Pius X, 1835–1914)が自発教令サクロールム・アンティスティトゥム(Sacrorum antistitum)を公布し、カトリック教会の反モダニズム政策をさらに制度化しました。メキシコでは独立100周年祝典が月を通じて展開し、16日に独立記念塔(Monumento a la Independencia)が披露され、22日には国立メキシコ大学(Universidad Nacional de México)が正式に発足しました。航空分野では、ハーバード=ボストン航空大会(Harvard-Boston Aero Meet)に象徴される飛行熱が続くなか、16日に米国女性による初の公認単独飛行が実現し、29日にはシカゴとスプリングフィールドを結ぶ192マイル飛行が米国距離記録となりました。美術界では同じ29日にウィンスロー・ホーマー(Winslow Homer, 1836–1910)が没し、19世紀アメリカ絵画を代表する一つの時代が閉じました。
Confirmed recordings this month: 0
1910年9月の録音に関する情報のまとめ
1910年9月の録音関連では、エジソン陣営が四分録音のアンベロールを軸に、グランド・オペラ、ポピュラー、民族語録音、機械改良を同時に押し出していたことが確認できます。7月号に掲載された「1910年9月リスト」には、グランド・オペラ新譜と一般アンベロール/スタンダード新譜が並び、9月号では中国語アンベロールの総目録配布とモデル0リプロデューサーの導入が告知されていました。つまりこの月は、新譜供給だけでなく、言語市場の拡張と再生機構の改良が並行して進んだ時期といえます。
グランド・オペラの新譜
1910年9月リストのグランド・オペラ・アンベロールには、「La Veritable Manola」「O mio Fernando」「Air des Bijoux」「Lohengrin’s Abschied」「Andréa Chénier Monologo」の5点が並びました。フランス語・イタリア語・ドイツ語の歌唱を含む構成で、エジソンが四分録音を高級声楽レパートリーの有力媒体として育てようとしていたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
一般新譜
1910年9月リストの一般新譜では、アンベロール側に「Killarney」「You’ll Never Find Another Love Like Mine」「Irish and Scotch Melodies—Fantasia」「Rescued from the Flames」「If Dreams Are True」「Over the Waves Waltz」などが並び、スタンダード側には「Emperor’s Manoeuvre March」「That Lovin’ Two-Step Man」「L’Encore」「Pal of Mine」などが掲載されていました。バンド、愛唱歌、喜劇調の流行歌、宗教曲、ダンス向け録音、劇的な情景盤までが混在しており、同月のカタログ構成が高級声楽だけでなく家庭娯楽用の広い需要を狙っていたことが読み取れます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
中国語アンベロール録音の整理
1910年9月号では、中国語録音の販売資料として4ページのフォルダ(form 1839)が用意され、15曲・110点の中国語アンベロール録音が「現時点までの中国語四分盤の完全目録」として案内されました。内容は著名な中国劇に由来し、当時もっとも人気のある中国人俳優たちによる録音と説明されており、エジソンが都市部の華人市場を明確に意識していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
モデル0リプロデューサーの導入
1910年9月号では、1910年9月1日ごろからモデルDトライアンフとアイデリアに新しいリプロデューサー腕木を装備し、モデル0コンビネーション式リプロデューサーを搭載すると告知されました。これは旋回式の腕木に2つのサファイア針を備え、2分盤と4分盤の両方を再生できるもので、従来のモデルCおよびモデルHを置き換える改良でした。録音ソフトの拡張に加えて、再生機構の側でも四分盤時代への移行が進んでいたことを示す材料です。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://archive.org/details/edisonphonograph08moor
