Music recorded in December 1912
1912年12月は、戦争と知の話題が同時進行した月でした。ヨーロッパではオスマン帝国(Ottoman Empire)とバルカン同盟(Balkan League)の休戦が1912年12月3日に成立し、同月16日にはロンドンで講和会議が始まり、第一次バルカン戦争の帰結が外交の場で協議される段階に入りました。アメリカ合衆国(United States)ではウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft, 1857–1930)が年次教書を送り、国内の景気と貿易の堅調さを強調しました。考古学では1912年12月6日、ルートヴィヒ・ボルヒャルト(Ludwig Borchardt, 1863–1938)の調査隊がテル・エル・アマルナでネフェルティティ胸像を発見しました。さらに12月10日のノーベル賞(Nobel Prize)授与では、グスタフ・ダレーン(Gustaf Dalén, 1869–1937)、アレクシス・カレル(Alexis Carrel, 1873–1944)、ゲルハルト・ハウプトマン(Gerhart Hauptmann, 1862–1946)らが顕彰されました。その一方で、12月18日にイギリス地質学会(Geological Society of London)で公表されたピルトダウン人は、当時の進化論研究に大きな反響を与えながら、のちに捏造と判明することになります。
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1912年12月の録音に関する情報のまとめ
1912年12月の録音業界では、トーマス・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)の蝋管事業が大きな転換点に入っていました。新しいブルー・アンベロールを主軸に据えるため、旧来の蝋製レコード在庫を処分し、学校向け機種の投入や販促物の刷新を通じて、年末商戦と翌年の販売体制を一気に組み替えようとしていたことが確認できます。
ブルー・アンベロール移行と旧蝋管在庫の一掃
1912年12月の『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』では、旧来の蝋製エジソン・スタンダードおよびエジソン・アンベロールの在庫を「一掃」する方針が明確に打ち出されました。本文では棚を空けて「大きな新製品」のために備えるよう促しており、実際に大きな値下げ表示を使った店頭処分の方法まで例示されています。これは、同年秋に導入されたブルー・アンベロールを中心に商品構成を組み替える年末の実務対応として読むことができます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1912-Vol-10.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
- https://mainspringpress.org/category/cylinder-discographies/
エジソン・スクール・フォノグラフの出荷開始
1912年12月号では、学校向けの新機種としてエジソン・スクール・フォノグラフ(Edison School Phonograph)の初回出荷が始まる見込みであると告知されています。この機種はエジソン・コンサート機構を金属筐体と可動式スタンドに収めた構成で、教室での使用を前提に、堅牢さと清掃のしやすさが重視されていました。本文では、ブルー・アンベロールが大音量で扱いやすく、教育用途に適していることも強調されており、録音物が家庭娯楽だけでなく教育分野へ広がっていく局面を示しています。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1912-Vol-10.pdf
- https://www.library.ucsb.edu/early-recordings-initiative-eri
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
年末の価格改定と販売体系の組み替え
1912年12月号では、旧蝋管在庫処分にあわせて、販売価格とディーラー向け条件の見直しも行われていました。蝋製レコードの職業向け卸値が具体的に示され、さらに機種によっては価格や割引条件の変更も告知されています。こうした動きは、ブルー・アンベロールへの移行を単なる新製品追加ではなく、価格体系と在庫回転を含む全面的な再編として進めていたことを示します。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1912-Vol-10.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
店頭販促物とブルー・アンベロール宣伝の強化
1912年12月号では、店頭や新聞広告に使うための新しい線画広告や販促文例もまとめて提供されていました。エジソン・アンベロールIやエジソン・コンサートとともに、ブルー・アンベロールの「ほとんど割れない」性質や音質の良さを訴える内容が前面に出されており、ディーラーに対しては窓飾り、新聞広告、家庭録音の訴求を組み合わせて新製品を広めるよう促しています。1912年12月は、商品そのものだけでなく、売り方の設計も含めて次の段階へ進もうとしていた月でした。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1912-Vol-10.pdf
- https://adp-assets.library.ucsb.edu/edison_4m-cyls.pdf
