Music recorded in October 1916
1916年10月の世界は、第一次世界大戦の長期化のなかで、軍事、社会、娯楽、行政、金融の各分野に動きが見えた月でした。西部戦線ではソンムの戦い(Battle of the Somme)が続き、イタリア戦線では10月9日–12日に第八次イゾンツォの戦い(Eighth Battle of the Isonzo)が行われ、10月31日には第九次イゾンツォの戦い(Ninth Battle of the Isonzo)が始まりました。社会面では10月16日、マーガレット・サンガー(Margaret Sanger, 1879–1966)がニューヨーク州ブルックリンで合衆国初の産児調節診療所を開設しました。文化・娯楽では10月12日、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)がブルックリン・ロビンズ(Brooklyn Robins)を破ってワールドシリーズ(World Series)を制しました。行政面では10月25日、ウッドロウ・ウィルソン(Woodrow Wilson, 1856–1924)がアラスカのオールド・カサーン国定記念物(Old Kasaan National Monument)を設定しました。経済面では、同月の連邦準備制度理事会月報(Federal Reserve Bulletin)に地区間決済の拡大が記録されており、戦時下でも連邦準備制度(Federal Reserve System)の運営基盤整備が進んでいたことが確認できます。
Confirmed recordings this month: 0
1916年10月の録音に関する情報のまとめ
1916年10月の録音業界では、新譜の告知だけでなく、販売網の整備、個人録音部門の拡張、工場設備の増設、発送体制の強化といった企業活動が複数確認できます。トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)ではアンベローラ販売の強化と発送部門の拡張が進み、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)は10月補遺を軸に広告展開を強めました。コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)では職業歌手向け部門とパーソナル・レコード部門の拡張が報じられ、パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)とエオリアン=ヴォカリオン社(Aeolian-Vocalion Co.)では製造・販売体制の拡張が確認できます。主要販売会社では、ジオ・B・ペック・ドライ・グッズ社(Geo. B. Peck Dry Goods Co.)による大規模な郵送販促も同月資料に現れています。
Edison
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、1916年10月号のエジソン・フォノグラフ・マンスリー(Edison Phonograph Monthly)において、アンベローラ部門の専任監督体制、新しい店頭設備であるニュー・ダイヤモンド・アンベローラ・ストア(New Diamond Amberola Store)、ならびにエジソン・ウィーク(Edison Week)向け販促物の配布が告知されていました。さらに、ミュージック・トレード・レビュー(Music Trade Review)1916年10月15日号は、ニュージャージー州オレンジの工場増築部分がレコードの保管・発送部門用として進んでいると報じており、この月の同社が販売面と物流面の両方を強化していたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1916-Vol-14.pdf
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/50
Victor
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)については、ミュージック・トレード・レビュー(Music Trade Review)1916年10月15日号が、同社が今後四週間に使う新聞広告の校正を取引先へ送付したと伝えています。その広告の一つは、エンリコ・カルーソー(Enrico Caruso, 1873–1921)の「サンタ・ルチア(Santa Lucia)」を中心に、10月補遺の新ヴィクター盤を前面に出す内容でした。1916年10月の同社が、新譜補遺を核にした広告展開を実施していたことは、この同時代資料から直接確認できます。
Columbia
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)では、1916年10月15日号の広告に、マギー・テイト(Maggie Teyte, 1888–1976)、マーガレット・キーズ(Margaret Keyes, 生没年不明)、オーヴィル・ハロルド(Orville Harrold, 1877–1933)を載せた10月新譜一覧が掲出されていました。同じ号では、A・E・ドノヴァン(A. E. Donovan, 生没年不明)が職業歌手向け部門とパーソナル・レコード部門の責任者に就き、両部門の拡張が進められていることも報じられています。この月の同社は、著名歌手の新譜訴求と、個人録音を含む業務部門の拡張を並行して進めていたことが確認できます。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/24
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/50
putty
パテ・フレール・フォノグラフ社(Pathé Frères Phonograph Co.)では、ミュージック・トレード・レビュー(Music Trade Review)1916年10月15日号において、H・N・マクメニメン(H. N. McMenimen, 生没年不明)が中西部出張から戻り、需要拡大に対応するためブルックリンの新レコード工場に機械を据え付けており、近く稼働見込みだと語ったことが報じられています。さらに同号では、ウォルター・L・エッカート(Walter L. Eckert, 生没年不明)の入社も伝えられており、1916年10月の同社が人員と製造設備の両面で拡張局面にあったことが確認できます。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/50
- https://elibrary.arcade-museum.com/magazines/mtr/MTR-1916-63-15/MTR-1916-63-15-19.pdf
Aeolian Vocalion
エオリアン=ヴォカリオン社(Aeolian-Vocalion Co.)については、ロイ・S・ヒブシュマン(Roy S. Hibshman, 生没年不明)が秋の商況に強い期待を示し、同社製品の販売が好調だと報じられています。さらに同時期の報道では、コネティカット州メリデンの工場でエオリアン=ヴォカリオン盤の製造を近く始める計画が伝えられており、この月の同社が販売拡大と自社レコード製造準備を並行して進めていたことが確認できます。ただし、1916年10月中に量産が実際に始まったかどうかまでは、今回確認できた資料上では断定できません。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/50
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-15/29
ジオ・B・ペック
主要販売会社では、ジオ・B・ペック・ドライ・グッズ社(Geo. B. Peck Dry Goods Co.)のヴィクター部門が大規模な見込み客向け郵送販促を行っていたことが確認できます。ミュージック・トレード・レビュー(Music Trade Review)1916年10月15日号によれば、カンザスシティーの郵便局が同社の郵送作業を助けるため、名簿を地区別に再編する仕組みの導入を支援しました。これは1916年10月の主要販売会社が、店頭販売だけでなく、地域別名簿を用いた体系的な直販促進を進めていたことを示す事例です。
