1918年8月に録音された音楽
1918年8月は、第一次世界大戦(World War I)の主導権が大きく連合国側へ傾いた月です。8月2日には連合国軍がアルハンゲリスクへ進出し、ロシア内戦への外国軍介入が北方でも具体化しました。8月6日には第二次マルヌ会戦(Second Battle of the Marne)が終結し、8月8日にはアミアンの戦い(Battle of Amiens)が始まり、百日攻勢(Hundred Days Offensive)の出発点となりました。アメリカ合衆国では8月12日にアメリカ合衆国郵便局省(United States Post Office Department)が航空郵便の全面運営を引き継ぎ、航空輸送の制度化が進みました。8月13日にはオファ・メイ・ジョンソン(Opha May Johnson, 1878–1955)がアメリカ合衆国海兵隊予備役(United States Marine Corps Reserve)に入隊し、女性の軍務参加の節目となりました。公衆衛生の面では、8月14日にニューヨーク港でインフルエンザ患者を乗せた船の到着が報じられ、秋の深刻化に先立つ警戒の段階に入ります。8月30日にはウラジーミル・レーニン(Vladimir Lenin, 1870–1924)がモスクワで銃撃され、ロシア内戦下の政治的緊張はさらに高まりました。
Confirmed recordings this month: 0
1918年8月の録音に関する情報のまとめ
1918年8月の録音産業では、戦時下にもかかわらず、月例新譜の告知、地方販売網の維持、録音実施、蓄音機の広告展開が続いていたことを確認できます。とくにヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では8月向け新譜告知と当月録音の両方が確認でき、コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)とトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)でも当月録音や販売活動が確認できます。また、ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)、チェイニー・トーキング・マシン社(Cheney Talking Machine Company)、オペラフォン社(Operaphone Co., Inc.)のような蓄音機・レコード関連企業も、8月資料上で広告や流通展開を確認できます。以下では、1918年8月の資料上で当月の活動を確認できる企業のみを挙げます。
Victor
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、『The Talking Machine World』の8月向け新譜欄に「They Were All Out of Step But Jim」などの流行歌が見え、当月の発売活動が続いていたことを確認できます。あわせてアメリカ歴史録音ディスコグラフィーでは、8月9日に「Colonel Bogey march」、8月30日に複数の試験録音が記録されており、発売と録音の両面で8月の活動を追うことができます。
- https://archive.org/stream/talkingmachinew14bill/talkingmachinew14bill_djvu.txt
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1918-08-09
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1918-08-30
Columbia
コロムビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Company)については、1918年8月の新聞広告で「新しいコロムビア盤は毎月20日に発売」とする月例発売の告知が確認できます。さらにアメリカ歴史録音ディスコグラフィーでは、8月20日にルイス・ジェームズ(Lewis James, 1892–1954)による「My Baby Boy」など、8月30日に「Russian Rag」などの録音が確認でき、当月も新譜供給のための録音活動が継続していました。
- https://cdm16818.contentdm.oclc.org/digital/collection/examiner/id/89152/
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1918-08-20
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1918-08-30
Edison
トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、8月16日付の新聞広告で「The New Edison Diamond Disc」の販売広告が確認でき、少なくとも当月の販売活動が続いていました。録音面では、アメリカ歴史録音ディスコグラフィーに8月19日のエジソン録音が残っており、ジャウダス・ソサエティ・オーケストラ(Jaudas’ Society Orchestra)による「Smiles」など、流行曲と舞踊向けレパートリーの録音が進められていました。
- https://cdnc.ucr.edu/?a=d&d=RDP19180816.2.58.1
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1918-08-19
Brunswick
ブランズウィック=バルケ=コレンダー社(Brunswick-Balke-Collender Company)では、1918年8月号の音楽雑誌広告でブランズウィック蓄音機が大きく訴求されており、当月の販売拡大を確認できます。また、アメリカ歴史録音ディスコグラフィーには1918年8月16日付のブランズウィック試験録音が記録されており、当月の段階で録音実施も確認できます。確認できる範囲では、8月のブランズウィックは蓄音機の販促と録音準備の両面で動いていました。
- https://digitalcommons.gardner-webb.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1648&context=etude
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/matrix/index?Matrix%5BCompany%5D=&Matrix%5BDateGroup%5D=&Matrix%5BLanguage%5D=&Matrix%5BMainTalentDisplay%5D=&Matrix%5BMatrixSeries%5D=&Matrix%5BRecordingSeries%5D=&Matrix%5BType%5D=&Matrix_page=2&Matrix_sort=MasterSize.desc
Cheney
チェイニー・トーキング・マシン社(Cheney Talking Machine Company)では、8月8日付の新聞広告でチェイニー蓄音機の訴求が確認できます。さらに同時代業界誌では販売地域の拡大を示す「Expanding Cheney Representation」という記事が見え、1918年8月時点で同社が流通網の拡張を進めていたことを確認できます。今回確認できた範囲では、当月の録音実施そのものは資料上で確定できませんでした。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19180808-01.1.13
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-07.pdf
オペラフォン
オペラフォン社(Operaphone Co., Inc.)では、1918年8月15日号の業界誌に10インチ盤のオペラフォン・レコード広告が確認できます。広告文面からは、同社が標準的なアメリカ向けカタログを前面に出し、窓飾り用の販促物やカタログ冊子を用意して販売店向け展開を進めていたことがわかります。したがって、8月のオペラフォンでは録音現場そのものよりも、商品系列の告知と流通・販売面の整備を確認するのが適切です。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-08.pdf
- https://archive.org/details/talkingmachinew14bill
