Music recorded in May 1918
1918年5月は、第一次世界大戦の戦局と戦後秩序の輪郭が同時に動いた月でした。5月7日にはブカレスト条約(Treaty of Bucharest)が結ばれ、ルーマニアは中央同盟国に重い条件を受け入れました。15日にはアメリカ合衆国でワシントン–フィラデルフィア–ニューヨーク間の定期航空郵便が始まり、航空技術が通信制度へ本格的に組み込まれます。16日には扇動法(Sedition Act of 1918)が成立し、戦時下の言論統制はいっそう強化されました。下旬にはザカフカース地域でジョージアが5月26日、アゼルバイジャンとアルメニアが5月28日にそれぞれ独立を宣言し、帝国崩壊後の新国家形成が進みました。一方、西部戦線では5月27日にドイツ軍がエーヌ方面で大攻勢を開始し、同じころシベリアではチェコスロヴァキア軍団(Czechoslovak Legion)とボリシェヴィキ側の衝突が拡大して、ロシア内戦も新たな局面に入りました。
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1918年5月の録音に関する情報のまとめ
1918年5月の録音業界では、新ブランドの立ち上げ、既存レーベルの新譜販売、蓄音機の販促、地域販売網の広告展開、そして小規模会社の整理が同時に進んでいました。当月資料で直接確認できる範囲では、エオリアン社(Aeolian Co.)のエオリアン・ヴォカリオン・レコード(Aeolian-Vocalion Record)正式発表、コロンビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)とヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)の継続的な販売促進、パテ製品の機械普及策、エジソン系販売網のアジア・オーストラリア展開、ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co.)とブランズウィック社(Brunswick-Balke-Collender Co.)の広告活動、そしてパロケット・レコード製造会社(Paroquette Record Mfg. Co.)の整理局面が確認できます。以下は、1918年5月付の広告・業界誌・新聞記事で当月活動を確認できる会社とブランドだけを整理したものです。
Aeolian
エオリアン社(Aeolian Co.)は、1918年5月15日付の『ザ・トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)でエオリアン・ヴォカリオン・レコード(Aeolian-Vocalion Record)を正式発表しました。加えて、5月6日付『インディアナポリス・ニュース』(Indianapolis News)ではエオリアン・ヴォカリオン(Aeolian Vocalion)を前面に出した広告が確認でき、同月に新ブランド投入と販売促進が並行していたことが分かります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-05.pdf
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=INN19180506-01.1.2
Columbia
コロンビア・グラフォフォン社(Columbia Graphophone Co.)の製品については、1918年5月の新聞広告でコロンビア・グラフォノーラ(Columbia Grafonola)とコロンビア・レコード(Columbia Records)の販売促進が複数確認できます。5月1日付『サウスベンド・ニューズ=タイムズ』(South Bend News-Times)ではグラフォノーラと盤の組み合わせ販売、5月22日付『デイリー・トリビューン』(Daily Tribune)では新しいコロンビア・レコードをグラフォノーラで試聴させる広告が出ており、当月の販売網が継続的に動いていたことが分かります。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=SBNT19180501.1.12
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=DT19180522.1.8
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-05.pdf
Victor
ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Co.)については、1918年5月号の『ザ・トーキング・マシン・ワールド』(The Talking Machine World)で「1918年5月版」の新しい数値カタログが案内され、月内の商品整理と流通資料更新が確認できます。さらに、5月7日付『ジ・イヴニング・ワールド』(The Evening World)や5月22日付『リッチモンド・パラディアム』(Richmond Palladium)ではヴィクター・レコード(Victor Records)とヴィクトローラ(Victrola)の販売広告が見られ、当月の小売展開も確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-05.pdf
- https://www.nyshistoricnewspapers.org/?a=d&d=tew19180507-01.1.8
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=RPD19180522.1.3
putty
パテ・フレール・フォノグラフ会社(Pathé Frères Phonograph Co.)の製品については、1918年5月19日付および26日付『ザ・サン』(The Sun)の広告で、パテ・レコード(Pathé Records)購入と連動したパテ蓄音機(Pathé Phonographs)の販売企画が確認できます。少なくとも5月下旬のニューヨーク市場では、盤の販売と機械普及を一体化した販促が強く打ち出されていました。
- https://www.nyshistoricnewspapers.org/?a=d&d=suna19180519-01.1.4
- https://www.nyshistoricnewspapers.org/?a=d&d=suna19180526-01.1.4
ジョン・リトル
ジョン・リトル社(John Little & Co., Ltd.)は、1918年5月2日付『ザ・ストレーツ・タイムズ』(The Straits Times)でエジソン・ダイアモンド・ディスク蓄音機(Edison’s Diamond Disc Phonograph)の広告を出し、機械とレコードが新着入荷したことを告知しました。これは、シンガポールで当月にエジソン系商品の新着在庫と販売活動があったことを直接示す資料です。
トーマス・A・エジソン・リミテッド
オーストラリアでは、1918年5月2日付『ザ・レジスター』(The Register)にトーマス・A・エジソン・リミテッド(Thomas A. Edison, Ltd.)シドニーの実演広告が確認できます。さらに、5月9日付および25日付資料には、フォノグラフ・アンド・タイプライター社(Phonograph and Typewriter Co.)によるエジソン・ダイアモンド・ディスク・アンベローラ(Edison Diamond Disc Amberola)販売が見え、エジソン系商品の販路がオーストラリアでも継続していたことが分かります。
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/15782100
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/27477269
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/27478862
Sonora
ソノラ・フォノグラフ社(Sonora Phonograph Co.)については、1918年5月20日付『リッチモンド・パラディアム』(Richmond Palladium)と5月25日付『ジ・アーガス』(The Argus)に広告が確認できます。広告文面は音質と筐体構造を強調しており、少なくとも5月後半に販売促進が行われていました。
- https://newspapers.library.in.gov/?a=d&d=RPD19180520.1.2
- https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/1661677
Brunswick
ブランズウィック社(Brunswick-Balke-Collender Co.)のブランズウィック・フォノグラフ(Brunswick Phonograph)は、1918年5月17日付『シアトル・ユニオン・レコード』(Seattle Union Record)に広告が確認できます。確認できる範囲では、同月中に製品構造を訴求する販促が行われていました。
パロケット
パロケット・レコード製造会社(Paroquette Record Mfg. Co.)は、1918年5月15日付の資料で資産売却広告が確認でき、約3万枚のパー・オー・ケット盤、マスターおよびマザー・マトリクス、録音・製造設備が売却対象に含まれていました。したがって、同社は5月時点で通常販売の拡大よりも事業整理局面にあったとみるのが資料上もっとも安全です。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1918-05.pdf
- https://archive.org/stream/V78J9/V78J%209_djvu.txt
