1926年5月に録音された音楽
1926年5月は、労働争議、政変、探検、映画史上の節目が各地で重なった月でした。イギリスでは1926年5月3日–12日に1926年イギリス・ゼネラル・ストライキ(1926 United Kingdom general strike)が行われ、石炭産業をめぐる対立が国家規模の社会不安へ広がりました。ポーランドではユゼフ・ピウスツキ(Józef Piłsudski, 1867–1935)が5月12日に武装行動を起こし、五月クーデター(May Coup)によって政治の主導権を握りました。北極圏ではロアルド・アムンセン(Roald Amundsen, 1872–1928)、リンカーン・エルズワース(Lincoln Ellsworth, 1880–1951)、ウンベルト・ノビレ(Umberto Nobile, 1885–1978)らのノルゲ号(Norge)が5月11日–14日に北極海横断飛行を成功させました。文化面ではロッテ・ライニガー(Lotte Reiniger, 1899–1981)の『アフメッド王子の冒険』(Die Abenteuer des Prinzen Achmed)が5月2日にベルリンで先行上映され、現存最古級の長編アニメーション映画として位置づけられます。さらに5月25日にはシモン・ペトリューラ(Symon Petliura, 1879–1926)がパリで殺害され、5月28日にはポルトガルで1926年5月28日クーデター(28 May 1926 coup d’état)が起こって、ポルトガル第一共和政(First Portuguese Republic)の終焉へつながりました。
この月の確認されている録音:0曲
1926年5月の録音に関する情報のまとめ
1926年5月の録音業界では、同一作品の会社別比較が一般読者向けに提示される一方で、実際の録音現場では宗教曲、流行歌、ジャズ/ダンス音楽、外国語レパートリー、民族系楽曲が並行して増えていました。『The Radio Home』1926年5月号はエドヴァルド・グリーグ(Edvard Grieg, 1843–1907)の《ペール・ギュント》組曲について、ブランズウィック盤、コロムビア盤、トーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)盤、ヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)盤を並記しており、同月14日の録音日別一覧でもブランズウィック、コロムビア、エジソン、オーケー、プラザ、ヴィクターの6系統が同日に動いていたことが確認できます。
ヴィクター
1926年5月のヴィクター・トーキング・マシン社(Victor Talking Machine Company)では、月前半だけでもハワイアン、ラテン系器楽、流行ダンス音楽、正統派声楽が並行して録音されていました。5月10日と11日にはケアウモク・A・ルイス(Keaumoku A. Louis, 生没年不明)による《Good-bye, Honolulu》《When you come back》《Ku‘u ‘I‘ini》が確認でき、5月14日には《Fado de mi tierra》《Amor y juventud》《Barranquillera》《Let’s make up》《Hello, aloha! How are you?》が並び、5月19日にはローザ・ポンセル(Rosa Ponselle, 1897–1981)による《Elégie》《Ave Maria》が録音されていました。1926年5月の同社は、大衆向け流行盤と高級声楽盤、さらに地域別レパートリーを同じ月内で併走させていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1926-05-10
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1926-05-19
コロムビア
1926年5月のコロムビア・フォノグラフ社(Columbia Phonograph Company, Inc.)では、ジャズ/ダンス系の録音がとくに目立ちました。5月8日には《You for me, me for you》《My own blues》が確認でき、5月14日には《Tenderly》《Ace in the hole》《The pump song》《The stampede》《Jackass blues》、さらに《My dream of the big parade》が並んでいます。1926年5月の同社は、流行歌独唱盤を維持しつつ、ダンス・バンドと黒人ジャズ系オーケストラの録音を拡充していたとみられます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=FirstTakeDate&date=1926-05-08
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://hdl.loc.gov/loc.mbrsrs/eadmbrs.rs005002
ブランズウィック
1926年5月のブランズウィック=バルク=コレンダー社(The Brunswick-Balke-Collender Company)では、英語圏向け宗教曲と流行曲だけでなく、スペイン語圏向け、メキシコ向け、イディッシュ語系、イタリア語系の録音まで同月に確認できます。5月14日には《Swing low, sweet chariot》《I couldn’t hear nobody pray》《Valencia》《El sacristan》《Himno nacional mexicano》《Chicago policeman blues》《Here comes my baby》が並び、5月27日には《Yiddishe momme》と《Rendi l’sereno al ciglio》も記録されています。1926年5月の同社は、単一市場向けではなく、複数の言語圏と購買層を視野に入れたカタログ編成を進めていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse/1926-05-27
- https://americanhistory.si.edu/collections/object/nmah_1930205
オーケー・レコード
1926年5月のゼネラル・フォノグラフ社(General Phonograph Corporation)のオーケー・レコード(OKeh)では、ジャズ/ダンス・バンド録音とブルース/流行歌系の男性独唱録音が同日に進んでいました。5月14日には《Chauffeur’s shuffle》《Laughing blues》《Good old wagon》《A good, happy home》《Baby, you don’t know my mind》《Honeymoon waltz》《I have no sweet woman now》が確認でき、未詳題の録音も同日中に残されています。1926年5月の同レーベルは、都市型ジャズ市場とブルース系歌唱盤の双方を同時に補強していたといえます。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://www.si.edu/object/archives/components/sova-nmah-ac-0060-s01-01-phonographs-ref541
プラザ
1926年5月のプラザ・ミュージック社(Plaza Music Company)では、低価格帯を含む系列ラベル向けとみられるダンス音楽録音が5月14日にまとまって確認できます。《I’m just wild about animal crackers》《Where’d you get those eyes?》《I’m walking around in circles》《There’s a Blue Ridge in my heart, Virginia》はいずれも同日の録音として記録されており、流行歌を男性独唱付きダンス盤として供給する編成がうかがえます。1926年5月の同社は、流行曲の機動的な供給で量販向け市場を支えていました。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://americanhistory.si.edu/collections/object/nmah_1287386
- https://americanhistory.si.edu/collections/object/nmah_1296398
エジソン
1926年5月のトーマス・A・エジソン社(Thomas A. Edison, Inc.)では、ダンス関連の新録と販促用サンプル盤の作成が並行していました。5月11日には《The club quadrille》が録音され、5月14日には《June sample record no. 7》2点と《Bye bye blackbird》《Blue bonnet—you make me feel blue》が確認できます。《June sample record no. 7》は複数既成録音をまとめたサンプル盤であり、1926年5月の同社が店頭販促と市販盤供給を同時に進めていたことを示しています。
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-11
- https://adp.library.ucsb.edu/index.php/date/browse?Matrix_sort=Company&date=1926-05-14
- https://www.loc.gov/static/collections/edison-company-motion-pictures-and-sound-recordings/articles-and-essays/history-of-edison-sound-recordings/introduction.html
