Music recorded in June 1910
1910年6月は、政治・探検・社会・外交・法制度・舞台芸術がそれぞれ別方向に動いた月でした。メキシコでは、長期政権に対抗したフランシスコ・イグナシオ・マデロ・ゴンサレス(Francisco Ignacio Madero González, 1873–1913)が6月5日に逮捕され、その緊張の中で6月26日の大統領選挙が行われました。イギリスでは、ロベルト・ファルコン・スコット(Robert Falcon Scott, 1868–1912)率いる南極探検船テラノバ号が6月15日にカーディフを出航し、極地探検競争が本格化しました。アメリカ合衆国では6月19日にスポケーンで父の日が初めて実施され、市民的記念日の新しい形が現れました。外交面では、アメリカ合衆国とメキシコ合衆国が6月24日にチャミサル紛争(Chamizal dispute)をめぐる協定に署名し、係争地問題を国際的手続に委ねました。法制度では6月25日に白人奴隷売買取締法(White-Slave Traffic Act)が成立し、州際移送を伴う売春取締りが強化されました。同じ6月25日、パリではイーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882–1971)のバレエ《火の鳥》(The Firebird)が初演され、20世紀音楽と舞台芸術の転換点の一つとなりました。
Confirmed recordings this month: 0
1910年6月の録音に関する情報のまとめ
1910年6月の録音関連では、エジソン社の業界誌6月号から、販売方法・流通制度・新譜告知が同時進行していたことが確認できます。誌面は、家庭で実機とレコードを試させる販売法を強く推奨し、録音物の普及が店頭だけでなく家庭空間へ広がっていたことを示しています。また6月17日付で二分シリンダーの交換制度が修正され、旧録音在庫の整理と新譜導入の条件が見直されました。さらに6月号には8月発売予定のアンベロールおよびスタンダードの案内、全国トーキング・マシン・ジョバー協会(National Talking Machine Jobbers’ Association)の会合日程、エジソン工場見学計画も載り、1910年半ばの録音産業が、録音制作・販売網・業界交流を一体で動かしていたことがわかります。
ホーム・デモンストレーションの拡大
1910年6月号は、家庭実演を販売の必須手段として前面に出し、ミネソタ州クリントンの販売業者ジェイムズ・ブレア(James Blair, 生没年不明)が、機械を各家庭に一週間試用として設置する方法で三か月に45台を売った事例を掲げています。これは、録音物の販売が店頭試聴中心から、家庭で実際の響きを体験させる方式へ移っていたことを示す具体例です。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://ia601308.us.archive.org/2/items/edisonphonograph08moor/edisonphonograph08moor.pdf
二分シリンダー交換制度の修正
1910年6月17日付の通知では、継続交換制度は1910年12月31日をもって延長しないとされ、返品可能な打切り二分レコードは、新規購入した二分レコード総数の50パーセントを超えない範囲に制限されました。さらに、アンベロール・レコードの注文にはその返品制度を適用しないと明記されており、旧来の二分シリンダーから新しい四分系録音へ販売の重心を移すための制度調整が進んでいたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://ia601308.us.archive.org/2/items/edisonphonograph08moor/edisonphonograph08moor.pdf
新しいオペラ録音陣の告知
1910年6月号では、カール・ヨルン(Karl Jörn, 生没年不明)が「いまエジソンで歌うオペラ・テノール」として紹介されています。同年夏の業界誌評では、エジソンのグランド・オペラ・アンベロールにカール・ヨルン(Karl Jörn, 生没年不明)とジョヴァンニ・ポレーゼ(Giovanni Polese, 生没年不明)の名が挙げられており、1910年6月に公表された新譜計画が高級声楽録音の拡張と結びついていたことが確認できます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1910-08.pdf
- https://calisphere.org/item/d96c1c3a95ab090ca0f9e2f25185eb04/
ジョバー会議と工場見学計画
1910年6月号は、7月5日–9日にかけて開かれる全国トーキング・マシン・ジョバー協会(National Talking Machine Jobbers’ Association)の会合日程を詳しく載せ、7月8日のヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Company)工場訪問と、7月9日のエジソン工場訪問予定まで掲げています。録音産業がこの時期、競合会社を含む業界交流、販売網の調整、工場視察を通じて実務情報を共有していたことがわかります。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1910-Vol-8.pdf
- https://ia601308.us.archive.org/2/items/edisonphonograph08moor/edisonphonograph08moor.pdf
