1916年11月に録音された音楽
1916年11月は、政治・社会・戦争の各分野で転換点が重なった月です。アメリカ合衆国では11月7日の大統領選挙でウッドロウ・ウィルソン(Woodrow Wilson, 1856–1924)が再選され、同日の選挙ではジャネット・ランキン(Jeannette Rankin, 1880–1973)がアメリカ合衆国連邦議会に選ばれた最初の女性となりました。11月5日にはワシントン州エヴェレットで世界産業労働者同盟(Industrial Workers of the World)をめぐる武力衝突であるエヴェレット虐殺事件(Everett Massacre)が発生し、北西部労働史の重大事件となりました。西部戦線では第一次ソンムの戦い(First Battle of the Somme)が11月18日に終結し、長期消耗戦の深刻さを改めて示しました。11月21日には病院船ブリタニック号(HMHS Britannic)が沈没し、同じ日にオーストリア皇帝兼ハンガリー国王フランツ・ヨーゼフ1世(Franz Joseph I, 1830–1916)が死去して、ヨーロッパの戦時秩序にも大きな影響を与えました。
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1916年11月の録音に関する情報のまとめ
1916年11月の録音関連市場では、既存大手が年末商戦に向けてカタログ刷新、販売店支援、家庭試用、博覧会展示を強める一方、廉価盤や小型盤を掲げる新興会社も市場参入を進めていました。当月の一次資料・同時代業界資料で活動を確認できるのは、トーマス・A・エジソン株式会社(Thomas A. Edison, Inc.)、ヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Company)、コロムビア蓄音機会社(Columbia Graphophone Company)、パテフォン系販売店、ドメスティック・トーキング・マシン・コーポレーション(Domestic Talking Machine Corporation)、マジェスティック・レコード・コーポレーション(Majestic Record Corporation)です。少なくとも確認できた11月資料では、各社とも新譜そのものだけでなく、店頭実演、販促印刷物、販売店指導、博覧会展示などを通じて商品体験を広げることに力を入れていました。
Edison
1916年11月号の『Edison Phonograph Monthly』では、トーマス・A・エジソン株式会社(Thomas A. Edison, Inc.)が冬季商戦向けに新しいアンベローラ総合カタログを投入していたことが確認できます。このカタログはアンベローラ3機種のカラー図版、ブルー・アンベロール・レコードの説明、エジソン純正ダイヤモンド・リプロデューサーの利点、旧式機をブルー・アンベロール対応にするアタッチメント、さらに10日間無料試用申込書まで備えていました。1916年11月の同社は、シリンダー機の販売を新譜告知だけでなく、家庭試用と店頭実演を組み合わせた販促で押し広げようとしていました。
Victor
1916年11月版の『Victor Records』では、ヴィクター・トーキング・マシン会社(Victor Talking Machine Company)が「Second 1916 Edition」「New Style Catalogue」として、検索性を重視した大幅改訂カタログを用意していたことが確認できます。収録曲を題名順に並べ、両面盤の各面を個別に引けるようにし、レッド・シール部門を独立させ、新規購入者向けの選択リストや作曲家・歌手・オペラの解説も付していました。さらにダンス用レコードが500点超であることも示されており、1916年11月のヴィクターが家庭娯楽と舞踏需要の双方を年末販売の柱にしていたことがわかります。
- https://archive.org/details/victorrecordsnov00vict_3
- https://archive.org/stream/victorrecordsnov00vict_3/victorrecordsnov00vict_3_djvu.txt
Columbia
1916年11月下旬の『Music Trade Review』では、コロムビア蓄音機会社(Columbia Graphophone Company)がニューヨーク組織内に販売促進部門を設け、H・テュアーズ(H. Tuers, 生没年不明)をその責任者に置いたことが報じられています。この記事では、販売店の立地、設備、在庫、販売方法まで含めて助言する体制が説明されており、11月時点の同社が単なる新譜供給ではなく、小売店支援を制度化していたことが読み取れます。新聞広告でも11月新譜の訴求が確認でき、販売網と宣伝を一体化した動きが強まっていました。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-23/58
- https://www.loc.gov/resource/sn83030214/1916-11-28/ed-1/?sp=2&st=text
putty
1916年11月下旬の『Music Trade Review』では、パテフォン系販売店が地方博覧会を販促の場として活用していたことが確認できます。同誌は、オハイオ州サンダスキー郡博覧会での展示が好成績を得たことを伝えており、パテフォン製品が地方市場で実演と展示を通じて広げられていたことを示しています。11月の時点で確認できるのは、全国的な一律の大宣伝というより、地方見本市や販売店イベントを利用した拡販でした。
- https://elibrary.arcade-museum.com/classic/Music-Trade-Review/1916-63-23/58
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1916-11.pdf
ドメスティック
1916年11月号の『Talking Machine World』には、ドメスティック・トーキング・マシン・コーポレーション(Domestic Talking Machine Corporation)の広告掲載が確認でき、同社がフィラデルフィアを拠点として機械販売を継続していたことがわかります。また、同時代資料に基づく会社史では、この時期に同社の最初のレコード発売告知が出たと整理されています。ただし、当月発売曲目の詳細や出荷規模は、確認できた資料上では明確ではありません。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1916-11.pdf
- https://www.loc.gov/item/sf98001001/
マジェスティック
1916年11月の『Talking Machine World』では、マジェスティック・レコード・コーポレーション(Majestic Record Corporation)の広告掲載が確認できます。同時代資料に基づく会社史では、この11月の advance lists に細溝9インチ盤が初登場し、毎月60タイトルを出す方針が示されたと整理されています。1916年11月の同社は、廉価・小型盤市場への参入を明示した新興会社として位置づけられます。
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1916-11.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-Talking-Machine/10s/Talking-Machine-1916-10.pdf
- https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Advertising_Mjestic_Record_Corporation.jpg
