1908年1月に録音された音楽
1908年1月は、政治・科学技術・社会運動・探検の各分野で、それぞれ性格の異なる動きが並行して進んだ月でした。1月3日には皆既日食が観測され、天文学上の大きな観測機会となりました。アメリカ合衆国では、セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt, 1858–1919)が1月9日にミューア・ウッズ国定公園(Muir Woods National Monument)を、1月11日にグランド・キャニオン国定公園(Grand Canyon National Monument)を指定し、自然保護政策をさらに前進させました。1月13日にはアンリ・ファルマン(Henri Farman, 1874–1958)がフランスで1キロメートル周回飛行を達成し、航空史の初期段階における重要な記録を残しました。1月15日にはアメリカ合衆国のハワード大学でアルファ・カッパ・アルファ・ソロリティ(Alpha Kappa Alpha Sorority, Incorporated)が創設され、黒人女性による大学組織の歴史に重要な一歩が刻まれました。1月24日にはロバート・ステフェンソン・スミス・ベーデン=パウエル(Robert Stephenson Smyth Baden-Powell, 1857–1941)の『スカウティング・フォア・ボーイズ』(Scouting for Boys)の最初の分冊が刊行され、後のボーイスカウト運動の出発点となりました。また、アメリカ合衆国海軍の世界巡航艦隊であるグレート・ホワイト・フリート(Great White Fleet)は1月12日にリオデジャネイロへ到着し、海軍力と外交的存在感の誇示を進めていました。
この月の確認されている録音:0曲
1908年1月の録音に関する情報のまとめ
1908年1月の録音業界では、ナショナル・フォノグラフ社(National Phonograph Company)が『エジソン・フォノグラフ・マンスリー』(Edison Phonograph Monthly)1908年1月号を通じて、春季発売予定盤、特別録音、外国語録音、販売店向け流通管理をまとめて告知していました。内容の中心は、1908年3月発売予定のエジソン・ゴールド・モールデッド・レコード(Edison Gold Moulded Records)のアドバンス・リスト、ハリー・ローダー(Harry Lauder, 1870–1950)による特別録音7点、グランド・オペラ盤補遺第9号、そして1907年11月に発表済みの外国語録音の1月出荷でした。加えて、販促印刷物の郵送時刻統一や販売店契約管理の記事もあり、1908年1月の録音業界では、新譜制作そのものだけでなく、発売日統制、注文締切、地域流通の平準化がきわめて重視されていたことが確認できます。
3月発売予定のエジソン新譜告知
1908年1月号では、1908年3月発売予定のエジソン・ゴールド・モールデッド・レコード(Edison Gold Moulded Records)が前倒しで告知されていました。注文締切は1908年1月10日、一般向け販売開始は1908年2月25日午前8時と定められ、1月の段階で発売管理が厳密に組まれていたことが分かります。掲載曲には、エジソン交響楽団(Edison Symphony Orchestra)による「The Teddy Bears’ Picnic」、ビリー・マレー(Billy Murray, 1877–1954)、エイダ・ジョーンズ(Ada Jones, 1873–1922)、アーサー・コリンズ(Arthur Collins, 1864–1933)らの録音が含まれていました。
- https://archive.org/details/edisonphonograph06moor
- https://archive.org/download/edisonphonograph06moor/edisonphonograph06moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1908-Vol-6.pdf
ハリー・ローダーの特別録音7点
1908年1月号には、ハリー・ローダー(Harry Lauder, 1870–1950)の特別録音7点が掲載されていました。これらは1908年2月1日–10日にオレンジ工場から出荷予定とされ、見本盤は1908年1月1日にジョバーへ発送、在庫注文の締切は1月20日でした。掲載曲は「Rob Roy Mackintosh」「She’s My Daisy」「Tobermory」「We Parted on the Shore」「The Saftest o’ the Family」「I Love a Lassie」「Stop Yer Ticklin’, Jock」で、通常の月例新譜とは別枠ながら、同等以上の販促対象として扱われていました。
- https://archive.org/details/edisonphonograph06moor
- https://archive.org/download/edisonphonograph06moor/edisonphonograph06moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1908-Vol-6.pdf
グランド・オペラ盤補遺第9号
1908年1月号には、1908年3月向けのグランド・オペラ盤補遺第9号も掲載されていました。ここではアルトゥーロ・フランチェスキーニ(Arturo Franceschini, 生没年不明)、ジュゼッピーナ・ジャコニア(Giuseppina Giaconia, 生没年不明)、フロレンシオ・コンスタンティーノ(Florencio Constantino, 1869–1919)、ジュゼッペ・カンパナーリ(Giuseppe Campanari, 1858–1927)らによるオペラ抜粋が案内されており、標準的な大衆歌曲だけでなく、オペラ録音も同じ発売統制の仕組みの中で計画的に流通させていたことが確認できます。これらの注文締切も通常新譜と同じ1908年1月10日でした。
- https://archive.org/details/edisonphonograph06moor
- https://archive.org/download/edisonphonograph06moor/edisonphonograph06moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1908-Vol-6.pdf
外国語録音の1月初旬出荷
1908年1月号では、1907年11月に掲載済みだったボヘミア語録音9点、ドイツ語録音8点、メキシコ向け録音13点を、1908年1月初旬に業者向けへ出荷すると告知していました。これは1908年1月に新規録音された作品一覧ではなく、1月に確認できる流通上の動きですが、外国語録音が継続的な販売分野として重視されていたことを示す確実な一次資料です。記事本文では、とくに都市部の販売店に対して、移民・外国語話者向け市場を積極的に開拓するよう促していました。
- https://archive.org/details/edisonphonograph06moor
- https://archive.org/download/edisonphonograph06moor/edisonphonograph06moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1908-Vol-6.pdf
販促印刷物の郵送時刻統一
1908年1月号では、1908年2月発売分から、販売店がフォノグラムや補助印刷物を発売日前日の午後5時以降に郵便へ差し出してよい一方で、発売日前日に顧客へ到達してはならないとする新しい取り扱いも告知していました。これは録音作品そのものではありませんが、新譜発売のタイミングを全国で揃え、不公平な先行販売を防ぐための措置として重要です。1908年1月時点で、録音商品は作品内容だけでなく、情報解禁と流通時刻まで含めて統制されていたことが分かります。
- https://archive.org/details/edisonphonograph06moor
- https://archive.org/download/edisonphonograph06moor/edisonphonograph06moor.pdf
- https://www.worldradiohistory.com/Archive-All-Audio/Edison-Phonograph/Edison-Phonograph-Monthly-1908-Vol-6.pdf
